Tue 100316 横浜での「大学入試報告会」 短時間でどう満足させるか 自画自賛 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 100316 横浜での「大学入試報告会」 短時間でどう満足させるか 自画自賛

 3月16日、東進の「大学入試報告会」が横浜で開催される。このブログでも事前に何度か予告した通りである。会社にとっても重要度の高いイベントなのだが、前々日ぐらいから天気予報では「大荒れ」の予報が出ていて、「朝から降雨量が多くなり、強い南よりの風が吹き荒れて雨は横なぐり、交通機関にも影響が出そうです。交通情報などにご注意ください」という、誠に困った予報になっていた。
 しかし天気予報はいつものようにシッカリはずれて、雨は朝のうちに止んだ。10時半、東横線で横浜に着いた時には、風はまだ強いけれども空に晴れ間も見えて気温が上がり、強い風がかえって心地よいぐらいである。「入試報告会」の会場は横浜そごうの9階「横浜新都市ホール」。収容人員900名の大ホールで、音響・映像ともに複数の専門スタッフがそろっている。
 今井君の打ち合わせはすぐに終わったが、面白いので客席でずっとリハーサルを眺めていた。こういう大きなイベントに出演する時には、臨場感が大切。事前にできるだけ長時間会場に身を置いて雰囲気に慣れておけば、緊張も失敗も少なくなる。立派な控え室も用意されていたが、豪華な弁当をウワバミよろしく飲むように平らげてしまった後はすっかり手持ち無沙汰になったから、何度も会場の客席に座ってみて、会場の雰囲気を味わっておいた。
報告会1
(大学入試報告会。大盛況であった)

 開場12時、開演13時。1時間も前から入場する熱心な方も多くて、控え室のモニターで見ていると前の方から席がどんどん埋まっていく。これだけ大きなホールを満員にするのは至難の業だろうけれども、少なくとも1階席は、開演10分前にはすっかり満員になった。残り10分で2階席に来場者を誘導していたが、入場者600名を大きく超えたところで開演時間になった。
 今井が話すのは2番目。「時間は35分程度」という事前の打ち合わせだったが、講師の話し好きを見越して「45分ぐらいになってもかまいませんよ」と何度も耳打ちされた。うんにゃ、今井は確かに話し好きだが、時間厳守はもっと大好き。35分と言われたら、35分でキチンと収めます。
 というか、それが話のプロというもので、ましてやこういう大きな会場で、多くのヒトの前で話す時には、時間厳守は鉄則。時間ピッタリで満足度100%とすれば、そこから1分延長するごとに満足度は1%ぐらいずつ低下すると考えた方がいい。30分延長すれば満足度は70%。それも「もともと100%」での計算であって、もともと70%程度しか満足度をとれないヒトが30分延長すれば「満足度40%」という悲惨な結果が待っているだけである。
報告会2
(余裕のクマどん)

 今回は、今井の出番の前に「大学受験全体の動向」を話したヒトが、何と20分も延長。27分を予定した話が、45分以上に伸びてしまった。熱心に準備しすぎて、27分のために用意したパワーポイントが100枚近くあったのが原因である。平日の真っ昼間、訪れたヒトは主婦層が中心。それを考えれば「25分ちょっとで100枚」=「1分で4枚」のパワーポイントは明らかに情報の過剰である。普段「ミヤネ屋」とか「暴れん坊将軍」とか「丸岡いづみのストレイトニュース」を見ている感覚なのに、突然15秒に1枚のハイペースでデータをスクリーン上にカチカチ展開されたって、それはフォローできるペースとは思えない。
報告会3
(語るウワバミどん)

