Mon 100712 金沢から越後湯沢まで 越後湯沢、スキーバブルの夢の後 レルヒさん | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 100712 金沢から越後湯沢まで 越後湯沢、スキーバブルの夢の後 レルヒさん

 7月中旬の今井君は大阪や金沢で苦しみつづけ、早乙女愛や中村祐造の訃報に気づくことさえなかった。熟睡しても熟睡しても、夏風邪はその分だけ症状が重くなっていくように思われたし、今井君の特効薬ポカリスエットも空しく高熱に蒸発していくだけであった。
 振り返ってみれば、あの金沢の夜が風邪の第一のピークだった。その後、河口湖合宿の中日あたりに第2のピークが来たのであるが、金沢での第一ピークでは、喉は張り裂けるように痛み、耳まで痛みで引きつれ、食欲どころかビールへの欲求さえすっかり萎えてしまった。熱で全身に力が入らず、気力も体力も尽き果て、関節痛で腕も上に上がらない、そんな有り様で、「こりゃ数年ぶりに医師の世話にならなければならないかな」という弱気が幾度か頭をもたげたりした。
レルヒ
(越後湯沢で発見したレルヒさん)

 7月16日昼すぎ、金沢から「はくたか」で越後湯沢へ移動。電車の中でチャンとお弁当も平らげた。ひどい風邪に悩んでいても食欲だけはちっとも衰えていない。金沢では時間がなくて弁当を物色することも出来なかったから、「車内販売の弁当でもいいだろう」と妥協した。そのあたりの意地汚さの減退が、風邪の症状の現れと言えば言えるかもしれない。
 ところが、期待を込めた車内販売どんが、富山を過ぎてもちっとも回ってこない。激しくイライラするクマどんの様子を客観視すれば「何だ、まだ十分に意地汚いじゃないか」であって、それはイコール「何だ、まだ十分に元気じゃないか」でもある。
スキーレルヒ
(レルヒさんの元祖スキー天国)

 糸魚川を過ぎる頃、ワゴンのお姉さまがやっとノコノコ姿を現した。彼女を捕獲した気迫、「逃がしてなるものか」という勢い、「捕って食わんず(『食わんとす』からの近世的転訛)」の迫真、すべてお姉さまをおののかせるに十分であった。
 「ある日、森の中、くまさんに出会った」の赤頭巾ちゃんみたいに、お姉さまはお弁当をヒョイと差し出してみせた。おっと、赤頭巾ちゃんはオオカミに出会うので、森の中でクマさんに出会うのは、歌ではハッキリしないがおそらくごく普通のヒトである。ま、いいだろう。お弁当さえ手に入れば、ワゴン姉さんには別に何にも文句はない。
温泉レルヒ
(温泉に急ぐレルヒさん)

 差し出されたのは「夫婦釜飯」1000円ちょうど。デカイ釜飯が2つに分かれて、釜が2つあるから「夫婦釜飯」。安易なネーミングである。2つともあっという間に平らげて、あとは越後湯沢まで(おそらく車内を轟かせるようなイビキをかきながら)1時間じっくり寝ていった。
 目が醒めると、右の車窓は石打スキー場。今井君は夏のスキー場を見るのが好きである。誰もいないリフトが夏の風にゆっくり揺れて、丈の高い夏草が風に大きくなびく様子ほど清々しい風景はなかなか考えられない。
サドオケサ
(レルヒさんの佐渡おけさ)

 越後湯沢から上越新幹線に乗り換えて帰京するのであるが、越後湯沢でちょっとのんびりしたくなり、1時間後の新幹線に切符を買い替えた。越後湯沢は、懐かしい街である。80年代から90年代前半のスキーブームの頃は、冬になるとほとんど毎週1回この駅を訪れた。好きなスキー場はここからタクシーで10分ほどの岩原(いわっぱら)。苗場とか神立高原は押し合いへし合いの激しい混雑で、ナイターや早朝スキーでさえリフトの列の長さは常軌を逸したものがあった。岩原なら、混雑のせいでケンカや衝突に巻き込まれる心配もなく、日帰りでも朝9時から夜9時まで目一杯スキーを楽しむことができた。苗場の隣りの三国スキー場も、いつもスッキリと空いていて楽しかった。
メシ
(レルヒさんの朝ごはん)

 スノーボードの若者たちがスキー場を占拠するようになってから、スキーヤーは何となく居心地が悪くなって越後湯沢から足が遠のいてしまったのだが、今でも当時の夢の名残のようにリゾートマンションが立ち並んでいる。80年代後半の若者の夢は、越後湯沢のリゾートマンションを購入して、冬はスキー三昧、春夏秋は温泉三昧。上越新幹線で新幹線通勤も楽しいじゃないか。そういうバブルの残りの香が、寂れた湯沢の夏の山に点在する赤いマンション群であり、早乙女愛、ポカリスエット、はみだしぴあ、すべて我々の世代の夢の名残である。
コタツ
(こたつのレルヒさん)

 越後湯沢の駅は楽しい。売店がズラリと並んでいて、1時間や2時間ならあっという間に過ぎてしまう。駅の奥には温泉もあるし、新潟のありとあらゆる日本酒がズラリと並んだ店もあり、イヤな顔一つされずに試飲も出来る。ただし、この日の今井君は風邪で具合が悪かったし、第一その3時間後には高円寺で講演会を控えていたから、たいへん残念ではあったが酒の試飲は慎まなければならなかった。
 この駅で最も気に入ったのが「レルヒさん」のキャラクター。日本にスキーを伝えたスロバキア生まれの軍人さんのキャラクターである。「内気だが、おだてられると調子に乗りやすい」「常に何かを企んでいる」という彼の特徴は今井君そっくり。内気な人間が調子に乗った時独特のニヤニヤマナコが余りにも気に入ったので、新幹線の発車時間ギリギリまで粘ってタップリ写真を撮ってきた。

1E(Cd) Krivine & Lyon:DEBUSSY/IMAGES
2E(Cd) Kazune Shimizu:LISZT/PIANO SONATA IN B MINOR
BRAHMS/HÄNDEL VARIATIONS
3E(Cd) Barenboim & Berliner:LISZT/DANTE SYMPHONY・DANTE SONATA
4E(Cd) Perlea & Bamberg:RIMSKY-KORSAKOV/SCHEHERAZADE
5E(Cd) Chailly & RSO Berlin:ORFF/CARMINA BURANA
total m55 y1103 d5202