Fri 100806 福井で講演会 主義はヒトを不幸にする 「構文主義」「記号読解」のこと | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 100806 福井で講演会 主義はヒトを不幸にする 「構文主義」「記号読解」のこと

 7月15日、福井で講演会。出席者300名弱。予定では350名出席という可能性が報じられ、もともとキャパシティが300名の会場で「あふれたらどうしよう」とスタッフはみんなでちょっと青くなっていた。つい10日前、熊本会場で230名のキャパに対して270名が集まってしまい、そのキャパ40名オーバーの件で、会場管理者にスタッフがひどく叱られたばかりである。ま、結果的には、期末テストや部活の大会やその他いろいろあって、何とか300名のキャパにピッタリ収まってくれた。
 今思えば、その前日の大阪と和歌山でひいた重症の夏風邪がこの日第1のピークに達していて、福井国際会議場のあまりに豪華な控え室で出番を待っていた1時間、頭がクラクラして「どっちが上?」「どっちが下?」という状況に陥っていた。「どっちが天井?」「どっちが床?」と人に尋ねたくなる瞬間は誰でも経験したことがあると思うが、詰め込めば100人でも150人でも入れるであろう巨大控え室に1人きり、今井君は上下がわからない不安をかかえ、テーブルの端につかまっていたのである。

(どうなってるのか、よくわからない)

 福井も、長崎県諫早と同じように、金沢大学や福井大学や富山大学を始めとして国公立の名門が近い。名古屋大学も、京都大学も遠くはない。関西圏と名古屋圏の全ての国公立大学が射程だとすれば、それを狙わない手はないだろう。京都大学はちょっと置いとくとしても、ここに名前を挙げた大学なら、キチンと全文和訳しながら読んでも時間は足りなくなったりしないクラシックな出題がほとんど。慌てふためく必要はないのだから、深く腰掛けて悠然とじっくり取り組めばいい。
 全国を講演会で歩き回れば、実感するのはそういうことである。カンタンに言えば、英語の授業も勉強も臨機応変にやればいいということであって、ならば講師の方針も臨機応変に変化する。早稲田慶応の受験生に全訳ばかりというのも間違い。地方国立大の受験生に特殊な読み方を教えて不必要にビックリさせるのも、また間違いである。英語トリビアで生徒の大切な時間を無駄遣いする愚を除けば、あとは臨機応変に地域なりクラスなりの事情に応じて、教え方を変えればいいのである。
 ひとむかし前、予備校講師にも何となく個性が求められ、多くの講師が自らの個性を確立しようとして「オレは…主義だから」「ボクは…主義だ」のような宣言をした。モトになったのは駿台英語科主任・伊藤和夫師の「構文主義」。やがて駿台は学校全体が「構文主義」の権化みたいになり、伊藤先生の影響力があまりに強烈だったせいで、1980年代から1990年代の駿台は他の教科にまで英語構文主義の影響が広がった。
 そのために駿台は硬直化し、あらゆる面で動きがぎこちなくなって、生徒たちから見ると「面倒くさい」→「メンドイ」予備校に変わっていった。1990年代、何故かまず「駿台の現代文は崩壊した」というのが定評になり、ついでに「駿台は日本史も崩壊」が定評になった。

(やっぱり、よくわからない)

 確かに、1990年代の代ゼミ現代文科は多くのスター講師がいて輝いていたし、河合塾現代文科もそれなりに自由な雰囲気があって楽しそうだったのに対し、駿台の現代文と言えば古色蒼然とした「記号読解」。1970年代に藤田修一師が授業で使い、著書「現代国語要説」でも紹介した「A→A’」「A⇔B」「特殊カラ普遍ヘ」などの記号を使った(あまり実戦的とは思えないが)読解法を、ほとんど全ての講師が踏襲または無断借用していたのである。うーん、停滞して当たり前かも。カタカナで「カラ」だなんて、どうも、ねえ。
 カンタンに言えば、「主義」を振りかざして方法論を硬直化させれば、長い停滞を招く。社会主義も共産主義もマルクス・レーニン主義もそれで停滞→崩壊したわけだし、何もそんなドデカイ比較の対象を持ち出さなくても、「駿台英語構文主義」「記号読解主義」みたいなものは、講師も生徒もみんな不幸にする。

(全体図)

 今もあるのかどうかわからないが、90年代後半の駿台英語は東大スーパークラスでさえ「構文S」というテキストを渡され、週7回ある英語の授業のうち3回がわかりきった構文の授業に終始した。特に「パート1」は悲惨と言うか何と言うか。東大目指して浪人した受験生たちが「Sの次はV」「Vの後はO」「ただし自動詞の場合はOがない」とか、まあその類いのことを1学期間ずっとやらされていたのである。当時の駿台の教室がガラガラだったのもムベなるかな。幸い今井君は、「パート1」担当を巧みに逃げ回っていたから、不幸にならずにスンダイ。(明日に続きます)

1E(Cd) Ashkenazy & Philharmonia:SIBELIUS/SYMPHONIES 2/4
2E(Cd) Krivine & Lyon:DEBUSSY/IMAGES
3E(Cd) Rogé:DEBUSSY/PIANO WORKS 1/2
4E(Cd) Rogé:DEBUSSY/PIANO WORKS 2/2
5E(Cd) Kazune Shimizu:LISZT/PIANO SONATA IN B MINOR
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