 こうして、20分もの延長の後を引き継いだのが今井君。「45分でもいいですよ」も何も、むしろ講演時間の短縮が必要な状況である。すでにスタッフの皆さんは「追いつめられた」という表情。このままでは全体はもっともっと延長になって、午後3時半終了予定のところが4時になるとか4時半になるとか、致命的な事態になりかねない。万が一そんなことになったら、さっき書いた通り、会全体の満足度は奈落の底に落ちていく。「こんなにダラしない延長をする予備校に、うちの子供は預けられません」になり、そういうクチコミほど空を駆けるように速く伝わるものだから、その打撃は計り知れない。
 スタッフがみんな蒼白になって「あそこでも縮められる」「ここでも短縮できる」と思い思いに解決策を口にしている状況、そこで今井君の登壇である。おお、待ちかねた。今井カニ蔵をナメてもらっては困る。こういう緊急時にこそ、今井は役に立つのだ。余りにたくさんのデータを提示されてすっかり興味を失い、黙りこくってしまった聴衆を一気にツカムのは、今井には実に容易なことなのである。
報告会4
(パワーポイントに楽しいミスを発見。「1900年早稲田」って? こういうのもチャンとツカミに使うとどんどん楽しくなる)

 今井の冒頭のセリフは「私は、いま、怒っています。45分も話すはずが、前のヒトの延長のせいで25分しか話せなくなってしまいました」である。「だいたい、拍手が少ないですよね」という二の矢が続く。呆気にとられた聴衆から、驚くべき大きな拍手が湧きおこったところで、「資料は10枚ほど用意しましたが、そのうち5枚しか使いません」と宣言する。もともと5枚しか使う気がなかったのだが、ついでだから「それも、ぜんぶ、前のヒトのせい」にしたところで、600人の顔が一斉に「こりゃ面白そうだ、聞こう、聞こう」と輝きはじめ、会場全体が前のめりになった。
 こうなってしまえば、もう何を話しても全てうまく通じてしまうものである。もちろん、話の内容はどんな予備校のどんな先生が話すよりも5倍も10倍も(ずいぶん適当だが)面白いのであるが、そこは企業秘密ということにしておきたい。別に内容を知られて困るということはない。いくら知られても、いくらマネされても、ちっとも困らない。今井のマネが完璧にできて、今井の話す内容を100%記憶して、自信満々でニセモノが出てきても、それでも実際の今井カニ蔵と勝負したら、残念ですがコールド負けは確実である。
報告会5
(舞台の袖から見た、楽しそうに踊るカニ蔵どん)

 それでは何故書かないかといえば、面倒だからである。実際にお聞きになりたい場合、5月末から6月にかけて東進の各校舎で開催される父母向けの「特別教育講演会」に出席してくだされば、3月16日の講演をほぼ同じ内容の話をする。あの日25分で話したことを、90分にわたってさらに楽しく展開するから、そりゃ面白いこと請け合いである。生徒の父母でなくとも、ちゃんとした大人のヒトなら参加できる。東進は「関係ないヒトは帰ってください」と追い返すほど度量が狭くはないはずである。
 さて、こうしてホントに25分で話を終えた。35分の内容を25分に即興で縮めたのだ。自画自賛ぐらいさせてもらいたいが、こうして今井の講演部分についての満足度は、アンケートでの驚くほど高い数字に反映されることになる。
報告会6
(大きな会場でスクリーンに映し出された巨大なクマ五郎)

 事前の準備とは、「熱心すぎて制限時間内に話せないほどの内容を盛り込むこと」ではないのであって、重要なのは「どこまで削れるか」「どこまでコンパクトにまとめるか」。「あれも話したい」「これも話したい」で雪だるま式に講演が膨れてしまうのはシロートなので、「これも削ろう」「万が一の場合はここも削ろう」という姿勢をなくしてはいけない。35分が25分になってしまった場合に、どこを減らしてバランスをとるか、そこまで事前に考えるのが正しい準備である。
 こういうことは、授業の準備でも同じで、話したいことを全部話してテキストにやり残しがたくさん出るような予備校講師は、情熱あふれるようでいて、実はダラしないだけである。