Sat 100130 横手、墨絵の「山と川のある町」 「横手のボーヤ」とのライバル関係(1) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 100130 横手、墨絵の「山と川のある町」 「横手のボーヤ」とのライバル関係(1)

 2月12日、こうやって怒りと「だんじゃぐ」の中で横手駅に到着した(恒例、「昨日の続き」でございます)。ただし、横手は静かで落ち着いた優しい町であって、怒りとか「だんじゃぐ」などが最も似合わない土地として、墨絵の山と墨絵の川が暖かそうな雪にくるまって、無邪気に春を待っている。
 しかもその無邪気さは、日なたでお茶を楽しんでいるおじいちゃんとおばあちゃんの無邪気さ。おまんじゅうみたいな甘く落ち着いた優しさだけの、安心感でいっぱいの無邪気さである。こういう町に怒りとか「だんじゃぐっこ」などを持ち込むのは、それこそ「だんじゃぐ」そのものである。
 ただし、「だんじゃぐ」という平仮名表記は全国の皆さんの誤解を招いたかもしれない。いや、すでに消滅しかけた秋田弁の地域の若者たちにさえ誤解を招いている可能性もあるから、語学教師としてこの際シッカリ修正しておくと、「だんじゃぐ」と書いてきたうちの「ん」の発音はその直前のDAのと直後のJAの隙き間に微妙な鼻母音として折り畳まれるので、正確を期して文字にすれば「DAnJAGU」である。

(穏やかな横手の町)

 さて、湿り気の多い重たい雪がチラホラ風に舞っている横手の町は、通り過ぎるクルマの数もまばら。こういうしっとり濡れた静けさの奥には、町の人たちの暖かいユーモアがひっそりたゆたっていることが多いもので、横手の場合はそれが店の看板に結晶しているようである。
 今日の写真は横手の町で発見した楽しい看板の特集であるが、メガネ屋の「ワカバヤシ」、麻雀屋「役員室」、ド派手な床屋の看板、歯医者さんの絵文字看板(ケータイの絵文字とは全く別の味わいのある絵文字)など、写真を掲載するブログ紙面も足りなくなるほどであった。

(昔は存在しなかったB級グルメ「横手ヤキソバ」マップ)

 今井君は秋田出身で18歳までずっと秋田で育った男なのに、かまくらで有名な横手を訪れたのは、これが初めてである。今井君の出身地は秋田市土崎港。江戸時代からの港湾都市で、今井君が子供だったころは、町には工場労働者と港湾労働者が圧倒的に多く、港には韓国やソ連(おお、ソ連である)の貨物船が多数接岸し、製紙工場の煙突から悪臭が漂い、酔漢の溢れる夜の街は子供には危険で、かつ変に魅力的。近くには自衛隊基地もあって、「秋田」と聞いて都会の人がいだく豊かな田園のイメージとはかけ離れた、冷戦と公害の支配する誠に乱雑な危なっかしい町であった。

(ツッコミどころ満載、メガネ屋「ワカバヤシ」の看板。「ワカバヤシ専用駐車場」をはるか遠くに発見して2度ビックリした)

 小学校の校歌も「吹雪に鍛えし港魂」「逆巻く波に帆をあげて」「自由の海に漕ぎいでむ」など、まるで「だんじゃぐこぎ」を育てることに全てをかけているようなムード。確かに、勉強とか成績とか進学とか、そんなことは一切おかまいなしの「DAnJAGUこぎ養成所」の雰囲気が充満し、今井君のように「成績ばかりよくて体育のできない短足男子」に向けられる視線は厳しかった。
 もっとも、そのぶん「勉強で目立つこと」はカンタンである。予習もせず復習もせず、塾も家庭教師もいっさい関係なく、毎日毎日暗くなるまで遊びほうけ、ついでだから植物採集とか昆虫採集とか岩石採集とか、それなりに妖しい趣味ももって、それでも中学を卒業するまで、「学校で1番」をまあずっと確保。別に、自慢するわけであるが、中3の時に地元新聞社(秋田魁新報)が主催する学力テスト(さきがけテスト)では、春秋2回あるテストの2回とも「全県5位」。「おそらく今井君は、東京大学の理Ⅲにでも入って、大活躍するだろう」ということで、地元の酔っ払いの意見も一致していたりした。

(いまどき、麻雀「役員室」)

 さて、こういう話が「かまくらの横手」とどういう関係があるのか、せっかちな人は先を急ぐから困るのだが、今井君の親戚の「横手のボーヤ」とのライバル関係がこのあたりから始まるのである。何なんだ、「横手のボーヤ」ってのは? 実は今井君自身正確には知らないのであるが、カンタンに言えば「伯父さんの奥様の甥っ子」で、今井君と学年が一緒だったのである。
 今井君の母親の兄(=伯父さん)が、東海地方の準有名国立大学の元・学長。母方だから彼の姓は今井クンとは違う。その奥様(義理の伯母)が、秋田県立の某高等女学校(旧制)の元校長先生の娘。その甥っ子が「横手のボーヤ」。今井君は、その「横手のボーヤ」なるものの本名さえ知らない。しかし彼は子供の頃から今井君に勝るとも劣らぬ秀才で、何となく地方の知的エリートである親戚たちの関心は「宏クンと『横手のボーヤ』のどっちが勝つか」に向けられていたのだった。

(重い曇り空と好対照の、派手な床屋のネジリ棒)

 中3の段階でこっちは「全県5位」であって、優秀者50名は秋田県民のほぼ100%が講読する秋田魁新報の紙面に名前がデカデカと掲載され、プロ野球の「打者10傑」みたいな「優秀者順位表」には各科目の得点も発表されたから、ここで今井君は「横手のボーヤ」を頭1つも2つもリード。まあそこには、田舎独特の家同士の対立、嫁とコジュートの対立、嫁と姑の対立、そのほか橋田壽賀子先生の専門分野がいろいろ渦巻いていて、要するに、「加藤家(母の実家、今井君はこの「加藤家」なるものの絶対のホープだったのである)の方が優秀」ということで決着がつきかけていた。

(しつこいようだがもう1度「横手」)

 その後この滑稽なデッドヒートがどうなったか、何となく予測はつくだろうが、話が長くなりすぎるので続きは明日ということにしたい。

1E(Cd) George Benson:STANDING TOGETHER
2E(Cd) Chicago:CHICAGO
3E(Cd) Take 6:BEAUTIFUL WORLD
4E(Cd) Sinitta:TOY BOY
5E(Cd) Jessica Simpson:IRRESISTIBLE
6E(Cd) Samantha Mumba:GOTTA TELL YOU
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