Sat 101002 東京の朝の電車で寂しくなる ナンチャッテ和食を求めてプラハをさまよう | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 101002 東京の朝の電車で寂しくなる ナンチャッテ和食を求めてプラハをさまよう

 講演会があった時のハシャぎぶりを見ていれば分かるだろうけれども、今井君は地方の講演会が3度のメシより大好きだ。しかし、さすがに移動が続けば、疲れやストレスも溜まる。
 先週の金曜日、金沢に出かけようと朝のラッシュの千代田線や山手線に久しぶりに乗ってみて、こんな暴力的な電車に毎日乗っていたらさぞかし荒っぽい気分になるだろうと実感した。周囲の乗客のことなど気にしているヒトはあまり多くない。自分の陣地の確保と、確保した自分の狭い陣地の中での快適さの拡大と、要するにみんなが自分のことに熱中している。こういう姿を見せつけられるのはつらい。
 昔、今井どんが毎朝ラッシュの電車に詰め込まれていた頃は、こういう姿を見せつけられる頻度はもっとずっと低かったと思う。今や、みんな平気でヒトにカラダをぶつけてくる。自分の進行方向に他の人が侵入してくることなど、最初から全く想定していない。常に目標に向かって直線的に進行し、その進行を妨げるものには舌打ちか軽い罵声を浴びせる。
 それが若者ならまだ悲しくないが、分別ありげな中高年のヒトがそういうことをしているのを見ると、寂しさも悲しさも倍加する。男女を問わず、中高年のヒトたちが目に見えて優しくなくなったように思う。みんなケータイの電子の小窓に夢中だし、ヘッドフォンなりイヤフォンなりの音声に夢中なのだ。視覚はケータイに預け、聴覚はイヤフォンに預け、もう目も耳も他者の存在を寄せつけようとしない。
夕暮れのトラム
(プラハ、夕暮れのトラム)

 プラハでは、こういうストレスは一切なかった。トラムでも地下鉄でも、雰囲気はすこぶるなごやかで、キョトキョトしている日本のクマを「スキあらば手助けしてやろう」「スキあらば英語で道案内をしてやろう」と笑顔で見ている優しい人々でいっぱいだったのだ。イタリアやスペインなら少し警戒するところだが、チェコやハンガリーのヒトたちの笑顔は、「もしその親切を疑ったりしたら、そりゃニホンジンが悪い」と感じさせるようなもの。やたらに怖い治安情報を満載しているガイドブックが、もう信じられなくなるほどである。
 12月26日ボクシング・デイの夕方は、まず「ドゥヴ・コチェック」でおなじみの夕食にした。白ワインを1本空けたけれども、しかしその段階で意地でも「ナンチャッテ和食」が食べたくなった。もちろん「本物の和食」でもいいが、本物の和食なら、あと2日すれば帰国して東京でイヤというほど食べられる。もし「プラハでしか食べられない和食」を求めるなら、何といっても「ナンチャッテ和食」である。
トラムを待つ
(夜のプラハでトラムを待つ。スミーホフ付近で)

 ガイドブックで調べてみても、中国の人か韓国の人がやっているナンチャッテ和食の店がなかなか見つからない。しかしいったん「食べたいな」「ナンチャッテ和食で笑いたいな、噴き出したいな」と思い立つと、もうどうしても我慢できないのが今井どんである。ガイドブックの中で発見したのが「那古屋」と「桂」。市内の南の端スミーホフの「那古屋」、北の端デイヴィツェの「桂」である。まず南の「那古屋」にトライして、もし万が一それがダメだったら、トラムで北に一気に移動して「桂」にトライ、そういう計画を立てた。
スミーホフ
(プラハ南側、スミーホフ地区。観光客の行かないジモティ繁華街である)

 もっとも、「那古屋」の方は、名古屋マリオットホテルにも入っている名店かもしれなくて、もしそれなら「ナンチャッテ」どころか、敷居も値段もすこぶる高い店である。覚悟して向かったが、たどり着いてみると、誠に残念なことに「12月18日で閉店とさせていただきます」の貼り紙を発見。おお、マスコミの報道とは違って、日本食はヨーロッパではほとんど人気も需要もないのだ。
なごや
(レストラン那古屋、閉店の貼り紙)

 しかたなく、暗いプラハの街をトラムで一気に北上。どのぐらい時間がかかるかもサッパリわからないから、たえずガイドブックとニラメッコしていったが、こういうときこそプラハ市民の親切が炸裂する。向こうの席のおじさんも、前の席のおばさんも、盛んに「どこに行くんだ?」「大丈夫か?」「手助けが必要か?」と英語で尋ねてくる。日本ではなかなかお目にかかれない笑顔である。
桂
(ようやくたどり着いた「桂」。ビジネスホテルの地下だった)

 結局30分以上トラムに揺られて、街はずれのビジネスホテルの地下に「桂」を発見。お客は日本人ばかり。現地駐在の会社員家族の集いらしくて、子供たちを遊ばせながら奥サマ同士と旦那サマ同士のグループに分かれ、愚痴のこぼし合いが盛り上がっているところだった。何のことはない、「ナンチャッテ和食」を楽しむつもりが、埼玉県か千葉県の郊外の、ありふれた週末の風景を眺めただけで終わった。うーん、やっぱり日本食は人気がないのだ。
移動経路
(12月26日プラハのトラム大移動経路。オレンジが出発点の旧市街。下のグリーン部分がスミーホフ。上のピンクがデイヴィツェ。赤の太線が移動経路である。真ん中の青いラインががモルダウ河、左真ん中あたりがプラハ城。地図は「地球の歩き方 チェコ」からコピーした)


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