Wed 100623 更新が滞り気味でスミマセン プラハ「2匹のネコ」とMr. シャルドネ | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 100623 更新が滞り気味でスミマセン プラハ「2匹のネコ」とMr. シャルドネ

 これを書いている時点で、すでに2010年7月12日23時である。このところ更新が少し遅れ気味になっているのは、全国を走り回っているからで、7月6日から1週間、熊本/松山/京都/岐阜/町田/長崎と回って、さっき羽田から帰ってきたばかり。明日は13時から吉祥寺で2コマ3時間分の授業収録の後、新浦安に移動して公開授業の予定である。
 自宅にいるヒマもほとんどないので、どうしても更新が滞り気味になってしまう。先週土曜日、岐阜からの帰りの新幹線を新横浜で降りて、町田の講演会場に直接立ち寄った。終了21時半、代々木上原の自宅に帰ったのが23時、翌朝8時半に自宅を出て、長崎に向かった。ま、こんな日々なので、ワールドカップも参議院選挙もお相撲の初日も、何が何だかサッパリ分からない。
1678
(ドゥヴ・コチェックの看板。1678年とある)

 プラハのドゥヴ・コチェックに入ったのが12月23日午後7時(すみません、いつも通り昨日の続きです)、すでに半年以上前のことである。店先の看板にも、壁にも、ビールサーバーにも、紙のテーブルマットにも、ワインの棚にも、とにかくひたすら2匹のネコがいて、その2匹がニャゴロワとナデシコそっくりである。単なるうれしいを通りこして、何だかウットリしてしまった。看板によると、店の創業は1678 年。今井君と同じように2匹のネコたちと仲間になったヒトが、17世紀後半のプラハに存在していたということである。それを思ってウットリしないでいられるはずはない。
 チェコなんだし、プラハなんだから、まず挨拶代わりにピルスナーの生ビールを注文しなければならない。ガイドブックはいつも大袈裟だから、「チェコにきたらとにかくビールだ、その旨さは想像を絶する」みたいな書き方をしている。「ビール以外は変人だ」という勢いである。
にゃごなで
(プラハに現れたニャゴロワとナデシコ)

 実際にはそんなに大騒ぎするほど旨くはないが、あっという間におっきなジョッキで2杯飲み干した。何しろ、ブダペストから7時間の長旅の直後である。喉が渇いていないはずがない。飲みながら身の回りを見渡すと、どちらを向いてもニャゴロワがニタニタにやにや笑っている。ナデシコはソッポを向いて、コッソリ静かに笑っている。
 チェコではビールをピヴォ(pivo)と呼び、メニューを見たかぎりではピヴォはミネラルウォーターより安い。単に安いからではないだろうが、店の客はみんなひたすらピヴォを飲んでいる。そんなにビールばかり飲んでいたら、お腹がパンパンになってメシが食べられないだろうと心配になるほどである。いや、他人の心配より自分のことが大事なので、2杯まででピヴォはやめにして、そろそろワインに切り替えることにした。
プラハにゃご
(17世紀プラハのニャゴ姉さん、拡大図)

 ところが、「ワインはあるか」と尋ねると、40歳がらみのオバサマ・ウェイトレスが驚いた身振りをして、ただでさえ大きな目をギョロリとむいてみせた。ビールじゃないものを飲みたがる客がよほど珍しかったようである。「ワインなら、棚に並べてある。自分で選んでほしい」とのこと。確かに店の奥の全然目立たない薄暗い隅っこに、古びてホコリの溜まった木製の棚があって、その棚の上にワインが8本ほど並んでいた。
 いつから並べてあるのかわからないが、ラベルも少し変色しているような気がする。もちろん変色して見えただけで、実際にはそんなことはありえないが、その8本の中からシャルドネを1本とって店員のオバサマに手渡した。選ぶも何も、席からヒョイと立ち上がって、ラベルを確認したわけでも何でもなく、2秒か3秒で「では、これで」と決めた。
プラハなで
(17世紀プラハのナデシコ、拡大図)

 別に「この料理にはシャルドネでなければダメだ」みたいな難しい選択をしたわけではない。シャルドネが1番上の1番左にあったからである。品行方正な優等生・今井クマどんはこういう場合にもきわめて几帳面である。いや、むしろ恐るべきいい加減さを発揮する。現役合格をあきらめかけたセンター試験の、苦手科目の選択肢で、「ま、3番にしとくか」「いいや、4番で」という気分になることがあるが、まさにあれと同じことである。
 第一、「ワインを料理に合わせる」などという高級料理店ではない。テーブルに並べられた料理は、焼いた鴨肉とポテトがデカイ皿にドカンと置かれ、それに得体の知れないメトメトしたソースがネロッとかかったシロモノが中心。ワインだって、凝りに凝って「これでなければ」などという話にはならない。もともと酒や焼酎やワインの銘柄にこだわってうるさい蘊蓄を並べたりするのはあまりカッコいいとは思わないので、「苦手科目の選択肢」「ええい、別に2番でいいや」「間違えたらそれまでのこと」でいいのである。
しゃるどね
(投げ槍に選んだシャルドネ)

 ところが、この行動がまたオバサマ店員の記憶に強烈に残ったらしい。翌日の夕食に再びドゥヴ・コチェックを訪れると、「おお、また来ましたね」という挨拶とともに「シャルドネ!! シャールドネー!!」と叫びながら妙な手真似をしてみせるのだった。どうも、たった1回の注文で、今井君はこの店のMr.シャルドネになってしまったようである。
そーゔぃにょん
(同じ夜のソーヴィニョン)

 プラハ滞在中、この店を4回訪れ、4回とも白ワインを飲み、7本のボトルをカラにした。計算が合わないのではなくて、4回中3回は2本ずつ飲んだという、ただそれだけのことである。1日目、次に飲んだソーヴィニョンが予想以上に旨かったが、それも単なる偶然。「ええい、いいじゃん、4番で」の行動様式が図に当たっただけである。おそらく2009年12月の1ヶ月を通じて、この店で売れたワインの相当な割合が日本のウワバミちゃんの胃袋に収まったことになるかもしれない。

1E(Cd) George Benson:STANDING TOGETHER
2E(Cd) Richter & Münchener:BACH/BRANDENBURGISCHE KONZERTE 2/2
3E(Cd) Hungarian:BRAHMS/CLARINET QUINTET & PIANO QUINTET
4E(Cd) Madredeus:ANTOLOGIA
total m89 y1011 d5110