Sun 100131 「横手のボーヤ」とのライバル関係2 かまくらと、仰向けの激しい転倒 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 100131 「横手のボーヤ」とのライバル関係2 かまくらと、仰向けの激しい転倒

 ところが(はい、はい、はい、昨日の続きでございます)、高校入学直後から形勢が逆転する。すでにそれ以前から何だか様子が変になっていて、「宏クンは、数学がダメだ」という結論が、親戚ばかりか秋田市土崎港の地域全体に広がりはじめたのである。原因は昨日述べた「さきがけテスト」の順位表。そこには、順位ばかりでなく「各科目の得点」まで明示されていて、今井君は総合では「全県5位」なのに、数学だけは80点なのである。そのことで、驚くなかれ、親からは「これは恥さらしだ」とまで言われた。
 ポシティブに見てくれる人なら「他の科目が全部満点なんて、スゴいですね」ということになるのだが、今井君を嫌いなヒト、足を引っ張ろうと身構えていたヒト、今でもそういうヒトはいくらでも存在するが、そういう人から見れば「なんだ、数学ができないんじゃ、頭は悪いんだ」「結局、記憶力だけなんだ」ということになる。都会では考えられないことだが、あまり付き合いのない酔っ払いが今井三千雄(父)家を訪れては、上がり込んでさらに酒を飲み、「宏クンは数学ができないそうだが、大丈夫か」「数学がダメなのは頭が悪い証拠だ」「要するに、記憶力がいいだけだ」など、今井家の長男がどれほどダメか、遠慮会釈なく言いつのって、真夜中に勝ち誇って意気揚々と帰っていく。

(横手城南高校から坂を登った、横手城前のかまくら会場)

 こうして、高校入学後の今井君は急激に数学コンプレックスに陥っていく。何だかよくわからないが、周囲の人々みんなが残らず「宏クンの数学のゆくえ」を固唾をのんで見守っているような錯覚があり、たかが中間試験でも期末試験でも、「絶対に数学だけは失敗できない」と思うと、脳幹まで痺れるように緊張する。
 気合いが入りすぎて「Z会」にも申し込み、添削者に「あまりにも鮮やかな解答」とか、まあいろいろにおだてられ、それでますますおかしくなって、まともな解答ができなくなった。明らかに力ずくの積分で解けばいいとわかるような問題でも、「いや、ベクトルで」「いや、初等幾何で」「漸化式で行くか?」とか、周囲を唸らせる鮮やかな解答を気取っているうちに、今井君の数学はすっかりヒネくれたものになり、気がつけば「今井は数学がネックで東大に入れない」という惨憺たる状況になっていた。
 一方の「横手のボーヤ」は、そのスキをついて粛々と人生の道を前進していたのである。中3のときも、「さきがけ50傑」にさえ入れずに、新聞の紙面を飾ることもない。だから「宏クン」みたいに「数学がどうだこうだ」と周囲に囃し立てられることもなく、着々と勉強を重ね、気がつくと現役で京都大学医学部に合格していた。
 今井の宏クンはさんざん評判になったあげく、生活が乱れて典型的な早大生になってしまい、読書や映画や演劇に夢中になる。おお、早稲田そのものである。その今井君とは対照的に、「横手のボーヤ」は「京都大医学部卒の医師」として、やがて地域貢献に励む人生を歩むことになる。要するに、勝負はあまりにハッキリついて、「横手のボーヤ」の圧倒的勝利。というか、もともと勝負にも何にもなっていなかったのだ。

(かまくら会場、横手市役所付近)

