Fri 100702 ファジーな天気 大昔「ファジー」が大流行だった 長崎卓袱料理「一力」  | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 100702 ファジーな天気 大昔「ファジー」が大流行だった 長崎卓袱料理「一力」 

 7月12日の長崎は、朝からずっと雨が降ったりやんだりのお天気。「長崎は今日も雨だった」とは、要するにこういう天気のことなのかもしれない。ざあっと降ってきては止み、止んだと思っても霧雨のようなものがいつまでも漂い、雲の間から一瞬日が射しても、またすぐにざあっと降ってくる。
 曇っていても、東京でいう「曇り」みたいに空気がカラッと乾いているのではない。高い湿度のせいで「曇り以上、霧雨未満」という微妙な状況が続くのである。もちろん、今井君は長崎に2日しか滞在していないのだから、毎日毎日こういう高い湿度が連続するかどうかは全くわからない。しかし、「だからこそ『長崎は今日も雨だった』という定番表現が生まれたのだ」と考えて、自分ひとりでしっかり納得してしまったのだった。
 それにしても「曇り以上、霧雨未満」という中途半端な状態は、今井君みたいなコドモには我慢がならない。同じような微妙なシチュエーションに「友だち以上、恋人未満」などという恥ずかしい&照れくさい&ムカつく状況があって、そんな微妙なカップルが目の前をチラチラ動き回ると、今井熊男などは思わずカッとなって「いいから、早く何とかしてくれ!!」と絶叫する。いんにゃ、とにかく早く何とかしろ。これは命令である。
長崎駅
(長崎駅。帰りは長崎から電車で博多に出て、福岡空港から羽田に向かった)

 「ファジー」という言葉が流行したことがある。もう20年も前のことになるだろうか。洗濯機も炊飯器もクーラーもビデオカメラも、とにかく何でもかんでも「ファジー機能」がウリで、「曇り以上、霧雨未満」「友だち以上、恋人未満」みたいなファジーな天気や男女関係がもてはやされたのもその時代である。
 まあ、「東京ラブストーリー」の世界である。ついこの間、鈴木保奈美のテレビ復帰が伝えられ、ちょうど時を同じくして政権末期を迎えた鳩山由紀夫どんも「政治はファジーだ」と発言。他人のことは「ブレた」「ブレまくるから国民は信用しない」と非難していたご本人は、「ブレたのではなくてファジーなのだ」と死語を持ち出して、自分のことをゴマかそうとしたわけである。
 さて、ファジーな天気の長崎を歩き回りつつ、正午すぎ、出島に到着。「融けそうなクマ」は、言語道断な蒸し暑さの中でいよいよ本当に融けはじめた。融けて流れていくクマにとって、もう出島なんかどうでもいい。「一力」の卓袱(しっぽく)料理の予約は午後1時だから、それまで時間をつぶすだけ、ただそのために出島はある。
 展示のある館に入れば、そこには愛しのクーラーちゃんが誠実に働いている。お土産屋さんでもクーラーちゃんが待っていてくれる。今は、クーラーちゃんだけが好き。暑苦しいものの全てを拒絶。スパンコールの青江三奈ちゃんや、鱗粉のお姉サンや、「友だち以上、恋人未満」のホナミちゃんなんかが待っていたら、腹の底から吐瀉物を噴出しそうな勢いである。
かもめ
(長崎発博多行きの「かもめ」。「白いかもめ」と「(ふつうの)かもめ」があって、同じ料金なら「白いかもめ」の乗らないと損。グリーン車は特に豪華である)

