Wed 100203 「日本海」と北野天満宮 受験を終えようとしている諸君へ 「悠然と」 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 100203 「日本海」と北野天満宮 受験を終えようとしている諸君へ 「悠然と」

 こういうふうで(もちろん昨日の続きです)、ようやく2月13日になった。妙な興奮状態で大阪行き特急「日本海」のA寝台に乗り込んだわけであるが、興奮はなかなか冷めず、前の晩に1升近く飲んだ日本酒が電車の揺れに合わせてお腹の壁にぶつかり、こっちでチャポン、あっちでタポン、ヘタをすると口の方に上がってこようとするような有り様。これで「せっかくA寝台を予約したんだから、眠らなければ損だ」などと考えるなら、残念ながらそれは情緒も人情も理解しないアンポンタン、超カタブツのドンツクである。
 しかも、少年時代からの憧れの対象だったにもかかわらず「A寝台」はいろいろ不便な点があって、一言で言えば「狭苦しくて、使い勝手が悪い」。今回の講演旅行は今井クンには珍しく荷物が多くて、でかいスーツケースを引きずっている。それもこの「A寝台」の企画があったからで、寝台車で眠るのに「スーツを着たまま」では困るから、普段着とか着替えとか、めったに持参しないようなものまで引きずってきたのである。
 ところが、そのスーツケースを置く場所がA寝台にはない。「通路においていいか?」を車掌に尋ねてみると、「明朝、ワゴン販売のワゴンが通るから、ジャマになると困る」とイヤな顔をされた。イヤな顔をされたぐらいでいちいちムカついたり、いちいち降参したりする今井どんではないから、「ワゴン販売が困るなら、困らせておけばいいんじゃないか、それは販売員の側で工夫すべきことだ」と、強引に通路にスーツケースを放置することにした。

(特急「日本海」A寝台の入り口付近、「喫煙室」)

 あとは、本来なら「喫煙室」ということになっている部屋を占領して、子供の頃からぜんそくだから絶対に喫煙なんかするはずのない今井クンなのであるが、酒田・鶴岡を出るまで喫煙室をを完全占拠して、真っ暗な車窓を楽しんだ。鶴岡を過ぎて、さすがに疲れて狭い寝台(金属のハシゴをよじのぼらなければならない「上段」である)で眠ることにしたが、翌朝6時、空前絶後に強引な車内放送で叩き起こされた。金沢を出て、加賀温泉の駅に着く直前だった。「ええ、みなさん、おはようございます、列車は時間通りに運転しております、どうかご安心ください」と言うのであるが、こんなデカイ声でいきなり放送されたら、ご安心する前に心臓が止まりそうである。
 もっとも、それでも6時間近く正体不明で眠りこけていたわけだから、新津、直江津、魚津、富山、高岡、そういう途中駅での停車なんか、全く気がつかなかったわけである。もそもそ起き出してみると、昨夜の「喫煙室」は60歳ぐらいのオバサンに占領されていたが、オバサンは福井で下車。しめしめ、と再びこの部屋を占領して、問題のワゴン販売から購入した幕の内弁当「加賀百万石」を開いて朝食とした。同じワゴンが「ビール」「日本酒」というたいへん魅力的なものも販売していたのだが、さすがにこのあと夕方から講演会を控えた大切な身体である。いつもなら確実に「ビール2本、日本酒も2本!!」と叫ぶところであるが、偉い偉い今井グマは「自重&忍耐」という選択に見事成功したのであった。

(京都に到着した「日本海」)

 北陸トンネルを通過し、30年以上も前の急行「きたぐに」事件を思い出し、この長いトンネルの中で列車火災の犠牲になって窒息した人々のことを思う。やがて敦賀から湖西線に入って、数限りない「撮り鉄」の皆さんが列をなし、我が「日本海」に向かってシャッターを切るのを、実に誇らしい思いで眺め、その「日本海」の、しかもA寝台に乗車中の自分が何だかヒーローであるかのように感じ、美しい琵琶湖の朝の景色を眺めているうちに、山科のトンネルで耳が痛くなり、それが京都到着の前触れなのであった。

(湖西線からの朝の琵琶湖)

 というわけで、1ヶ月も前から楽しみにしていた寝台特急「日本海」12時間の旅はあっけなく終わってしまった。京都到着が午前9時51分、予定されている滋賀県草津市での講演会は19時半スタートであるから、ご丁寧なことに11時間もの余裕がある。このぐらい先に現地入りしていれば絶対に間違いはないが、それにしてもここから先は酒で時間をつぶすわけにはいかないから、今井クンとしてはそれなりに時間を持て余すのである。

(「日本海」の後ろ姿。背中が写っている紫リュック兄ちゃんの妨害で、危うく写真を取り損ねるところだった)

 宿泊予定の京都ブライトンホテルにスーツケースを預けて、さすがベテラン♡超人気♨予備校講師、受験生諸君のために、北野天満宮にお参りして、諸君の幸運を祈ってくることにした(Wed 100127「京都北野天満宮に行く」参照)。おお、こういう行動からして、すでに今井大明神の名にふさわしい。ぜひ尊敬→崇拝したまえ、神棚にお神酒をたっぷりあげて、伏し拝みたまえ。かっっかっっか。

(北野天満宮前、名物「やきもち」屋)

 北野天満宮はちょうど梅が満開である。受験生の親・兄姉・祖父母・曾祖父母とおぼしきありとあらゆる親類縁者が訪れて、受験生の無事と幸運を懸命に祈っている。ただし、人間というものにはある程度以上の冷酷さが備わっているもので、一通りの祈りが済めば、もう自分たちの世界に遊ぶことを考える。受験生なんかそっちのけで、紅梅/白梅、黒牛/赤牛、そういう天満宮名物の前でポーズをとり、写真撮影に打ち興じる姿には、たいへん利己的というか、「受験のことはまあ2の次」という雰囲気が充満しているのだった。

(北野天満宮前、名物「やきもち」屋の「やきもち」)

 これを書いている時点で、2月23日である。まもなく今年の受験の全てが終了しようとしているが、受験生諸君は、要するに世の中とはこんなものなので、もう少し気を楽にして最後の受験本番に臨みたまえ。受験前夜に、家族みんなが涙目で「頑張ってこいよ」「全力を尽くして悔いのないように」「あがっちゃだめだぞ」と、あまりにも当たり前すぎて開いた口も塞がらないようなことを叫び出すようになると、本人としても緊張は絶頂になり、目の前は真っ赤になって「とても眠れない」。果ては「帝国の興亡この一戦にあり」「Z旗を掲げよ」とか、日露戦争用語まで飛び出してくる有り様で、そんなことでは、とても本来の力は出し切れないのである。

(北野天満宮の紅梅。これはあくまで梅であるが、桜もまもなく咲きそうである)

 受験生諸君。合格祈願に出かけた家族が、実は紅梅/白梅の前で楽しそうにポーズをとっていた、その和やかで楽しそうな空気を想像しながら、「よし、ああいう笑顔を、今度は自分の手で勝ち取ってやる」と、ニコヤカに決意するようにしてほしい。むしろ、緊張で目の血走っている家族を穏やかになだめて、「そんなに緊張しなくても、自分は大丈夫だから」と、ニッコリ笑って、悠然と試験会場に向かってほしいのである。

1E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS(5)
2E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS(6)
3E(Cd) SHOW WA!
6D(TMv) THE CORE
total m18 y264 d4365