Sat 100403 この春のまとめ(1) ハーバード大学の白熱教室 「回り道もいいもんだ」 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 100403 この春のまとめ(1) ハーバード大学の白熱教室 「回り道もいいもんだ」

 さて、やっとのことで西葛西での講演会そのものについてである。東進移籍以来、西葛西講演会はもうこれで4回目。校舎はチェーンの大型書店が入ったテナントビルの3階で、つい昨年だったかその書店が別の書店に変わってしまったが、もちろん東進には何の影響もない。過去3回と同じように、70名も入れば満員の狭い横長の教室を、90名強の受講生が埋め尽くした。
 15時開始、講演会ラッシュの最後を飾るにしては少し生徒たちがおとなしめだったかもしれないが、そのぶんマジメに「チャンとした授業っぽい」という感じで話が進んだ。「初めて東進に来てみた」という外部生が多い時には、このぐらいのほうが好ましい。内部の生徒だけで盛り上がりすぎると、初めての受講生が強い疎外感を感じる恐れがあるのだ。17時終了。昨夜から吹き荒れている冷たい北風に吹かれつつ、「ひとまずラッシュが終わった」いう満足感とともに代々木上原に帰ってきた。
 この春、「合格しました」というお手紙もたくさんもらった。合格した諸君は、入学式もガイダンスも終わって、今まさに「いよいよ今週から授業開始」ということで胸を躍らせているところだろうと思う。大学の学部4年または6年を実りあるものにするもしないも、これからの3ヶ月にかかっている。たかが学部に合格した程度で「ついにゴール!!」「目標達成!!」などと無意味な達成感をいだかないこと。「ゴールは、20年も30年も先にしかない」と肝に銘じて、全力を努力しつづけてほしいと老婆心ながら願っている。
あまりにも賢い
(理想の生徒像。あまりにも賢い)

 もちろん「いい知らせばかり」ではないので、「残念な結果に終わった」という手紙も届く。一昨日の記事で触れた「大逆転しました」という嬉しいお手紙といっしょに、「ずっと夢みていた国立大がダメで、第2志望と第3志望もダメで、結局あまり気の進まない私大に通うことになりました」という人からのお手紙も届いていたのである。しかし、何はともあれその大学を選んで通うことにしたのなら、桜も終わる季節だ、そろそろ笑顔を取り戻して元気に通ってみてほしい。
 失望しながら大学に通いはじめたような人でも、「受験勉強をもう1年やるかどうかの決断」は、1学期いっぱい大学に通ってみてからでちっとも遅くない。大学の授業は、ちゃんと選択して受ければ、驚くほど面白いものである。
 それは週刊誌に出ている「大学ランキング」などという下劣なものとは全く関係なくて、授業に対する教授の熱意と資質によるのである。たとえ東大教授の授業でも、「授業なんて研究生活の妨げにしかならない。やむを得ない義務としてこなすだけだ」と考えているヒトの講義なら、おそらく確実につまらない。その逆で、「講義こそ自分の仕事だ」と考えて研鑽を積んでいる教授の講義なら、間違いなく面白いのである。
あまりにも気高い
(理想の生徒像。あまりにも気高い)

 昨日(4月18日)の夕方、NHK教育テレビで放送していたハーバード大学教授の授業を見て、ウワバミ閣下は丸々1時間夢中になり、時間の経過を完全に忘れた。他人の悪口とあげ足取りばかり延々と続くニュースショーに飽き飽きしたところだった。
 そもそも去年の春から夏にかけて「民主党に1度やらせてみよう」「政権交代だ」「マニフェストだ」「定額給付金なんてバカバカしい」とメッタヤタラに国民を煽っていたのは、この同じニュースショーの面々だったはずである。クマどんは別に自民党支持でも自民党シンパでも何でもないが、こういうヤカラが自らの責任について知らんぷりをして、他人のあげ足取りに奔走する姿にはハッキリうんざりさせられる。
 チャンネルのリモコンを触っているうちに、ほぼ偶然に教育テレビに切り替わり、ハーバード大の政治哲学講義になったのだったが、おお、あまりに面白い。ニュースショーとは段違い、数十段違いに面白い。面白さに両手両腕が震え、思わずソファから立ち上がって天にコブシを突き上げた。コブシの件は、決して大袈裟に言っているのではない。
 講義は、政治哲学のマイケル・サンデル教授である。ありゃりゃ、単に「笑って聞けるか」の観点からでさえ、半端なお笑い芸人や予備校講師のギャグなんか問題にならないぐらい笑えるのである。しかも、驚くなかれ、政治哲学である。あれほど血湧き肉踊る政治哲学の講義は、驚異といっていい。番組には「ハーバード大の過去の講義の中で最も人気のある講義」というサブタイトルがついている。
 おお、何といってもカッコいい。知的にカッコいいとは、ああいう顔、ああいう講義なのである。ずっとポケットに手を突っ込んだまま話す、少し猫背ぎみの姿勢。「課税の正義」を論証する、淡々として興奮しすぎない態度。講義の最後に「では、次回の講義までに、諸君は今日の議論に対する反論を準備しておかなければならない」と学生たちをじっと見据えと、それと同時に、講堂を埋め尽くした300人ほどの学生たちから一斉に拍手が湧き上がる。「面白かった」という拍手ではなくて、「カッコよさに脱帽しました」「参りました」という拍手なのである。ううぉ、ウワバミどんも、講義中ポケットに手を突っ込んでいるところだけは一緒だけれども、せめてポケットに手を入れるその姿勢だけでも見習わなくてはなるまいて。うぉうぉ。
ただし、アクビもする
(ただし、講義中にアクビもする)

 諸君、「ハーバード白熱教室」というタイトルの番組、NHK教育テレビ、日曜の夕方6時である(毎週か、隔週か、自分で調べてください)。ヒマがあったら、いや、ヒマなんかなくても、絶対に見るべきであるし、もしNHK on demandで見られるなら、第1回(4月4日放送分)からでもいいから見てみたまえ。「東大よりずっと面白そうだねえ、やっぱりハーバード行かなきゃ」と言い出すことは必定である。
 もしそういうことを言い出すなら、今入学した大学で全力を尽くして、海外の大学院に進むほうがずっと早いはずである。「東大にこだわってもう1年」「第1志望は、ゆずれない」とか言いはって粘り強く浪人を続けるのも悪くはないが、他にも道はいくらでもあるはず。広告のキャッチコピー風に言うなら、「道に迷うのも、いいもんだ」「回り道も、いいもんだ」ということである。

1E(Cd) J.S.BACH/SILVIA(Cantata Opera in 3 Acts)1/2
2E(Cd) J.S.BACH/SILVIA(Cantata Opera in 3 Acts)2/2
3E(Cd) Münchinger & Stuttgart Chamber:BACH/MUSICAL OFFERING
6D(DMv) APOLLO 13
9G(Rr) プラトン/久保勉:饗宴:岩波文庫
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