Sun 100815 一応、静かな生活の理想はあるのだ プラハ滞在記が書きかけのままだ | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 100815 一応、静かな生活の理想はあるのだ プラハ滞在記が書きかけのままだ

 月日は百代の過客にして、行きかう年もまた旅人である。船の上に生涯を浮かべ、飛行機のエコノミー席につっぱらかって年をとっていく者は、日々旅にして、旅を住処とする。松尾芭蕉の時代から、そういうヒトは多かった。かく言うクマどんもいつの頃からか、そぞろ神のものにつきて心を狂わせ、道祖神の招きにあいて、とるモノも手につかない。自室で落ち着いて過ごすことがメッキリ少なくなった。
 考えてみればすでに9月中旬であって、2010年は3/4を過ぎようとしている。こりゃ、たいへんだ。もっと落ち着いて地味に過ごさなきゃ。何のために天井に届く書棚を9架も作り付けにした書斎を作ったんだか、全く意味が分からない。旅を住処とするのも、道祖神の招きにあいてとるモノが手につかないのも、いい加減にすべきである。
 昨年の今ごろは、ダブリン→ウィンダミア→エジンバラを旅して、ロンドンに移動の電車の中だった。2009年末はウィーン→ブダペスト→プラハと回って、帰国は暮れも押し詰まった12月30日夕方。荷物を片づけている間に2010年が明けてしまった。今年に入ってクマどんの「そぞろ神ぶり」はいっそうつのるばかり。2月3月と6月7月は講演会ラッシュでほとんど書斎に入らなかった。もちろん授業収録も多い。それでも頑張って、5月はリスボン、8月はロンドン。9月はバルセロナ。松尾バセオもビックリの奥の細道の連続である。
ろんどん
(2009年9月ロンドン。昨年の今ごろはここにいた。1か月前もここにいた)

 一応、静かな生活の理想はあるのだ。例えば、朝4時に起きて、1時間ほど静かに歩いてくる。5時には帰って書斎に入る。そのまま昼まで、原稿やらブログやら、その他書かなければならないものを書いて過ごす。昼になればさすがに疲れるから、夕方まで読書に励む。読まないと寂しくなるから、とにかく読まないといけない。理想としては6~7時間の読書。夜はまあ少しだけ酒を楽しみながら、映画か芝居を見る。23時には静かに眠る。
 しかし、そういう理想の静かなオジサンをキチンと演じられることは滅多にない。「少しだけ酒を楽しみながら」というのが土台ムリな話で、2杯飲めば3杯になり、3杯は5杯になり、やがて「毒を喰らわば皿まで」になって、映画は2本目3本目、「23時就寝」「4時起床」どころか、現実には「5時就寝」「正午起床」という不良オジサンが誕生する。
 休みの日、二日酔いの頭をかかえて読書どころではないから、風呂に2時間つかって汗を流し、身体中の体液を全て入れ替える。風呂で全集本を読むのが好きなので、プーシキンだのゴーゴリだのスウィフトだの、「現代人が読んで何になるの?」という古色蒼然とした小説本が、風呂の湯気でヨレヨレになっていく。
 ヨレヨレなのはクマどんも同じなので、2時間の風呂で疲れ果てた中年男は、「風呂上がりはビール!!」という夏の不良オジサンにたちまち変身。パンツ一丁にバスタオルという恐るべき姿のまま、気がつくと秋の日は短く暮れて、セネカでなくても「人生の短さについて」を痛烈に感じることになる。こうして休みの1日は終わる。2010年、「奥の細道」をやらないで大人しく過ごしたのは、1月と4月だけであるが、大人しく過ごしたとは言っても、日々の生活がこんなふうではやっぱり書斎の意味はない。
ぷらは
(2009年12月プラハ。9か月前にはここにいた)

 こんなに落ち着きがなければ、ブログのほうも落ち着きがない。予備校講師のブログなどというものは、日々の身辺雑記をもっと書くべきなのである。誰と酒を飲んだとか、授業中こんなエピソードがあったとか、「新しく参考書を執筆中でーす♡期待してくださーい」とか(「乞うご期待」などという古めかしいヤツもいる)、生徒からこんな手紙がきたとか、「がんばれよー!!」とか、「熱いメッセージ♡おくりまーす」とか、読者はそういうことをもっと読みたがっているはずなのだ。
 ところが、滅多に自室で落ち着いていることのない今井君としては、書きたいのはそういう類いのことでは全くない。ウワバミ君のことをあまり理解してくれないヒトたちは「先生のブログって、全然関係ないことばかりですね」「○○先生は、もっと公開授業のこととか、その後の飲み会のこととか、いろいろ書いてますよ」とか、そういう指摘をしてくれる。しかし正直に言って、その種のことはそういう先生のブログで読んでいただければいい。ウワバミ君は「関係ないこと」にばかり興味があるので、書きたいのは、たとえば旅行記である。
りすぼん
(2010年リスボン。4か月前にはここにいた)

 ただし、その旅行記がキチンと書けているかといえば、現状は「あっちにとび&こっちにとび」であって、自分でも少なからず困惑中である。2008年に書いた「北イタリア紀行」「マッジョーレ湖紀行」「コモ湖紀行」の3本は自分でも納得の出来であった。2009年夏に書いた「ニューヨーク滞在記」も「おお、たいへん上手に書けていますね」である。
 しかし、今年になって書きはじめた「中欧&東欧滞在記」で、完全に調子が狂ってしまった。1月に前半1/3のウィーン滞在記を書き、しばらく中断して6月になって中盤のブダペスト滞在記を書いたが、チェコに移動してプラハ滞在記を書きかけたところで再び中断。ホントに何の断りもなく突如中断して、そのまま2か月半、何の音沙汰もなくここまできてしまった。
 9月前半のバルセロナ滞在が終わり、9月14日のバルセロナは最高気温24℃。最低気温は17℃、ランブラス通りの並木からは、すでに落ち葉が舞い落ちはじめた。ここから3か月ほどは(講演会がつづき、授業収録もまだまだつづくが)比較的落ち着いて日々を過ごす予定。せっかくだから書きかけのプラハ滞在記を9月中に書き終えて、次のマドリード滞在記に早く進みたい。

1E(Cd) Gregory Hines:GREGORY HINES
2E(Cd) Cluytens & パリ音楽院:BERLIOZ SYMPHONIE FANTASTIQUE op.14
3E(Cd) Cluytens & パリ音楽院:BERLIOZ SYMPHONIE FANTASTIQUE op.14
4E(Cd) Kirk Whalum:COLORS
5E(Cd) Kirk Whalum:COLORS
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