Sat 091128 風邪薬を飲んで大人しく寝ています 猫の涙 浅い眠りの中でみる夢(前半) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 091128 風邪薬を飲んで大人しく寝ています 猫の涙 浅い眠りの中でみる夢(前半)

 そういうわけで(まあ、何となく昨日の続きです)、風邪薬を飲んで、昼夜を問わず、浅くて薄いドロンとした眠りの中を、漂いながら過ごしている。大人しく寝ている姿は、自分自身で考えてもいかにも優等生であって、優等生は寝すぎて腰が痛くなるものなのだと、この年にして初めて思い知った。浅くて薄い睡眠の中では、不快な夢が脈略もなくいつもトロトロ流れているもので、目が覚めてもそれをまだちゃんと忘れていない。ふと目が覚めても、今みたばかりの夢の筋を追っているうちに、再びそのまま眠りに落ちて、見事なほど一貫した夢の続きをみるのである。稀に、ハンガリー語やチェコ語の響きが夢の中に朦朧と流れ込んでくることもあって、まあそれは要するに「うなされている」に過ぎないのかもしれない。

 

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ネコの涙
クマのダンナが風邪で元気がないからである


 たったいま見た夢では、まだ若い今井どんは新宿に近い木造アパートに引っ越してきたばかりであった。荷物はだいたい片付いて、窓を開けると4月か5月の生暖かい曇天のなか、木造2階建ての窓から薄茶色の街が一望できる。どうやらアパートは高台にあるのである。しかしとにかく授業にいかなくてはならなくて、授業を受ける立場なのか、授業をする立場なのか、それはハッキリわからないが、とにかく必要な荷物を鞄に詰め込んでアパートを出ることにする。


 持ち物がなかなか揃わなくて、あれが見つかったと思えば、今度はあれが見つからない。その繰り返しで激しくイライラするのは、浅い睡眠の夢の特徴である。安部公房に「夢の逃亡」という小説があったが、水飴の川の中を逃亡する感覚が、今井どんの場合は「荷物が揃わない」という形式で現れるようである。


 アパートを出て、いろいろ地下鉄を乗り継いで、学校のある場所に向かう。高架になった鉄道の階段を果てしなく下りて、ようやく山手線らしい電車に乗り込む。前から2両目である。電車の中は何となく「都電荒川線」の車内と似ていて、そういうことを隣りのオバサンに話しかけているうちに、座席に座っているわけでもないのに、ふと眠りこんでしまう。気がつくと、何だか暑苦しい感じがして、冷たい汗をかいている。


 ちょうど電車は駅に着いて、「松長町」または「松永町」である。車内アナウンスで「樹木の松に、末ながく、と書いて『松なが町』です」と変な猫なで声の丁寧な説明があるが、駅の看板を見上げると「松長町」とある。「おお、松長町か、乗り過ごしたから、ここで降りて引き返さなければならない」と考える。確か、山手線の北の方、巣鴨と大塚の間あたりに「松長町」があったはずだ、それほど乗り越してはいない、すぐに引き返せばまだまだ授業に間に合うだろう、そう思いながら、電車を降りる。確か、ここで一度目が覚めて、「松長町」の存在について考えたが、存在を一瞬で確信して再び眠りに戻った記憶がある。

 

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深夜の孤独なニャゴ
ただし、画面左下にクマどんの足が写っている


 乗ってきた山手線は外回り電車だったようで、進行方向右側がホームである。ずいぶん裏ぶれた感じの駅で、背の高い雑草が生い茂って、線路を覆い尽くしている。しかも、山手線だと確信していた電車は、どれも2両編成。藍色というか、群青色というか、とにかく微妙な感じの濃い青系に塗装された古びた電車が、ブレーキのこすれる音を立てながら、5月の陽炎の中を次々とホームに入ってくる。ひしゃげたパンタグラフ、電車全体がハチマキをしたような白いライン、そのハチマキの高さに取り付けられた古いライト。これは山手線ではない、居眠りしている間に、どこか知らない駅で電車の行く先が変わってしまったのだ。


 しかも、やってくる電車はみんな、自分が行きたい方向と反対向きである。行きたい方向の線路には背の高い雑草が生い茂っていて、どこまでも線路をたどっていったら、駅舎のあたりで線路は途切れてしまった。どうやら松長町が終点なのである。駅員に問いただすと「インフォメーションにいってくれ」と言う。「ああ、案内係ですね」というと、「いや、インフォメーションです」と言い返す。


 「インフォメーションではなくて案内係に行きたい」と繰り返していると、駅員は意地悪そうにニヤリと笑って「ああ、そういう場所はありませんね」と言い放つ。「では、自分で案内係を探します」と捨て台詞を残して、暗い駅舎に入っていく。後ろから「お客さん、お客さん、大丈夫ですか」と叫ぶ声が聞こえるが、もちろん無視してどんどん駅の中に入り込んでいく。

 

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(ふて寝ほど気持ちのいいことは、他に思いつかない)


 駅舎に入ってみると、案内もインフォメーションもなくて、オジサン2~3人とオバサン2~3人が、何だか低い声でゴソゴソ話し合っている。低い台の上に、すいか、魚の一夜干し、お菓子類、花火、子供がさわってはいけない種類の雑誌、小学館のこども絵本、虫取り網、虫かご、そういうものを曖昧に並べて売っているだけで、要するにここは田舎の駅の土産物屋に過ぎないのである。


 「松長町ですよね」と尋ねると、オバサンたちは頷くばかりである。「では、どの電車に乗ればいいんですか?」と尋ねなおしても、やっぱりオバさんたちは、いかにもすべてに納得したようにウンウン頷くばかりで、さっぱりラチが開かない。どの方向のどの電車に乗ったらいいのか、結局なんの見当もつかないのである。

 

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(ふて寝、拡大図)


 こんな長々とした奇妙な夢の話が延々と続くのでは、読まされる方もたまらないかもしれないが、残念ながらこの夢は終わらない。このあたりが中間点で、だから当然明日も夢の続きである。ただ、15年以上も予備校講師を続けていれば、いつの間にかダシがきいてくるもので、夢の話がどうしても受験とか授業とか激しい焦燥感とか、そういうものと絡まっていく。昨年12月30日、「予備校講師が見る夢の話」を書いたのだが、明日はほぼ1年前の記事と絡めて、いま焦りでどうしようもなくなっている諸君のための処方箋が最後につくことになる。


 もちろん処方箋は大学受験生に限らない。シューカツがうまくいかなくて泣きそうな諸君、第2新卒になりかけている諸君、とっくに第2新卒であるという諸君、およそ焦燥感が夢に如実に溢れ出してくるすべての諸君に向けて、おそらく何にも役立たないだろうが、風邪にうなされる今井君に書ける範囲の処方箋を示したいのである。

1E(Cd) Mravinsky & Leningrad:SHOSTAKOVICH/SYMPHONY No.5
2E(Cd) Maggini String Quartet:ELGAR/STRING QUARTET in E MINOR
    PIANO QUINTET in A MINOR
3E(Cd) Barbirolli & Hallé:THE BARBIROLLI ELGAR ALBUM 1/2
4E(Cd) Barbirolli & Hallé:THE BARBIROLLI ELGAR ALBUM 2/2
5E(Cd) Elgar & London:ELGAR/SYMPHONY No.2
8D(DvMv) ERIN BROCKOVICH
total m72 y1609 d3854