Wed090916 アイフルが「返済を待ってください」って?消費者金融の歴史を知る者として | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed090916 アイフルが「返済を待ってください」って?消費者金融の歴史を知る者として

 さて、昨日の2つのうちもう1つであるが(すみません、昨日の続きです)、他ならぬあの消費者金融アイフルが「お金の返済、もう少しだけ待ってくれませんか」と、実におずおずと言い出したのである。ええっ、それって、マンガ? 思い返せば20年前、テレビの広告は消費者金融(昔はサラ金と呼んだ)「武富士」のCMで溢れた。短い「Let’s go!!」で始まる音楽にのせて、グレーのレオタードに身を包んだ女性10数人が、当時の言葉でいうと「ジャズダンス」で踊りまくる。歌詞は忘れた。確か、「プルプルプール、プルプルプール、プルプル、プルプルgot to do!!」というのである。「レッグウォーマー」というのもあった。


 10年前からは、なりかけアイドル時代。アコムは小野真弓。今回「返済、待ってくれませんか」のアイフルは、チワワと清水章吾、今でもチワワだけは流行中。「どうする、アイフル?」というCMで、「困ったときにはアイフルにご相談」ということになっていた。アイフルの制服を着た「ご相談相手」のなりかけアイドルは辰田さやか。小野真弓も辰田さやかもそのままグラビア系に、あくまで中途半端だったが、まあ育っていった。10年後を予測できたわけではないだろうが、まさに「どうする、アイフル?」である。

 

1744

(パックマン、あるいはアゴが外れた猫)

 

 まあ、グラビア系についてあんまり詳細に述べると、あらぬ誤解をうける可能性があるからヤメておくが、安田美沙子(だったっけ?)にしても東原亜希(だったっけ?)にしても、プロミスとかディック(もともと「アイク」だったはずだが)消費者金融のCMから出発したのである。こういうまあ華やかな時代になったのも、大昔を記憶している私のような人間からみれば驚くべきことである。今でも夏川純(だったっけ?)「まあまあ有名タレント」を起用しているような、余裕のある(のかも)消費者金融も残っている。


 しかし、もともと消費者金融というのは場末の雑居ビルで細々と営業していた業種である。その意味では、塾&予備校業界と全く同じこと。30年ほどまえ、業界が華やかになる前は「ヤタガイ」と「ふくぶくローンの本田ちよ」がサラ金の代表的ブランド。信じられないだろうが「本田ちよ」である。「ふくぶくローン」である。確かに、老いた招き猫か福助さんみたいな恰幅のいいおばあちゃんが、こっちを見てニコニコして座っている看板だった。

 

1745

(ノスタルジー)

 

 この「本田ちよ」あたりに、戦後直後の日本で「高利貸し」と呼ばれた商売がどんなふうに発展していったか、その秘密があるのだが、それは悲しすぎる話だからここでは触れないことにする。若い諸君に知っておいてもらいたいのは、あくまでかつては「場末の雑居ビルで細々と」だったということである。


 「アイフル」「アイク」「アコム」みたいに「アイ」「ア」で始まる社名が多いのは、「電話帳で調べる時、最初に出てくるかどうか」が勝負の業界だったという歴史を示している。本来、あのままそういう細々とした業界であるべきだったのだ。「プロミス」「レイク」のように、電話帳では当然後ろになってしまう「プ」や「レ」を昂然と社名にする流れが、すでに業界の変質を示していた。そしてついに、3大メガバンクまでが消費者金融をおおっぴらに支援する悲しむべき時代になったのである。

 

(ナデシコ、大好きな階段の上から2段目)

 

 では、むかし隆盛を極めていたアイフルさんに、その顧客が「すみません、返済少しだけ待ってください」と申し出た時、アイフルさんがどういう態度をとり、どういう言葉で返済を迫り、返済できなければどういう処置に出たか、人々が忘れたかと言えば、もちろん誰も忘れてはいない。激しいいやがらせ、連日連夜の電話攻撃、罵詈雑言、脅迫まがいの督促状、暴力を背景にした督促。そういうものが実際にあったのかどうか、私は利用したことも被害にあったこともないから知らないが、消費者金融を舞台に、テレビドラマや映画でそうしたことが盛んに描かれていたことを思えば、まあ否定できないことだろう。


 その罵詈雑言を浴びせていた人たち本人が、立場が一転して「返済、待ってください」と泣きついてきたとき、それを「噴飯もの」と言わずに何というべきだろう。マンガそのもの、マンガでさえここまで上手に描けない噴飯である。もちろん、同じ罵声を浴びせ、同じいやがらせをし、同じ恐怖を味わわせるみたいな報復は全くの無駄。かつて被害にあったヒトがいるとしても、そういう仕返しを考えてはならない。

 

(疲労)

 

 ただ、どうしても彼らの過去に対する釈明を聞いてみたい。報道陣の前で経営陣3~4人がおざなりに頭を下げたからと言って、それで「おお、それなら返済を待ってあげる」というワケにはいかない。返済してもらう債権者側は、キチンと説明を求めてほしい。債権者側といい、消費者金融を支援する側のメガバンクといっても、この15年税金から驚くべき額の資金援助を仰ぎ、それで生き延びてきた金融機関であることを忘れてほしくない。


 ついでに言うと、これほど消費者金融の社名を列挙したブログ記事に対して、Ads by Googleがどういう反応をするか、それもまた楽しみである。