Wed 100224 京都グランヴィアはキライだ 焦げ味噌臭 寿司「四季」 成田で講演会 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 100224 京都グランヴィアはキライだ 焦げ味噌臭 寿司「四季」 成田で講演会

 2月24日、19時から成田で講演会があって、京都から成田まではるばる移動しなければならない。おお、ようやく記事の内容と表記上の日付が一致するところまで追いついてきた。
 2月24日、目が覚めると、まだ京都である。京都宿泊の時に会社が予約してくれるホテルは京都グランヴィアホテル。ここはキライである。今井カニ蔵くんはなかなかワガママで、宿泊するホテルにも強いこだわりがあるのだ。正直申し上げて、広島でも岡山でも京都でも大阪でも、グランヴィアは大キライである。JR西日本という会社が大キライ(その理由については昨年の記事ではあるがSun 090315参照)で、グランヴィアの経営はまさにそのJR西日本だから、ということもある。しかしそれ以上に、グランヴィアのデカい建物は、どの都市でも街の景観を破壊するのである。
 駅前にデカい建物を建てて街の景観を破壊する代表格は、ビジネスホテルと予備校である。この傾向はこの20年特に激しくて、名古屋でも仙台でも新幹線で到着すると、意地の張り合いのような、予備校の矢印つきの派手な看板に愕然とする。「そういう看板や建物で圧倒しようという時代は、もうとっくに終わりましたよ」と言ってあげたくなる。
 特に京都の場合、駿台とホテルグランヴィアはもっと遠慮して、古都の駅前の美観というものを大切にしたほうがいい。教育に携わる者は、1000年の古都の景観を受験一色に塗りつぶすようなことをしてはならない。観光に携わる者が、はるばる到着する訪問客の視界を醜い建築物で汚してしまってはならない。京都駅の南側の景観は駿台が占拠、北側の景観はグランヴィアが占拠して、その上に古びたローソクのような京都タワーの先端がちょこんと突き出ている有り様は、ほとんど古都を侮辱しているように見える。
 こういうわけで京都グランヴィアは大キライ。会社が予約してくれても、いつもなら確実にキャンセルして、堀川中立売のブライトンホテルか、蹴上のウェスティンホテルを自分で予約しなおす。ブライトンのいかにも優しい謙虚な建物など、グランヴィアに爪の垢を煎じてのませてやりたいぐらいである。しかし、いつもいつもそういうことをしていると、会社の担当者から「今井先生はワガママすぎる」と睨まれてしまいそうなので、今回はちょっと我慢して担当者の顔を立てることにした。

(2月24日、成田での講演会)

 さて、目が覚めるとすでに10時を過ぎている。気づくと部屋の中が何だか味噌臭い。正確にいえば「焦げた味噌」臭い。ただし、これはグランヴィアが悪いのではない。いつも焦げた味噌の臭いが充満しているなどというホテルはありえないので、これは今井カニ蔵がいけないのである。昨夜のお食事会の余韻を、ホテルの部屋に持ち込んでしまったのだ。
 正確には、こうである。昨日の講演会のあとの食事会が佳境に入ったあたりで、「味噌の朴葉焼き」が出た。しかしさすがに佳境。話が盛り上がりに盛り上がったところで、みんなで話に夢中になっているうちに、小型七輪に載せた味噌の朴葉焼き4セットがすべて激しいケムリをあげて燃え出したのである。我々8人がいた個室は紫のケムリでいっぱいになり、ケムリはその後1時間にわたって部屋に充満したまま。ほとんどむせ返りそうな、濃厚な焦げ味噌臭の中で、それでも夢中で1時間話しつづけるほど、昨夜の飲み会は楽しかったということである。

(語るカニ蔵1 成田講演会で)

 しかし、「昨夜は楽しかった」ということと、「全身これ焦げ味噌臭」の状況で1日を過ごすこととは、全く別の問題である。しっかり風呂に入ればカニ蔵の肉体や髪の毛に染み込んだ焦げ味噌臭は何とかなる。特に「髪の毛に染み込んだ」というほうは、その「髪の毛」なるものの短さを考えれば、難しいことはない。
 問題はスーツとコートである。鼻を押しあてるまでもなく、クローゼットの外からでも焦げ味噌臭は十分探知できる。試しに鼻を押しあててみる。おお、ううぉうぉ、おお、うぎゃぎゃ。焦げた、味噌の、激しい、臭いに、まさに、たじろがずには、いられない。というより、コートなんか「焦げた味噌をたっぷり塗った美味しそうなトースト」という状態である。犬がいたら、激しく吠えて威嚇するに決まっている。
 京都駅構内の薬局で、ファブリーズだったかリセッシュだかの小瓶を購入。ほとんどまるまるコートに吹きかけてみたが、事態はまったく改善しない。そういう付け焼き刃の対応で済むほど、事態は甘くないのである。
 そこで「事態は甘くない」と見た今井カニ蔵は、「この際、無視する」「臭わないことにする」という驚きの強硬策に出た。これは今井カニ蔵の十八番(おはこ)。「知らんぷり」ということにすれば気も楽、もしマズいことになれば他人のせいにしてホッカムリをすればいい。この程度のニオイなどというのは、人の命や将来に関わるものでもなし。知らんぷりのホッカムリで、逃げ切れるところまで逃げてしまえばいい。

(語るカニ蔵2 成田講演会で)

 12時にチェックアウトして、グランヴィアの寿司屋「四季」にはいる。「グランヴィア大嫌い人間」だから、この寿司屋にも初めてきたけれども、なかなか感じのいい職人さんで、話は弾んだ。コハダばかりやたらに食べていたら「コハダが好きということは、東京の人ですか?」と見抜かれてしまった。
 彼はもともと東京/東久留米の人で、水戸にもいた経験があるとのこと。グランヴィアはキライだけれども、この寿司屋だけは大好きになった。池袋や水戸の話を長々としているうちに、わが「焦げ味噌コート」には、魚と寿司の匂いがさらにしみついて、要するに何の匂いのコートなのかわからなくなった。しめしめ、ホッカムリ作戦が成功しはじめていたのである。
 新幹線で2時間たっぷり眠って、品川で総武線快速に乗り換えた。今日の講演会は成田である。成田は遠い。遠いからこそ「焦げ味噌コート」からの脱却が期待できるはずであったが、品川でも、成田で下車する直前にも、期待をこめて鼻をコートに押しつけた今井カニ蔵くんは、見事に期待を裏切られたのである。
 講演会開始19時、終了21時。出席者91名。昨日の京都の1/3ほどの人数だけれども、何しろ会場が小さいから、お馴染みの「パンパン」で立錐の余地もない。昨年もこの時期成田に来たが、パンパンは昨年を遥かに上回るパンパンで、正確には「パンパンパン」である。「小さい会場がパンパンパン」は「大きな会場がパンパン」に勝るとも劣らぬ一体感を生み出すので、楽しさは昨日と変わらない。

(成田のパンパンパン)

 この3日間の満足感は大きかった。ここから3月3日の函館まで講演会はしばらく休みになるが、3月もまた全力を尽くそうと考えつつ、代々木上原に戻るころにはそろそろ日付も変わっていた。日付がかわっても焦げ味噌臭は残っていたが、まあいいじゃないか、焦げ味噌臭ぐらい、講演の楽しさに比較すればどうということもないのである。