Tue 091103 7日は早稲田祭 これから京都へ 飛行機から、紅葉で赤く染まった山脈を見る | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 091103 7日は早稲田祭 これから京都へ 飛行機から、紅葉で赤く染まった山脈を見る

 これを書いている時点で、11月6日午前10時10分である。新幹線で京都に向かっている。快晴。車窓からは富士山が美しい。8合目あたりまで白く雪を冠っている。カメラのシャッターを切る音がする。車内にはロシア人やフランス人、あるいはドイツ人と思われる乗客が多数いるから、シャッター音は、おそらく彼らである。今日は夕方から奈良で講演会があって、宿泊は京都。紅葉にはまだ早すぎるが、講演会前に少し京都をブラブラしようと思って、それで朝の新幹線に乗った。いま、天竜川を通過。京都まで、あと1時間弱である。


 明日は13時から早稲田祭だから、11時半までに早稲田に行かなければならない。読者の皆様にも多数ご出席願いたいが、12時30分ぐらいに早稲田に到着していただければいい。ただし、相当激しく笑っていただくことが予測されるので、笑いを止めるためのタオルやハンカチなどの持参は必須である。

 

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(6日、京都で出会ったアンズ君)


 さて、時間を元に戻さなければならない。10月31日、福岡県大牟田市で講演会があり、昼すぎのANAで福岡に向かう。席は3K。この時期に、羽田から西に向かう飛行機なら、進行方向左側のA席よりも、進行方向右側のK席を選ぶべきである。もちろん車窓からの風景に一切興味がなくて、席に着くなりスポーツ紙や日経新聞に夢中になるような人たちならば別である。しかし、10月末から11月中旬まで、羽田から西に飛ぶ飛行機のK席なら、眼下の山々が真っ赤に染まって見える。もちろん、紅葉の赤である。


 羽田を離陸して、大きく旋回して都内上空を横切った後は、眼下は驚きの声を抑えきれないほど赤く染まっている。赤石山脈、木曽山脈、飛騨山脈、その3000m級の頂上はさすがに雪で白く覆われはじめているが、それ以外は山裾まで紅葉で真っ赤なのである。最初のうちは夕陽に赤く染まっているだけなのかと思うのだが、朝でも昼でも、夕方の時間帯でなくとも山々は本当に驚くほど赤い。

 

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(アンズ君。オスだそうであるが、ナデシコにそっくりだった)


 今井君はこういうとき、ふと隣りの席の人に話しかけたくなる年齢に達している。おじさんとかおばさんとか、一定の年齢に達した人たちとは、その「ふと」の頻度が高まった人たちのことである。「おば」と「さん」の間に「あ」の字が入る頃になると、デパートのバーゲンでも、バスや電車の中でも、あっという間にお互いどうしが打ち解けて、息子の嫁の悪口や、通っている病院のナースの悪口や、ダンナや自分の病気の自慢話に打ち興じるようになるのである。


 今井君の場合、「おじ」と「さん」の間にまだ「い」の文字が入るまで相当の間があるから、「話しかけたい」とは思っても、実際に話しかけるという行動に出ることは、余程のことがないかぎりありえない。初めて入ったレストランで、ノリとシラス入りオムレツがやたらに旨くて感動すれば、シェフやウェイターに「旨いですねえ」と感動を伝えることはある。寿司屋で土瓶蒸しに感動すれば、もちろん職人にそれを伝えることもする。しかし、さすがに飛行機の隣りの席の人に無遠慮にベタベタするところまでは進んでいない。

 

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(6日京都で出会った、やはりオスのリク君)


 それでも、日本の屋根ともいうべき山脈が山裾まで紅葉に染まっている光景を目の当たりにすると、
「そんなスポーツ新聞なんか、いつだって読めますよ」
「日経なんかいくら読んだって、お金は儲かりませんよ」
「文庫本に夢中になるのは、飛行機を降りてからでいいんじゃないですか?」
と、正しく指摘してあげたくなる。何故なら、余程の晴天でなければ、この巨大な赤い山塊が眼下にどこまでも広がる有り様をみることはできないからだ。この時期に羽田から西に飛ぶ飛行機に乗る用事があって、K席が空いていて、しかも快晴に恵まれて、はじめて目にすることのできる奇跡的な光景なのである。窓の外に興味をもちさえすればこんな美しさに感動できるのに、みすみす日経なんか読んでいるのでは、出世もあまりできそうにない。

 

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(リク君。デカいクマどんの黒い影の中で、一人じゃれる)


 ただ、この日は隣りの席が空いていた。プレミアムクラスもほとんど満員で、3席並んだその真ん中にも窮屈そうに客が縮こまっているのに、何故か3Kの私だけ隣りが空いていて、大いにラッキーである。こうなれば、他人に怪訝そうな顔をされる必要も全くなくて、5歳児か6歳児なみに夢中になって「すげー」「すげー」を(もちろん心の中で)連発しながら、やがて向こう側に山陰の日本海がかすかに見えるようになるまで、窓にかじりついて過ごした。まあ、途中お弁当も出る時間帯だったから、この熱中ぶりをCAの人たちには見られてしまったわけであるが、そのぐらいはいいだろう。


 気がつくと機内のテレビで「機内でできる簡単な運動」というのをやっている。画面では、エコノミーの座席に並んだ3人のCAさんたちが、「首を曲げる運動」とか「足の疲れをとる運動」とか、そういう軽いストレッチをやってみせている。にこやかな笑顔、「いかにもCA」という変な感じ。NHKでよくやっている「テレビ体操」のCA版である。

 

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(驚くほど毛並みのいいオスだった)


 何にでもカミつくわけではないが、うーん、これはちょっとおかしなパフォーマンスかもしれない。運動してみせるのに、何もCAの制服でやってみせなくてもいいはずである。3人の黒いストッキングをはいた脚が延々と画面いっぱいに映し出されたりする「ちょっといかがわしくないか?」と言いたくなる場面もないではない。世の中にはいろんな趣味の人間がいて、「CA大好き」ぐらいは仕方ないとしても、「黒ストッキング大好き」などという変わった趣味の人々も存在するのだ。少しだけでいいが、航空会社は気をつけた方がいいように思う。

 

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(福岡市営地下鉄、福岡空港駅)


 福岡空港着、15時。ここから地下鉄で博多駅に出て、博多からJR九州で大牟田に向かう。福岡の鉄道にもいろいろICカードができていて、市営地下鉄には「はやかけん」、その他の鉄道各社は「すごか」、ともに九州弁をつかった楽しいシャレなのである。ただし、SUICAとかPASUMOとかでここを通過しようとしても、今のところそれはできない。「はやかけん」「すごか」以外は使用できません、今はまだその段階である。