Sun 100418 コワいよお 格付け会社と武士の情け ハイパーインフレと古老の知恵 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 100418 コワいよお 格付け会社と武士の情け ハイパーインフレと古老の知恵

 昨日は、日本破綻がコワくて「コワいよコワイよ」と首をすくめるウワバミどんを慰めてくれる賢い友人たちの言葉を最後に書いて終わった。
「オマエはバカだな、もっと経済を勉強しろよ」
「日本国債について海外の格付け会社の格付けは依然として高いまま。心配するのがアホ」
「だから日本破綻はありえない。杞憂に苦しめられるのは哀れなヒト」
そういって慰めてくれるヒトビトも、確かに存在するのである。
 しかし、もしそうだとすれば、これから日本で暮らしていくには、S&Pとかムーディーズとか、そういうヤンゴトナキ格付け会社サマのご機嫌を取りながらコワゴワ生きていかなければならないということである。おお、おそろしや、おそろしや。クマどんはまずまずネグラを出たくなくなってくる。
 格付け会社の社員が何かの原因でヘソを曲げ、「日本なんかもうキライだ」「クソお、やってやる!!」と決意して、格付けをいきなり2段か3段引き下げとかすることも、ありえないこととは思えない。つい5年ほど前「7段(5段だったかも)引き下げるぞ」と発言したことだったあったはず。そんなことになれば、ヘッジファンドなんかあっという間に調子に乗って、こっちが一番イヤがるコトをしかけてくるに決まっている。
忍び寄る1
(背後から忍び寄る魔物 1)

 格付け会社の格付けがどの程度の信頼に足るものかは、たとえば「2005年秋にリーマンブラザーズの格付けがどうだったか」ちょっと調べてみればわかることである。そのわずか3年後に破綻して世界経済を震撼させる会社の格付けがどうだったか、ちょっと2005年のデータを調べてみるといい。
 「格付け」という行為に完全な客観性が期待できない以上、格付け会社とは「自らが公表する主観によって企業経営や国家財政が危機に瀕する可能性を承知の上で、あえて主観を公表する」という困った存在なのである。うーん、言い方が難しいか? つまり「ボクが思ったことを全部言ったら、困るヒトがいるだろうけど、でも自由なんだから、何でも言っていいはずだ。先生がそう言ってたよ」なのである。
 さらに、格付け会社というものと「優しさ」「武士の情け」は無縁である。4月末のこのタイミングで、「ギリシャをジャンク扱いに引き下げた」と発表する。ポルトガルとスペインも引き下げる。4月中旬、EUとEU加盟国とが「痛みをユーロ圏全体で分かち合ってでもギリシャの破綻を防ごう」「イベリア半島の破綻を防ごう」と最大限の努力をし、IMFまで登場して「何とか破綻の危機は回避されたんじゃないかな」と世界中が胸をなでおろしていた。
 3カ国の格下げなんか世界中とっくにオリコミ済みで、投資家たちは格付け会社の発表を待つまでもなく、この3国の国債についてはとっくに評価を下げていたはずである。何も今さら、わざわざデッカい声を上げて「格下げしました!!」とアナウンスする必要なんかなかった。発表したって、「何をいまさら」でしかないのだ。
 それなのに、まさにその鼻先に「格下げ」「ジャンク扱い」の発表を突きつけて、朝青龍のダメ押しみたいに敗れた力士を土俵から突き飛ばし、それで平気である。「ギリシャやポルトガルやスペインの経済安定に寄与しよう」「社会不安を排除しよう」、そういう世界中の取り組みに、真っ向からネガティブな情報を投げつけ、自分は離れた場所からせせら笑う。こういう配慮と優しさの欠如は、もちろん彼らの顧客への誠意から生まれるものなのだろうが、それでは真の誠意というものについて、解釈が余りにも平板すぎないか。
忍び寄る2
(背後から忍び寄る魔物 2)

 ウワバミ君は疑い深いから、格付け会社のエリート社員たちが、たまには個人的な不機嫌からこういうことをすることがあるんじゃないかと疑っている。朝から背中が痒い、バファリン飲んでも虫歯の痛みがとれない、昼食のケバブ・ランチが焦げすぎてマズかった、ランチの行列に割り込まれてムカついた、一緒に買ったペプシがヌルかった、奥歯にチキンが挟まってとれない、そのぐらいのことで何をやるか、心配でならない。
 ウワバミ君は、こうしてますます首をすくめてしまう。クマどんだって、せっかく暖かい連休になったのに、また冬眠の穴に駆け込んで夢中でお祈りしたくなる。クワバラクワバラである。ま、日本としては、S&Pサマやムーディーズ閣下に睨まれないように、細心の注意を払ってご機嫌取りに励んだほうがよさそうである。
 「おカネがなければ、印刷すればいいだろ」という「ハイパーインフレ何するものぞ」みたいなおカタも見かける。しかし「大丈夫だ大丈夫だ」と連呼する前に、日本が10年前のアルゼンチンと同じになる可能性を、少し考えておいたほうがいい。
 または、ハイパーインフレの経験を、80歳以上のおばあちゃんかおじいちゃんに尋ねてみるがいい。専門家のツベコベも結構だが、タマには古老の知恵も大切にするものである。昭和21年から23年まで、日本でどんなことが起こったか、聞いてみる価値は大いにある。あのとき、日本は「300倍のインフレ」だったのだ。
つらい体験
(つらい体験を物語る)

 300倍のインフレとはどのようなことか。何にも考えずにものすごく単純に言えば、ジャムパン1個100円が、30000円である。それで給料が上がらないとすれば、18万円の初任給でジャムパン6個である。歯ブラシ1本200円が60000円になれば、初任給で歯ブラシ3本。まあそこには、経済に無知なウワバミどんの知らない事情や注釈がいっぱいあるし、もちろん給料だってある程度はインフレになるだろうけれど、でもボクちんは、それに少しでも類似したことが起こるのは全力で防ぐべきだと思うのだ。
 「戦争が終われば幸せになれる」とひたすら信じていた今井君のお祖母ちゃん(加藤エス)は、戦争が終わって2年も3年も経過するのに、マトモにお米が食べられない状況、米を買うために、嫁入り道具のキモノを近くの農家まで全部タタキ売りにいかなければならない状況を、とても信じられなかったそうである。
 もともと加藤エスは田舎のお嬢様育ち。「ばあや」だったか「ねえや」だったか付きだったのだ。おおスゴイ、たいへんなオソボちゃんだ。ただし「バーヤだかネーヤだか」は1名のみ。中途半端なお嬢様オソボだったわけだが、その中途半端な地位も戦後ハイパーインフレとともに消しとんで、マゴのクマどんが可愛い産声をあげるころには、すでに見る影もなかった。
 この中途半端な驚きとともに今日は終わり。「ではどうしたらいいんだ」の話が明日さらに続くことになる。そこではウワバミどんお得意の「ボールペンのススメ」が展開されることになりそうである。

1E(Cd) Jandó:MOZART/COMPLETE PIANO CONCERTOS vol.9
2E(Cd) Jandó:MOZART/COMPLETE PIANO CONCERTOS vol.10
5D(DMv) THE ISLAND
10G(α) 塩野七生:賢帝の世紀(上):新潮文庫
13G(Rr) タキトゥス/国原吉之助:年代記(上):岩波文庫
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