Sun 101017 中欧東欧紀行は今日が最終回 ホットワイン50杯 止まらない天文時計 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 101017 中欧東欧紀行は今日が最終回 ホットワイン50杯 止まらない天文時計

 さて、2009年12月のプラハとはいよいよお別れである。ウィーン、ブダペスト、プラハと、15日にわたった中欧東欧旅行の締めくくりに、すっかり夜も更けた旧市街広場の片隅でホットワインを飲んで帰ろうと決めた。「天文時計」の目の前の店である。
 この2週間、ホットワインにはお世話になりっぱなしであった。1日3杯ずつ飲んだとして、3杯×15日=45杯。単純計算ではこうなるが、特に大雪に襲われて寒さが厳しかったブダペストでは、1日6杯も7杯も飲んだ日があったから、2週間の消費量は優に50杯を超えている。
 諸君、ちょっと想像してみたまえ。目の前のテーブルに大きめのマグカップが50個ズラリと並んでいる。縦に7個。横に7個。プラス1個横にハミダシて、それで50個である。その全てにナミナミとホットワインが注がれ、温かそうな湯気がポカポカと上がっている。1杯の湯気ならポカポカでも、50杯なら使うべき適切な副詞は「モウモウと」に変わる。
ティン教会
(最終日夜のティーン教会)

 諸君、今井君が中欧と東欧に2週間滞在して、コツコツ成し遂げた成果の大きさを見たまえ。だからこそ普段の授業でも「コツコツ基礎と基本を積み上げなさい」と、ひたすら訴え続けているのだ。1回の飲み会で50杯は無理でも、2週間コツコツ継続すれば、こうやってとても人間ワザとは思えない偉業を達成できるのだ。まさに「継続は力なり」を自ら示した偉業であって、イチローの10年連続200本安打に勝るとも劣らない、素晴らしい人生のお手本である。
 これが「人間ワザ」でないとすれば、「クマワザ」と呼ぶべきである。しかし50杯のホットワインを想像するに、体長1m50cmの可愛いツキノワグマさんでは、これほどのものを飲み干すことが出来るとは思えない。「ツキノワグマワザ」でないとすれば、これはすでに「ヒグマワザ」か「灰色グマワザ」の域に達している。こりゃ、たいへんなことである。ま、そういう前提にたって、プラハの最後の夜を飾る締めくくりに、もう3杯のホットワインを飲み干すことにした。まさに有終の美の名に値する行動である。
27日のクリスマス
(27日夜になっても、クリスマスマーケットはまだ盛り上がる)

 2杯目を飲み干して3杯目を注文したころ、ちょうど夜9時になって、間近にある天文時計の仕掛けが動きはじめた。店の横に集まっていた群衆から、大きな深いどよめきが起こる。死神の鳴らす鐘の音とともに、キリストの12使徒の人形が窓に現れては消えていく。「チーン、チーン、チーン。チーン、チーン、チーン」で、最後に鶏が「ケコー!!」と高く一声鳴いて仕掛けは終わる。その様子は9月23日更新の「プラハの天文時計」でたくさんの写真とともに詳説した。右のカレンダーから9月23日をクリックして読んでくれたまえ。
 「ケコー!!」で仕掛けが終わって、群衆から大きな拍手とともに「えーっ、これだけで終わりなの?」という嘆声が上がる。これを見るために、わざわざロシアからもハンガリーからもスコットランドからも、スペインからもポーランドからもイタリアからも、とにかく世界中から高いお金を払ってプラハに集まってくるのだから、嘆声が上がるのも当たり前だ。世界中のありとあらゆる言語が入り混じって、「ええーっ、もう終わり?」と、見知らぬどうし苦笑いの顔を見合わせる。その様子もやっぱり9月23日更新の記事で詳説済みでござる。
天文時計
(天文時計)

店からの風景
(最後の店からの風景、ただし昼間。右端が天文時計)

 しかし、プラハの最後の夜は、それでは終わらなかったのである。「ケコー!!」で終わったはずの仕掛けが、どうしたハズミか、もう1度最初から動き始めた。群衆の喜びは最高潮に達した。「もう終わり?」と嘆いていたところに「では、もう1回」とアンコールが始まったのだ。当然のように大喝采になり、大喝采が終わる頃、最後の死神のチーンにカブせ、鶏どんがもう1回「ケコー!!」と締めくくった。やれやれ、おめでたい。機械仕掛けのクセに、チャンとアンコールにも応えるなんて、心憎いことをするではないか。
 ところが、諸君。群衆のどよめきの中、またまた仕掛けが動き始めた。あらま、大サービスである。アンコールに2度も応えるなんて、大変なことである。で、三たび「ケコー!!」。2回目ほどではないにしても、またまた大喝采が起こった。
 ところが、諸君、4回目が始まった。群衆はどよめき、「チーン、ケコー!!」でまたまたまた喝采である。ところが、諸君、5回目が始まった。群衆はどよめき、「チーン、ケコー!!」でまたまたまた喝采。ところが、諸君、6回目が始まった。群衆はどよめき、「チーン、ケコー!!」でまたまたまたまた喝采。ところが、諸君、7回目が始まった。群衆はどよめき、「チーン、ケコー!!」でまあまあ喝采。ところが、諸君、8回目が始まった。群衆はどよめき、「チーン、ケコー!!」で、まあ喝采。喝采が少しずつ小さくなっていったのは言うまでもない。
 要するに、故障である。中世ヨーロッパの機械仕掛けは、20世紀半ばに電動装置に替えられたのだが、それでも故障は起こる。故障ということになると、もうこの機械仕掛けは止められないのだ。結局9時半を過ぎても仕掛けは止まらない。集まった群衆は、やがて三々五々帰路につき、天文時計はそれでも寂しげに「チーン、ケコー!!」を延々と繰り返すのであった。
断捨ズンボ
(もう1度、東欧旅行で断捨離レベルに達したズンボ。お世話になりました)

 クマどんの3杯目のホットワインも既にカラッポである。最終日、それこそウンザリするほど名物・天文時計を堪能したことになる。どんな観光客よりたくさんの死神を無事にやり過ごし、たくさんの鶏の声を聞いた。どんな観光客よりたくさんのホットワインを2週間かけて飲み干した。ウワバミどんの2009年プラハ旅行は、こうやって締めくくりまで際限のないものになったのである。
 翌朝、プラハ空港に向かうタクシーがまた際限がなかったのだが、まあこの話は簡潔に済ませておこう。タクシードライバーとしてのプライドにかけ、目の前にいるどんなクルマでも、彼はあおり放題にあおって追い抜いていく。アクセルの踏み込み方がタダゴトでなくて、たいへんな加速ぶりである。
ダンシングビル
(ダンシング・ビル。こんな激しい運転だった)

 ま、こっちは無数の死神をやり過ごした鋼鉄ウワバミだ。ドライバー氏も「大丈夫だ、心配いらない。これはBMWだ、いつでも止められる」と自信を露わにする。ま、いっか、そうまで言うなら、大丈夫だんべ。そう思って彼に任せ、文句は言わないことに腹を決めた。
 こうしてプラハからエールフランスでパリ、パリでANAに乗り換えて、翌日夕方、無事に東京に帰ってきた。めでたし&めでたし、である。

1E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 8/18
2E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 9/18
3E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 10/18
6D(DMv) THE BEACH
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