Sat 101023 最初の積雪 山のクマは右往左往しているだろう 東京のクマの右往左往 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 101023 最初の積雪 山のクマは右往左往しているだろう 東京のクマの右往左往

 11月16日、昨日の夕方から急激に冷え込んで、秋田では平地でも雪が降ったらしい。昔から、秋田ではこの時期に1回必ず雪が積もる。今井君が中3の年は歴史に残る大雪だったが、最初に雪が積もったのは11月19日だった。
 高3の年も大雪で、大学受験のために上京する国鉄奥羽本線の特急列車は6時間も遅れたものだったが(おかげで山川の日本史の教科書をまるまる1回読み直せたのだけれども)、あの年も最初の積雪は11月18日であった。
 どうしてそんなことを記憶しているかといえば、まさにあの日の夜に大学受験の準備を開始したからである。模試の成績表が返却されて「さすがにそろそろ受験勉強というのをやらなきゃな」「どうやら努力なしには大学受験は無理らしい」と痛感した日、秋田高校の窓から眺めた風景は「その年初めての雪」で真っ白だった。要するに自分の能力の限界を知った日であって、秀才でもなければ、まして天才ではないと自覚した日である。
 翌年春に駿台の教室で秋山仁師が「もし君たちが天才だったら、受験勉強一切なしでも、試験会場で自分で微分や積分を発明して、どんな難問だってその場でゼロから解けたはずだ」「それが出来ずに落ちたとすれば、どんな言い訳をしても君たちは凡人にすぎない」と力説するのを聞いた。「なるほどそういうものか」とボンヤリ思ったものだったが、その趣旨の残酷な通告が、前年11月18日の雪とともに届いていたのであった。
緊急1
(今井君は入院していました。「緊急」の文字が溢れていました)

 11月の秋田の積雪はシャーベット状である。路面に近い部分ほど透明に融けかかっていて、その上に白い綺麗な雪が10cmほど積もる。最初は北西の季節風とともに吹きつける吹雪であるが、雪が深くなるとともに風は穏やかに変わって、「少し暖かくなってきたな」と思うころに雪は止む。積雪は翌々日ぐらいにはすっかり融けて、街は泥だらけである。そのまましばらく穏やかな晩秋の日が続いて、次に雪が積もるのは12月初旬以降になる。
 山のクマどんたちはお腹を空かせて右往左往している頃である。冬眠するには早すぎる。このまま行動を続けるには寒すぎる。まあ12月初旬の次の積雪まで、冬眠はゆっくり待つしかない。まだキノコもドングリもいくらか残っている。酒があれば文句はないが、最近の人間たちはおっかないから、うっかり大好きな奈良漬けとか酒をねだりに村に降りれば、地元猟友会の猟銃の銃口と、容赦ない散弾の攻撃が待ち受けている。せめて干し柿でいいからかじりたいが、まああまり贅沢は言えないのである。
はちみつ
(はちみつ、メキシコ産。緊急入院の前日、幡ヶ谷のラーメン屋に出かけた帰りに山のクマどんたちのことを思いながら買い物かごに入れた。翌日緊急入院とは思ってもいなかった)

 東京で英語を教えているクマどんは、突然ブログをピタッと中断して、まるまる1週間怠けたままでいた。その直前の1週間ほどは、毎日2本も3本も長い長い長い長ーいブログを更新して「ありゃま、これじゃ遅れていた1ヶ月分を一気に追いついちゃうんじゃないの?」という素晴らしい勢いであったが、ホントに全く一切の断りなく、プツンと1週間完全に中断して、もうそれっきりウンともスンとも言わない。
 もちろん東京の片隅で毎日毎日ウンとかスンとかは言っていたのであるが、まさかブログに「ウン」とか「スン」とか書いて済ますわけにはいかない。「いつかギャフンと言わせてやる」と言われて、あっそ、いいよ、「いつか」なんてケチなことは言わずに今すぐ言ってあげよう、「ギャフン!!」「ギャフン♨」「ぎゃっふーん♡」などとフザけるのは中年のダンナ独特の悪ふざけであるが、実は実際に中年今井グマは、この1週間ずっと東京の片隅で来る日も来る日もギャフン&ギャフンを言い続けていたのだ。
 というより、正確に言えば、急病で入院していたのだ。病名「右眼網膜剥離」である。先週月曜11月8日、「緊急入院」「緊急手術」という急転直下の事態に立ち至った。「このまま放置すれば右眼は確実に失明します」という診断結果を抱えて、「お腹が減っているのに雪が積もっちゃった」という山のクマさん以上に慌てふためき、文京区千駄木の日本医科大付属病院と代々木上原の自宅の間を右往左往していたのである。
緊急2
(緊急の文字がたくさん。こんな緊迫した雰囲気は初めてで、思わず胸が熱くなり、涙が滲んだ)