Wed 100310 神戸北野ホテルが好きである ダメなホテルの特徴 隣りの家の忠犬君 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 100310 神戸北野ホテルが好きである ダメなホテルの特徴 隣りの家の忠犬君

 3月11日、神戸講演会が大成功に終わり、その後で食べた鯛飯も旨くて、大いに気をよくして深夜ホテルに戻った。神戸での宿泊は「神戸北野ホテル」である。
 会社担当者が予約してくれたのは新神戸駅前のANAクラウンプラザホテル神戸。ついこの間まで「新神戸オリエンタルホテル」だった同じ建物なのに、いつの間にか経営が代わってしまった。代ゼミ時代、神戸に宿泊することは少なかったが、夏期講習や直前講習でたまに神戸にくればいつも「オリエンタルホテル」だった。気に入っていたホテルだったので、余りに唐突な経営者の交代が気に入らなかった。
 そこで今回は神戸北野ホテルを試してみることにした。2008年12月ニューヨークで2週間滞在したのがグランドセントラル駅近くの「キタノホテル」。神戸北野ホテルは(ウワバミ情報に間違いがなければ)同系列というわけでもないようだ(というか、全く無関係かもしれない)が、何となくキタノの日々を思い出させるものがある。
神戸1
(神戸講演会 写真のみ昨日の続きです 1)

 ニューヨークのキタノホテルにはたいへんお世話になった。ベルボーイ・キャプテンの接客態度も爽やかで丁寧だったし、クリスマス直前だったのにステーキの名店「ウォルフガング」を見事に予約してくれたコンシェルジュも優しかった。アメリカの油で胃袋のてっぺんまでギトギトになりそうになった旅の後半、キタノホテル地下の「白梅」のカツ重と日本酒にどれほど助けられたかわからない。「油でギトギトの胃袋でカツ重」という選択は確かに奇妙なのであるが、あのカツ重のカツは違ったのだ。ギトギト胃袋にこびりついたアメリカの油を、柑橘系の洗浄剤でキレイに洗い流したように爽快になった、そんな感覚であった。
 あんまりベタ褒めするとかえって嘘くさいが、フロントクラークの接客、広くはないが落ち着いたロビーの雰囲気、2階のバーで深夜につまんだサンドウィッチ(厨房の営業時間が過ぎているのにイヤな顔もせずに作ってくれた)、どれをとっても素晴らしいものだった。日本人団体や中国人団体のツアー待ち合わせで朝から晩までごったがえす他のホテルとは、キタノはとにかく比較にならないのである。
神戸2
(神戸講演会 写真のみ昨日の続きです 2)

 神戸北野ホテルに期待したのは、それと似た静かで優しい雰囲気である。騒がしすぎない神戸の街の雰囲気も悪くない。せかせかした梅田から、せかせかした新快速でやってくると、いっそうせかせか感覚が高まるが、神戸をゆったり歩く人々には格段に気品と落ち着きがあって、ウワバミでさえ「ま、いっか。そんなに鎌首もたげなくても」という和んだ気持ちになれるのである。
 チェックインしたのは14時。神戸の講演まで時間がたっぷりあったので、軽く昼食をとることにした。「近くにどこかいい店を紹介してください」とお願いしたところ、徒歩2分、坂を下っていったところにちょうど「軽く食べられる」ピッタリの店に連絡をとってくれた。おお、これでこそ北野ホテル。親切、丁寧、痒いところに手が届く。まるで今井の英語の授業みたいである。ほえ。
北野ホテル
(神戸北野ホテル、正面)

 客室も静かで清潔。清掃係がドカドカ走り回るようなホテルとは別格である。だいたい、ダメなホテルで一番ダメなのは、清掃係のオバさんたちが騒がしいことである。部屋のドア越しのおしゃべり、まだ朝9時だというのに掃除機があちこちで唸りをあげ、掃除機は壁をドスドス殴り、近くの部屋のドアが閉まっては開き、開いては閉まり、そのガサツな騒音は「バタン♨バン」をはるかに凌駕して「ドカン♡ドン」だったりする。
 親戚の結婚式に来た子供たちが喚声をあげて廊下を走り回る。張り切り放題に張り切った早起きオバサンたちは、8時にすでに朝食をとり終え、声をそろえて傍若無人に笑いながら通り過ぎる。エレベーターホールの近くの部屋なんかだと、今日結婚する親戚の○○チャンの評判の悪さを、30分も続くオバサンたちの立ち話で思い知らされる。
 確か福島のホテルだったが、チャパツ(もしかして死語?)の若者が2人、わざわざ今井カニ蔵くんの部屋のドアにもたれかかって、誰かの友人の噂話を延々と続けたことがあった。お馴染み今井どんの迫力満点の怒鳴り声で2人とも飛んで逃げていったけれども、よく考えてみれば危険な話である。
 京都のホテルグランヴィアは京都駅の真上だから、南側の部屋で朝6時を過ぎれば、もう安眠は期待すべくもない、というより、「目覚まし時計は必要ない」と言うほうが正確。朝が弱くて「チャンと起きられるか心配だ」というヒトには、まさにもってこいのホテルである。電車の発車を告げる電子音がずっとプルプルプルプル鳴りつづけ、駅係員たちの
「危険ですから、白線よりお下がりください」
「危険ですから、駆け込み乗車はおやめください」
「危険ですから、立ち止まらないでください」
と大音量で放送しつづける切羽詰まった声が、ビルの壁づたいに15階の部屋まで聞こえてくる。おお、「ですから」「ですから」うるさいね。どんなに寝ぼけていても思わず飛び起きて「危険ですから、プルプルプル」と叫びたくなる。
北野付近
(静かな神戸、北野付近で)

 神戸北野ホテルでは、そういう心配は不必要である。窓を開ければ神戸の静かな高台の高級住宅街であって、街自体が静謐に包まれている。目覚まし時計がなかったら、おそらく昼まで眠ってしまうところである。廊下もシーンとして、走り回るコドモの影も、談笑するオバサンの影もない。朝早くから掃除機を引きずり回しドアに体当たりするガサツな清掃係も見当たらない。
 ただし、予期しないこととは、全く予期しなくても起こるものである。神戸の場合は「静かな住宅街」で飼われていた大きな犬がその「予期せぬ存在」。2階の今井どんの部屋の真下で、早朝から何だかゴソゴソやっては吠え、ゴソゴソやっては吠え、まあそれなりにうるさかった。イヌ太郎君としても、突如2階の部屋にクマだかウワバミだかカニ蔵だか、得体の知れぬ生物の気配が濃厚に漂い出せば、犬というものの忠実な職業意識として、ゴソゴソやらずにはいられなかったのだろう。それはまた、たいへん不憫な可愛いヤツでもあるのだ。