Thu 091022 三重県津市という地名について 「津新町校」での講演会 若い講師と懇談 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 091022 三重県津市という地名について 「津新町校」での講演会 若い講師と懇談

 20日、三重県の津市で講演会。三重県内にも東進の校舎はたくさんあって、四日市でも伊勢でも松阪でも、ちょっと観光に出かけただけの街の駅前で、複数の東進校舎が切磋琢磨しあっているのを見かけると、「自分だけこんな暢気な極楽トンボみたいに観光旅行なんかしていていいのか」、そういう自責の念に駆られることが少なくない。そうなると、鳥羽や伊勢神宮に出かけて「おかげ横丁」で赤福本店に立ち寄っても、松阪で「和田金」「牛銀」の料理を満喫しようと思っても、観光地ではないけれども四日市や津で「ぶらり途中下車」を楽しむにしても、目の前の東進校舎が気になって仕方がない。


 もちろん「気になる」の「気になり方」の中には、嬉しさや誇らしさも多分に含まれていて、「おお、東進だ」「おや、東進だ」と電車の中で叫ぶのは、講師として楽しいことこの上ない。世界で一番短い地名のうちの一つの津市でも、「津」というきわめて素っ気ない駅名の駅前と、そこから電車で2~3分の「津新町」の駅前と、2つの校舎で講演会をした経験がある。

 

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(津新町での講演会。100分間大いに盛り上がって、楽しかった)


 代ゼミ時代には8年間にわたって週1回名古屋校に出講していたから、津から通ってくる生徒ともたくさん顔なじみだった。以来、津出身の人と出会うと、ちょっと心配になる。海外で出身地を尋ねられた時に、怪訝な顔をされないかと思うのである。「Where are you from?」「つ」「I’m sorry?」「つ」「Pardon me?」「つ」「What?」「つ」。相手はだんだん苛立ってきて、苛立てば苛立つほど「つ」が地名であるとは気づかなくなる。「Are you kidding?」「つ」「Pardon?」「つ」「Please answer my question!!」「つ」「Oooh, I’m asking where you are from. Please!!」「つ」。こりゃ、キリがなさそうだ。


 もっとも、「津」が母音一つで終わるからと言って「世界で一番短い地名」と断じてしまうのはまだ軽率なので、「津」はローマ字で書けばTSUと3文字になるところが弱点である。意外なところに隠れている伏兵はたくさんあって、ANとかKUとかWAとかOIとか、たった2文字の地名が、広い世界の片隅にいくらでも転がっている。


 上には上があるもので、母音1つの地名、例えばEでもIでもOでも地名として成り立つ。「上には上」ということなら、母音さえ含まない地名「N」「R」「Z」などということだって、アフリカあたりなら考えられないことは決してない。

 

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(つ)


 そうなると次第に話は抽象性を帯びてきて、「地名のない地名」「名もない場所」の存在などということも考えなければならなくなる。仲間内のニヤニヤ顔だけで示される場所、泣き顔のマネでどこだかわかってしまう場所、例えば前者なら大昔の遊郭とか、後者なら処刑場とか、そういう記号論みたいな問題になる。このあたりから、今井君のキライな難しい話になってくる。


 さらに話が進めば、「地名のない場所の存在」やその逆の「場所のない地名の存在」「名前とは何か」「実体と名称とどちらが先に生まれたのか」「宇宙はどこから来たのか」の類いの話題になるのであるが、バカで陽気な今井グマには難しすぎてよくわからない。というか、そんな難しい話になると、目の前の「つ」という駅の看板を見ただけで頭が混乱しはじめ、「つ」の文字が「?」の記号に見えてくるから、ますます目が回りそうである。


 まあ、難しい話はヤメにして、津新町で近鉄電車を降り、津新町の駅前の「津新町駅前校」に入る。なんだかややこしいが、わざとややこしくしているのだから、ややこしくて当たり前だ。ここは3年前にも講演に来た校舎である。あれ以来、校舎としてますます好調なようで、誠に結構である。生徒たちの活気もなかなかのもので、これならこれからもどんどん伸びていきそうだ。駅前まで東進のスタッフ3人が迎えに来てくれていて、丁寧な挨拶を受ける。高3とおぼしき女子高校生も周囲で大騒ぎしていて、たくさんの乗降客の視線を浴びるのが、また嬉し恥ずかしである。丁寧にミーティングをしたり、著書にサインしたりして、講演までの2時間弱は瞬く間に過ぎた。

 

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(津新町校のシンボル、ふくろうの像)


 講演前に、「予備校の数学講師になりたい」という30歳ぐらいの男子職員と10分ほど話をした。非常に熱心な人で、朝早くから校舎に来て、一人で黒板に向かって模擬授業をしたり、東進講師の授業を見学したりして、ひたすら授業の向上に努めているのだという。素晴らしいことである。


 こういう熱心な先生には、成績優秀なクラスよりも、ぜひ「困っている生徒たちのクラス」を担当してもらいたい。講師として伸びる秘訣はそこにあるので、若い先生方はとかく成績優秀者の指導をしたがるのであるが、優秀者などというものは講師がどうあろうと勝手に伸びていってしまうので、講師の力を伸ばす栄養にもならないし、言葉は悪いが「肥やし」にもなってくれない。


 伸び悩んで困り果てているクラスの生徒たちこそ、講師の力を伸ばす最高のステージである。生徒たちは、もともと成績優秀だった先生にとっては予想もつかない思いがけない場所でつまづき、そういうつまづきの蓄積が伸び悩みの原因になっているものである。ダメな教師の特徴は、そのつまづきが「どこか1つだ」と思っていること。つまづきはいくつもいくつもたくさん折り重なっているので、その1個1個を丁寧に取り除いていく根気づよい作業によってのみ解消されるのである。


 脳外科の「神の手」福島医師の手術の様子をTVで最近よく放送しているが、レベルは全然違うにしても、感覚としてはそっくりである。幾重にも複雑に絡まりあったつまづきを、他の部分に傷をつけないように丁寧に丁寧に取り除いていくしかないし、その繰り返しによってしか講師の力は伸びない。そのあたりのことがうまく伝わったかどうか、その場ではわからなかったが、ぜひ彼には全力を尽くしてほしいと考えた。

 

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(津新町校講演会で、妙に盛り上がっている今井君)


 講演会開始19時45分、出席者130名、終了21時25分。予定より10分伸びて100分の講演になってしまった。生徒たちの反応が余りにもよかったためである。せっかく爆笑しているのを、その爆笑を途中で押しとどめて話を先に進めるのはもったいない。ゆっくり笑いがおさまるのを待って、それから話を再開する。それを繰り返せば、チリが積もって山になり、その山が10分延長になった。今回から、使用するテキストを新しいバージョンにしたのも延長の一因ではあったが、ま、楽しい延長なら10分ぐらい、おなかが減っても大丈夫だっただろうと信じている。

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8D(DvMv) THE DUCHES
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