Mon 090817 甲子園での様々な奇跡について 秋田県勢は 秋田高校はなぜ弱くなったか | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 090817 甲子園での様々な奇跡について 秋田県勢は 秋田高校はなぜ弱くなったか

 他にもいろいろ大きな事件が起こっていて、甲子園で花巻東高校に起こった悲劇、新潟県勢初の決勝進出、しかもその決勝戦の9回2アウトから起こったこと、全てマンガ以上の奇跡の連続であったと言っていい。政治や選挙の世界ではあらかじめ仕組まれたことしか起こらないから何だか空しいが、今回の甲子園大会を見ていると、岩手・新潟・島根のような「弱小県」のレッテルをしっかり貼られてしまった県の代表が、クジ運とかそういうこととは無縁に堂々と勝ち進む姿、準々決勝・準決勝でヒーローを襲う悲劇、決勝最終回の2アウトから5点を奪って一点差に追いつめる迫力、その迫力に圧倒されて自然発生的に球場を包んだ「伊藤、伊藤」の大コール、どれをとっても、野球マンガだってなかなかこれほどのドラマを描くことは出来ないだろうという事件の連続であった。

 

1593
(炎の応援団長)


 それにしても、岩手県勢90年ぶりのベスト4とか、新潟県勢悲願の決勝進出とか、そういうニュースを見ると、わが秋田は悲しい。秋田県勢は12年連続初戦敗退である。12年連続初戦敗退とは、今年の小学6年生が生まれた年以来、夏の甲子園で1回も勝っていないということである。最後に勝ったのは、現ヤクルトのエース石川がいた秋田商が島根の浜田高校に勝って以来。その時の浜田のエースは現ソフトバンクの和田だから、なかなかたいへんな対決だったわけだが、とにかくそれ以来勝っていないのだ。その間、春には秋田商がベスト8に進んだりしているけれども、やはり春と夏では意味が違う。

 

1594
(不満だ)


 夏休みの子供たちが、おじいちゃんおばあちゃんのおうちに遊びにいって、スイカを切ってもらい、カキ氷をスプーンでかき混ぜ、「麦茶、おいしいね」と皆で笑いながら見る高校野球は、夏だからこそ少年たちの憧れなのである。それなのに、自分の県のお兄ちゃんたちは12年間、1度も勝ってくれない。「ボクたちが頑張って、必ず優勝してみせる」と言ってみても、やはりお兄ちゃんたちが勝ってくれないのは、悲しい。たとえ「学力テストでは、ボクたち全国1番なんだ」と虚勢をはってみても、野球なら新聞でもテレビでも「感動しました」と言ってくれるが、学力テストでは誰も感動してくれない。「テストの成績なんかで、オレたちは燃えないぜ」(しつこいようだが田原俊彦「哀愁デイト」B面より)だし、「何で秋田なんかが?」と不思議がられるだけなのである。元国連事務次長・明石康、元東大学長・佐々木毅、文部事務次官・銭谷真美、みんな秋田高校出身。しかしそういうことで感動してくれる人はいない。銭谷氏なんか「駆け込み天下り」でマスコミの取材をうける有り様だ。

 

1595
(続・不満だ)


 優勝した中京は「43年ぶり」。その43年前に中京が1回戦であたったのが秋田高校。秋田高校はその前年ベスト4に進み、三池工業に4対3で敗れたが、前年のエース大久保が3年に進級し、甲子園でも優勝候補の一角。1回戦が「事実上の決勝」とまで言われたが、1回裏に1点を奪われたまま、結局2対0で敗戦。中京はその後ずっと大差で勝ち進み、予想通り優勝した。


 その後、秋田高校は1回しか勝っていない。18年前、京都・北嵯峨高校に4対3で勝利し、実況したNHKのアナウンサーも「昭和40年のベスト4以来、26年ぶりの校歌が聞けます」と言ってくれた。しかし、すでに18年前のことである。18年前、まだバブルが崩壊していなかったころ、日本の首相は海部俊樹。水玉模様が大好きで、「ネクタイは全部水玉模様」で話題になった海部俊樹は、今回の衆議院選挙で落選。新進党初代党首でもある。おお、今では「かいふ」と発音できるヒトさえ減ったいるかもしれない。「うみべ、って何?」とさえ聞かれかねない。


 7~8年前、名古屋に向かう新幹線グリーン車ですでにうらぶれた感じの海部氏を見かけたことがあるが、その彼がついに落選するこの日まで、秋田高校は甲子園で勝っていないのだ、大正4年、第1回大会準優勝の超名門がである。「新潟県勢初の決勝進出」の文字を見るにつけ、100年も前に決勝に進んだ秋田高校が、なぜ今こんな長いトンネルに入っているのか、スッキリ理解することができない。

 

1596
(それでも、電気コードは好きだ)


 秋田高校の校歌は短い。歌えば15秒程度で終わってしまう。明治4年だか5年だかに創立の高校の、古色蒼然とした校歌をここに示せば、「天上遥かに太平山の姿はけだけし三千余尺、長江流れて六十幾里、海へと馳せゆく雄物川波」、これだけである。「早稲田」「早稲田」と7回も連呼する長々しいのとは違って、スッキリもいいところ。これほど短い校歌を聞くのに、どうしてこんなに長い時間が経過するのか、一人の政治家が絶頂から引退まで進んでも、いまだに勝てないのは何故か。理不尽とは思いながらも、「何とかならないのか?」「なぜこんなに弱くなっちゃったの?」の声を上げたくなるのも、無理ではないのである。