Fri 100521 カニ蔵の秘かな退場 表六玉(ひょうろくだま) 民族音楽とダンスの恐怖 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 100521 カニ蔵の秘かな退場 表六玉(ひょうろくだま) 民族音楽とダンスの恐怖

 本題に入る前に、昨年12月上旬からこのブログで活躍した「カニ蔵」の秘かな退場について述べておかなければならない。カニ蔵の登場は、今井君が東ヨーロッパの旅に出発する直前、土壁に大激突してヒタイに生々しい傷をつくり、その大きな擦り傷からリンパ液が流れるのをバンドエイドでションボリ治療していた頃である(Fri 091211「下北沢の歩き方」参照、カニ蔵の写真も最後に是非みていただきたい)。もう7ヶ月も前のことだ。
 今井君自身「カニ蔵」は大いに気に入っていて、あんな激突の痛みに耐えられたのも、実は「自分はカニ蔵なのだ」「カニ蔵がそんなことで泣いてちゃダメだ」と言い聞かせ続けたからこそである。しかし、半年遅れであろうが何であろうが、今をときめくSMAPどんがいきなり「市川カニ蔵」を登場させたりすれば、本家争いや元祖争いをして勝利を収める可能性はゼロである。
 「こっちが先だった」「パクった」も何も、要するに「誰でも思いつく程度のこと」だったのであって、相手がSMAPどんでは「勝てるワケのない争い」どころか、最初から争いにも何にもならないのである。ま、ボクだって大昔は電通クンだったんだ。放送作家より半年も前に同じことを思いついただけでも「自分をホメてあげたい」ぐらい言い放って、それで大人しく「今井版カニ蔵」は退場させることにしたい。
エスカちゃん
(ブダペストの超高速エスカレーター)

 さて、ブダペスト地下鉄も夕方になると、駅はちょっと酔っ払った感じのオニーサン&オジサンが多い。駅の中の売店ではやたらにアルコール度の高い酒が売られていて、こんな状態では酔っ払いが多いのもどうしようもないだろう。駅の売店の棚に平気でズラリと並んでいるのは、ビールとかトカイワインばかりではない、ブランデーでもウィスキーでも、ハンガリー名物のパーリンカでもウォッカでも遠慮なしである。これで「酔っ払うな」というほうがむしろ理不尽なのだ。
 しかし、酔っ払いが多くてもブダペストの地下鉄に治安上問題があるということは一切ない。その理由は2つあって、
(1)地下鉄職員なのか警備員なのか、不気味な黒い制服に身を包んだコワいオバさんオジさんが改札口にゾロゾロ並んでいて、不正乗車がないか異様に厳しく点検している
(2)全ての乗客がこれまた異様な早足で、「つんのめってしまわないか」と思うほど前のめりになって家路を急いでいる。酔っ払ったとしても、見知らぬヒトに絡んでいるより、家路を急ぐほうに熱心である。
 特に(1)は凄まじい。黒い制服のおじさん&おばさんは、大きな駅の改札なら10人程度、小さな駅でも3~4人、ホントに「ズラズラと」という感じでタムロしていて、全ての乗客のチケットを1枚1枚取り上げては、怪しい点がないかじっくりと確認するのである。効率が悪いことこの上ないが、安心・安全・治安ということなら、なるほど安心である。これもまた社会主義時代の名残かもしれない。
店内
(ブダペスト「カルパーチア」のどこまでもトルコ的な店内)

 酔っ払いを避けながら地上に出て、目指した「カルパーチア」はすぐに見つかった。何だか高級そうな店構えに逡巡しながら、それでもドアを押してみたのが18時ごろ。店はガラガラで、今井どん以外には、おそらく遅い昼食からそのままこの時間まで居残ってしまった1組の中年男女しか見当たらない。こんな時間にレストランに闖入するのは、実に珍妙な行動なのである。
 今井君は、こういう日本人を「ヒョウロクダマ」という。ヒョウロクとは「表六」で、亀さんが頭もシッポも手足も隠さないでいる様子。表に足4本と頭とシッポの合計6本をむき出しにしてしまっているから「表に6本」、そこで「表六」である。ノロマでアホな様子が英語のstupidとピッタリ合致するのだが、もう少しだけ無鉄砲な語感を付加するために「玉」をくっつける。
グヤーシュ
(グヤーシュスープと、辛さを演出するパプリカソース。その向こうに、この店で最も安いトカイワイン)

 ヨーロッパの日本人は、夕食に出かけるタイミングが早すぎて、どこの店でもstupidか表六玉に見えてしまう。「カルパーチア」に到着したのが18時ちょっと。初めて訪れたちょっと物騒な街で、あんまり深夜に酔っ払っているのは危険だと判断し、それでこんなに早く店に入ってしまったのだが、店の人からみたら「何でこんなに早くから?」「まだ昼食の客も帰っていないのに」である。
 しかし日本人とすれば「もうこんなに暗くなっているんだから」というのが正直なところ。だって、真っ暗になってからもう3時間近く経過しているのである。さっきクリスマス市で見たおばあちゃんの煙突パンみたいな、温かいスープがどうしてもほしい。手渡されたメニューにかじりついて、とにかくグヤーシュスープと、何だかワケのわからない肉料理を注文。それに一番安いトカイワイン1本を付け加えて、ひたすら緊張したブダペストの第一日を締めくくることにした。
料理
(何だかわからんが、とにかく肉料理)

 ガイドブックによると、この店では「19時ごろからジプシー音楽とダンスのショーが始まる」ということになっていて、クマどんが何よりも恐れたのはそれである。何しろこっちは、店のヒトたちも驚いているヒョーロクダマ。食道をスープが流れ降りていく音さえ聞こえるほどの静寂の中で、ひっそりとメシを詰め込んでいる。その真横で、まさかとは思うが「ジプシー音楽の生演奏」だの「民族舞踊」だのが始まってみたまえ。生きた心地でいられるわけがない。せっかくのトカイワインだって、ちゃんと胃袋に収まってくれるかどうか心もとない。
 ウワバミどんにとって誠に幸いなことに、20時ごろに店を出るまでずっと、孤独と静寂はキチンと保たれた。ジプシー音楽の生演奏どころか、他の客は最後まで「昼食の続き」の中年男女のみ。民族舞踊の皆様もキチンと遠慮してくれた。そういうトンでもないサービスというか演出があるのは、おそらく20人も30人もの騒がしい団体で訪れる日本人や中国人グループのためのものなのである。おお、助かった。ウワバミ君はほっと胸をなでおろしながら店を出たのであった。
 
1E(Cd) Muti & Berlin:VERDI/FOUR SACRED PIECES
2E(Cd) Gergiev & Kirov:RACHMANINOV/SYMPHONY No.2
3E(Cd) Ashkenazy:RACHMANINOV/PIANO CONCERTOS 1-4 1/2
4E(Cd) Ashkenazy:RACHMANINOV/PIANO CONCERTOS 1-4 2/2
5E(Cd) Barenboim/Zukerman/Du Pré:BEETHOVEN/PIANOTRIOS 4/9
total m96 y727 d4826