 12時半、ついに我慢ができなくなって、「この際、30分早くても問題ないだろう。『一力』がホントに名店なら、融けだしたクマどんを『30分早いから』と言って追い返したりはしないはずだ」と考えた。「一力」は、坂本龍馬も仲間と訪れたという歴史ある店である。卓袱料理のテーブルがなぜ丸いか。それは客が分け隔てなく和気あいあいと食事できるようにするためである。「アーサー王と円卓の騎士」と同じ発想で、誰が上とか、誰が下とか、上座がどこで下座がどこでとか、そういうことをヌキにして「大笑いしながら旨いものを食おう」というのである。
 堅苦しい接待を受けるのが苦手なクマどんにとって、これほどピッタリの発想はない。和気あいあいで旨いものを食べていれば、ケンカになることもない。「仲間同士で険悪な空気になったら、何でもいいからメシを食え」とは、少なくとも男子の世界では昔からの鉄則である。ラーメンをすすっても、鍋物を囲んでも、焼き肉をほおばっても、とにかく口の中に旨いものがあれば、つまらんことでいがみあう気はなくなる。
一力1
(長崎卓袱料理の料亭「一力」)

 そういう時に「ワインは…年の…産のじゃなくちゃ意味がない」だの「焼酎は…以外飲まないことにしている」「日本酒は辛口じゃないとダメだ」みたいな難しいことを言って難しい顔をするのは、残念ながらセンスが悪いのである。女将か仲居サンに「オススメは?」と尋ねて、「それって、高くないですよね」と冗談まじりに確認して、サッサとそれに決める。最初から「あんまり高くない酒でお願いします」と言うのが今井君の流儀。「一番安いのでいいよ」というヒトもいる。「なかなかわかっているな」とも思うが、今井君は最初からそこまで打ち解けることのできない内気な人間なのである。
 「一力」ではチャンと個室が準備されていて、卓袱料理の来歴から流儀まで、女将がほどよい説明を加えてくれた。「オススメの冷酒」も、尋ねると即座に「では、諫早の銘酒で」ということで、今井君ならいくらでも飲めそうな旨い冷たい酒をすぐに運んできてくれた。「龍馬伝」に出てきた史跡料亭「花月」ほど有名な店ではないが、その分、こうやって個室にも入れてもらえた。女将の応対ぶりも気持ちいいものだったし、酒も料理も実に旨かった。
一力2
(「一力」の個室から小さな庭をみる。店にいる間に、土砂降りの雨になった)

 テレビなんかに出てあんまり有名になると、どっと団体客が訪れ、店の前には大型観光バスが列を作り、団体優先になって「その他」の客を粗雑に扱ったり、酒や料理の質が下がったり、電話の応対が乱暴になったり、結果として目も口も肥えた上客の信頼を失うのが関の山。そうなった店には10年後はない。自慢のようだが、今井君にはその辺のことを察知する特殊能力があって、「この店は、もうダメそうだ。もう来ないことにしよう」と感じる瞬間がある。今井君がそう感じると、マコトに不思議なことに、もうその店は5年ももたない。
 長崎「一力」の応対ぶりには、そういう所は微塵もない。長崎の老舗料亭の誇り高さを見せつけられて、たいへん嬉しく思った。なかなか長崎に来ることはないが、長崎に来たら夕食の定番にしたいと考える、気持ちにもお腹にも爽快な店であった。
 唯一、爽快でなかった点があるとすれば、それは一匹の蚊の存在である。モスキートちゃんもきっと張り切って大活躍したのだろう。しかし、今井君はカバンから「ムヒ太郎」をとりだしてモスキートちゃんに対抗。「ムヒ」は、ポルトガルでもハンガリーでもアイルランドでもスコットランドでも、とにかくあらゆる海外旅行で今井君の危機を救ってくれる頼りになるカユミ止め。長崎のモスキートちゃんも、もちろんムヒどんの敵ではない。ムヒ一塗りで、せっかくのモスキートどんの活躍も跡形もなくなってしまう。おお、クマどん、恐るべし。ムヒ1つで、どんなカユミにも対抗してしまうのである。

1E(Cd) Richter & Münchener:BACH/BRANDENBURGISCHE KONZERTE②
2E(Cd) Brian McKnight:BACK AT ONE
3E(Cd) Rampal:VIVALDI/THE FLUTE CONCERTOS1/2
4E(Cd) Rampal:VIVALDI/THE FLUTE CONCERTOS 2/2
total m8 y1056 d5155