 予備校講師になってからの今井君が、あまり厳しいことを言わずに、やたら「ほめたりすかしたり」が多いのは、中3のときから「数学だ」「数学だ」と周囲の大人に責められつづけておかしくなった、このあたりの苦い経験がモトになっているかもしれない。ネットなんかで、今井どんについて、「アメばかりで、ムチがない」とか、要するに「叱ってもらえない」という少数派の不平不満があるようだが、ま、こんな長い歴史がそのモトにあるのだ。
 これからも今井どんは生徒をほめつづける。無意味に激しく責めたりしない。この方針にはこんな歴史があることを、ブログで一緒に横手を旅してくれた読者の皆様には理解していていただきたい。というか、「叱られないと頑張れない♡」「きつく♡叱ってほしい♡」というタイプのヒトは、今井を選ぶのはヤメておいたほうがいいかもしれない。まことに申し訳ないが、そういう変な趣味のヒトとは付き合いきれないのである。

(横手看板シリーズ、最も気に入った歯医者の看板)

 そんなことをいろいろ思い出しながら、2月中旬の横手の町を歩いた。明日だか明後日だかから本格的に始まる「かまくら祭」の準備は順調に進んでいるようで、町のあちこちで秋田弁丸出しのオジサンやオニーサンたちがシャベルを振り上げてお馴染みのかまくらを作成中である。
 今年は暖冬ということだったが、実際にはサッパリ暖冬ではなくて、雪はありあまるほど積もっている。クマどんの記憶では、「雪不足」はこの十数年毎年の恒例であって、今井クンが高校生の頃から「雪不足」でなかったことは殆どない。それなのに今年は町中にもいくらでも雪があって、歩道はおろか車道もしっかり根雪に覆われていた。
 そういう横手の町を3時間余りも歩き回って、本来ビジネス用の革靴がすっかりビショビショになってしまった。かまくら会場は、広い横手の町のあちこちに5箇所も6箇所も点在していて、川を渡ったり、山を登ったり、城跡をうろついたり、とにかくひたすら歩き回らなければならないのである。そうやって久しぶりにこの上なく楽しく歩き回って、雪にすべらないように3時間もガニマタで足を突っ張っていたら、翌日には軽い筋肉痛になってしまった。

(これで「ばくろちょう」、東京の馬喰町とはまた趣きが違う。このあたりで激しく転倒した)

 ついでに、恥ずかしいので言いたくないが、雪道に滑って、一度アニメのように見事に後ろ向きにひっくり返った、それを白状しておく。横手市役所前のかまくら会場を歩いているとき、写真の「馬口労町(ばくろちょう)」の入り口である。何故か、絶対に、意地でも、どうしても「今井がキライ」という可愛らしい意地っ張りなヒトたちがいて、12月13日の大惨事や痛々しい傷口を見ても、それでもどうしても「因果応報」とか言いたいらしい。「キライなくせに、ブログの愛読者」というのが、またたまらなく可愛いではないか。
 だから、そういう人たちにこそ、どうしてもこの転倒は教えてあげたいし、できたらそういう意地悪な人々と下北沢あたりでラーメンでも食いたい、または徹底的に酒を酌み交わしたい。だからこそ正直に白状すると、横手での転倒の激しさは、自分でも大笑いを止められないほどであった。まかりまちがえば後頭部を強打するところだったが、しかしそうは問屋がおろさない。スキーさえはけば滅多なことでは転倒しないクマどん、見事に身体を丸めて、わが大切な後頭部を守ったのである。
 こういうふうで、冬の午後の横手訪問は、激しい転倒まで含めて人生最高の小旅行であった。15時、駅前のバスターミナルから羽後交通のバスがちょうどいい具合にやってきたから、全部で6人しか乗客のいないその「特急・秋田ゆき」で秋田駅に戻った。おお、バスはバスで、懐かしい秋田の街をゆっくり復習することができて、これもまた大いに楽しかった。16時すぎの秋田市の風景とは、イコール高校から帰る夕方の時間帯の秋田の風景だったのである。

1E(Cd) Jennifer Lopez:ON THE 6
2E(Cd) Jennifer Lopez:J TO THA L-O! THE REMIXES
3E(Cd) Brian Mcknight:BACK AT ONE
6D(DOp) Teatro alla Scala:MOZART/DON GIOVANNI
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