Fri 090814 BIG BOXで早稲田の学生諸君と打ち合わせ 昭和が終わったことを実感する | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 090814 BIG BOXで早稲田の学生諸君と打ち合わせ 昭和が終わったことを実感する

 8月3日は、高田馬場BIG BOX前で早稲田マスコミ研究会の諸君3名と待ち合わせて、BIG BOX内の居酒屋「わん」で2時間ほど、打ち合わせと取材を兼ねて歓談した。11月7日の早稲田祭にこの今井君が出演する計画があって、打ち合わせと取材はその件である。おお、BIG BOX。外壁のデザインこそ変わったが、まだそこにBIG BOXは同じ姿で残っていた。「BIG BOXの前で」という響きも懐かしい。冬でも何だか暑苦しい高田馬場の駅を出て、目の前には昔と同じ「学バス」、その向こうにはFIビル。FIビルの中にはもちろん芳林堂書店、その他1軒1軒はイヤになるぐらい狭苦しい飲食店。


 焼き鳥屋が並んでいるわけでもないのに、どこからか流れてくる焼き鳥のケムリと匂い。ラーメン屋が軒を並べているわけでもないのに、駅を出た途端に感じる身近なラーメン屋の存在。東京の真ん中に気まぐれに大阪の空気を吹き込んだ感覚である。ちょっと油断すると粉モンの店に入り込み「高くて旨いは当たり前、安くて旨いでないと」と呟きそうになる。要するに、ここは昭和のままなのである。

 

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(袋をぶら下げて歩くのが好き)


 昭和のままの混沌、昭和のままの狭苦しさと暑苦しさ、昭和のままの熱気と雑踏。その象徴がBIG BOXであって、何故こんなに混雑してお互い相手を見つけにくい場所が、今でも高田馬場の待ち合わせの定番なのか、誰にもわからない。早稲田のイメージが垢抜けないのは、昭和のままだからであり、東京のまんなかに突如として姿を現す大阪だからである。それが好きな人は意地でも好きだし、垢抜けないと思う人は意地でもそう思いつづければいい。

 

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(反目)


 ただし、早稲田大学の学生の実態からみると、そういうイメージはすでにかけ離れたものになっている。秋田の若者たちがすでに秋田弁を全然つかえなくなっているのと同じように、早稲田の学生たちに昭和の魅力や迫力はない。たいへんオシャレで、表参道や南青山の若者たちと比較しても何の遜色もなければ、何の田舎臭さも感じられない。何より昔と違うのは「みんな英語が得意だ」ということである。


 昔の早稲田大学生は、というより慶応だって東大だって、英語はみんな苦手だった。もちろん当時でも「入試に出る英語」だけは、みんな得意中の得意。英語はすごく出来るが数学はイヤ、というヤツは早稲田に。英語も数学もまあまあ、なら東大に。それが昔の定番である。ところが、今の早稲田の学生は、驚いたことに「英語を話すのが得意」などと、怪しからんことを平気で口に出す。アジア人でも欧米人でもかまわない、とにかく外国人と話すのが好きで、発音もネイティブ並み、尻込みも何にもせずにきわめて積極的にアメリカ人と会話を交わす。

 

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(冷戦)


「そんなの、上智大生に任せておけばいいじゃん」
「英語芸人なんかになってどうすんの?」
「目の前にアメリカ人がいても、『ここは日本だ』って突っ張って、頑固に日本語で通すガッツはなくなったの?」
「伝えるべきこともないのに、中身のない軽薄な会話をペラペラして、楽しいの?」
などと旧態依然とした発言をすると、今の早稲田の学生はステゴザウルスやトリケラトプスに出会ったように目を丸くして「いまでもまだこんな発言をするヒトが生存していたんだ」と互いに目配せを交わすのである。


 確かに、今の早稲田の入試問題を見れば、あの問題を見事に解いて合格した諸君が「英語ペラペラ」であることは何の不思議もない。国際教養学部のリスニング問題なんて、英検準1級の問題を遥かに凌駕する。ということは、準1級取得者でも、国際教養学部への入学は容易ではないということである。政経学部なんか、20年ぐらい前なら「超長文」の部類に入ったであろう長文読解問題を、ご丁寧に(設問形式まで呆れるほど一致したものを)3問も出題して、それにそれぞれ設問を8つも9つもつけ、先日紹介したような「自由英作文」の難問までくっついている。古き良き時代は終わったのである。

 

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(ニャゴ姉さんが寝てる間に ... )


 で、BIG BOX9階「わん」で私の目の前に並んだ3名の諸君は、そういう人たちである。やはり優秀そう、しかも奢り高ぶったところがなくて、今井君の際限なくバカバカしいバカ話にも、ちゃんと笑顔で対応してくれる。感動すべきところでは感動、馬鹿笑いすべきところでは馬鹿笑い、納得すべきところでは真剣に頷きつつ、大人の対応をキチンと維持できる人たちである。パチンコと麻雀と急性アルコール中毒と大ゲンカとに彩られた大昔の早稲田の面影はすでにない。


 その晩はその直後にもう1つの会合があったから、待ち合わせが7時だったのに、店を9時過ぎには出なければならず、取材は2時間足らずになってしまった。大いに申し訳ないことをしたが、短時間でも最高に楽しかったし、早稲田祭も最高のものにすることによって、彼らの礼に報いたいものである。