Wed 100707 合宿の記録は08年09年で 新大阪駅の騒音洪水 冷凍ミカンがとけていく | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 100707 合宿の記録は08年09年で 新大阪駅の騒音洪水 冷凍ミカンがとけていく

 東進の河口湖合宿については、すでに昨年と一昨年にこのブログ上で詳細な記録を書いた。2008年分は編年体の形式で、1日1日の記録を几帳面に書き記したもの。2009年分はもう少し楽に構えて、合宿中の主な出来事を踏み込んで描写したものである。

 すでに2年にわたって同様の記録を残したわけだから、今年の合宿については余り詳しい記録は必要なさそうである。むしろ「かぶり」を避けて、記録を遠慮したほうがよさそうだ。河口湖合宿の詳細を読みたいという読者がいたら、お手数ではあるが2008年と2009年の記録を読んでいただきたい。

 すでにその頃の生徒たちは大学学部1年生であり2年生である。今井君が東進に移籍して6年目、合宿には毎年参加しているから、1年2クールで合計12クール。約1000人の生徒たちと合宿の日々を共にしたことになる。最上級生は、すでに24歳になる計算。大いに感慨深いものがある。
最終日の富士
(河口湖合宿の記録 最終日、再び快晴の夏富士)

 さて、7月15日に戻る。昨日から西日本は言語道断と言っていい激しいゲリラ豪雨に襲われ、広島・山口・北九州での被害は甚大である。今井君は昨夜から今朝にかけて引いてしまった夏風邪のせいで、同じように言語道断に具合は悪い。喉から耳にかけて引きつれるように痛み、鼻は詰まり、熱のせいで左肩の関節が痛んで腕をあげられない。

 しかしそれは別問題であって、どうしても16時までに福井にたどり着かなければならない。甘えているわけにはいかないのである。9時にはスイスホテルをチェックアウト。地下鉄御堂筋線で新大阪に向かい、新大阪9時半発の「サンダーバード」に乗る。「神戸ステーキ弁当」と冷凍ミカンを売店で買い込み、まあこれで臨戦態勢。ちょっとした事件が起こっても安心である。

 ところが、ここで再び電車がうまく走ってくれない。アナウンスでは「湖西線内で大雨のため、車両のやりくりがつかない、新大阪到着が30分程度遅れる見込み」と言っている。さらに、「湖西線内では徐行運転せざるを得ないので、福井/金沢方面への到着は大幅に遅れる見込み」であるとも怒鳴っている。
クラス閉講式
(河口湖合宿の記録 クラス閉講式で挨拶するスタッフ。おや、ブランドバッグできた生徒がいますね)

 その怒鳴り声もほとんど聞き取れない。電車の到着と発車が集中する時間帯で、全てのホームで音量をおそらく最大にして絶え間なくアナウンスを繰り返している。ホームどうしでお互いに協力するなり譲り合うなりすれば、もっと聞き取りやすいはずなのだが、そういう気持ちは一切ないし、そういう上司の指導も一切ないらしい。

 ほとんどお互い張り合うような勢い、お互い相手を駆逐するほどの勢い、他のホームのアナウンスは全て敵であって、その声を打ち消すためならどんな手段も厭わないというほどの音量である。

 14番線だか15番線だかまでズラリと並んだホームの全てでそういうことをするから、1つ1つのアナウンスを明確に聞き取ることは、たとえ今ここに聖徳太子みたいな偉大な人物が出現しても不可能である。

 アナウンスはやがて騒音の巨大な塊になって、そこいら中で大男たちが金槌を振りあげ、錆びた太い鉄骨を力任せに打ち鳴らしているような、夏風邪にむくんだ哀れな今井君の頭が割れてしまいそうになるほどの騒音の洪水である。

 しかも、それほどの声を張り上げ、それほどボリュームを全開にして、お互いに競い合って何を怒鳴り合っているかと言えば、これがまためまいのするほど当たり前のことである。

「降りる人が済んでから順番にご乗車ください」
「ドアが閉まりかけましたら無理はなさらないでください」
「駆け込み乗車は危険ですからおヤメください」
「各駅停車より新快速のほうが先に着きます」
など、別に怒鳴られなくてもみんなとっくに熟知している。
部屋の様子
(河口湖合宿の記録 最終日、全体閉講式直前の部屋で。荷造りも整って、もう帰京するだけである。「夏が終わった」という寂寥感に浸る)

 誰もが知っていることばかり殺気立った調子の大音量で怒鳴りつづける割には、こちらが知りたいと思う情報はなかなか伝えてくれない。

 湖西線で徐行する予定だとして、その徐行によって最終的にどのぐらい福井到着が遅れるのか。いまも湖西線内では豪雨が続いているのか。運休になる危険性はあるのか。

 そういうことを聞かないと、緊急の場合の予定さえ立てられないし、教えてくれれば今井君みたいな旅のベテランはすぐに予定を変えられる。もし運休とか「運転見合わせ」になるなら、どうしても福井にたどり着かなければならない身として、大幅かつ大胆なルート変更が可能なのだ。

 大阪空港→羽田空港(または福岡空港)→小松空港と飛行機を乗り継ぐルートへの変更がありうるし、だからこそこんなに早くホテルを出てきたのだが、「駆け込み乗車はおヤメください」の大合唱ばかりで、知りたい情報は完全に遮断されている。

 何より迷惑なのは「冷凍ミカンがとけていく」ことである。おお、冷凍ミカンよ、我が少年時代の夢の食品よ。小学校の給食で出されたことはあったから、一応その存在は知っていても、「親にねだる」という素直な行動のとれなかった今井君が、この年齢にしてついにつかんだ栄光の冷凍ミカンである。

 ゆっくりサンダーバードのグリーン車に座って、「神戸ステーキ弁当」を朝一番で平らげて、それからおもむろに口に放り込もうと楽しみにしていた冷凍ミカン、今井君にとって小学校時代以来になる冷凍ミカンは、新大阪駅のホームの騒音洪水の中で無残にも少しずつ溶解しはじめていたのである。