Fri 090731 合宿スタッフの毎日 902号室の状況 教室から自室に戻る「花道」など | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 090731 合宿スタッフの毎日 902号室の状況 教室から自室に戻る「花道」など

 夏期合宿最終日(まだまだ「昨日の続き」が続きます。スミマセンねえ)、朝7時まで生徒につきあって、最後に若いスタッフ諸君と一言かわしてから部屋に戻る。スタッフ諸君の徹夜は最終日ばかりではなくて、4泊5日の間にマトモな睡眠はほとんどとれていない。

 一見したところ、一昔前に日本中で流行していたタイプの社員研修に似ていないこともない。昭和の時代の社員研修だと、何日もマトモな睡眠をとらずに激しい討論を重ね、その異常な精神状態で、号泣しながら会社への忠誠なり目標達成なり営業実績向上なりを誓い、叫び、肩を抱き合い、上司と部下とが親子以上、同僚と同僚とが兄弟以上といえるほど、密接で濃厚な人間関係を築いたりしたものである。

 しかし東進の夏期合宿では、そういう理不尽で不合理なことをして社員を鉄板のように鍛えようというのでは決してない。生徒たちの世話に夢中になるうちに、気がついたらいつの間にかそうなっていたというだけの話で、精神状態は至って正常である。

 その分、肉体の疲労も激しくて、生徒に混じってデスクワークをするうちに、ついウトウトしてしまったりする社員もいる。彼らスタッフの苦労もあと4~5時間で終了。眠りそうになっていたスタッフにそういう言葉をかけてから、私も自室に戻ることになる。

 

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(最終日、明け方4時すぎの富士)


 この「自室」というのがまたクセモノである。どこか特別なかけ離れた場所に静かで高級な部屋が確保され、空き時間はのんびりそこで怠けていられる、そういう特別な扱いはこの合宿の発想の中には存在しない。

 すでに室内写真も掲載したが、ちゃぶ台が1つポツンと置かれた6畳間に、ユニットバスがついた、何とも懐かしい感じの和室である。仕事はすべてこのちゃぶ台で片付ける。

 畳の上にうずくまって10日を過ごす頃になは、何だかお尻が痛くて、もう2~3日これが続いたら「やまいだれにお寺」の病気になりそうである。ネットはつかえない。ブログの更新は1階まで降りて、ロビー横の喫茶室で無線LANを使う。

 私の902号室は、他のクラスの教室に使われている大広間から10mしか離れていない、なかなか素晴らしい立地であって、ボリュームを上げたCDの音や、スタッフの演説の声がしっかり響いてくる。

 瞑想とか思考とか、そういうことの可能な高級な館ではないから、「なにくそ」と座り直し、講師である私も、部屋の中でひとり、デカイ声で音読したりする。英語の発音がつっかえつっかえになったりしたらカッコ悪いから、生徒とともに、修行に励むわけである。

 そんな時、何かの拍子に鏡の中の自分を発見したりすれば、明らかに「あやしうこそ、ものぐるほしけれ」であって、「ひぐらし硯にむかいて、こころにうつりゆくよしなしことを、そこはかとなく」書いたりしていなくても、もう十分にものぐるおしい。

 

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(河口湖の向こうの富士。今年はこういう天気が多かった)


 教室のすぐそばの部屋だということは、「個別学習」の時間になれば、生徒たちが廊下に出てきて音読する声が、やはり読経のように部屋の中にも侵入してくるということである。それどころか、私の部屋のドアにもたれかかって音読に励む、感心な諸君もいる。

 ドアを開けると、そういう生徒諸君がドアに押されて向こう側にどっと倒れたりするから、そおっと、そおっと、「すまんが、ドアを開けるぜ」と謝りつつ、丁寧にドアを開けることになる。

 部屋から教室に向かう廊下も、音読する生徒たちに占拠されているから、この廊下は相撲や歌舞伎でいえば「花道」みたいなものになる。
「お、今井さんだ」
「あ、今井先生だ」
「大ファンです」
「C組受けました」
「今B組受けてます」
とか、さかんに声がかかる。

「ニャゴニャゴって言ってください」
「てんてんプルプルって言ってください」(どちらも授業中の私の口癖)
「握手してください」
「ヒゲ触らせてください」
「サインしてください」
などというのもある。

 ただし、今の生徒たちは、言わば修行中の身である。そういうフザケタことは、最終日の修講式のあとしか受け付けない。そんなことをしているヒマがあったら、単語を3つ記憶できる。例文を5つ音読できる。

 すべてはそういうスタンスであり、オジサンはこのスタンスに固執する。とにかく最終日の修講式まで待ちたまえ、あまり時間はないけれども、何とかサインぐらいしてあげられるから、そう言って少し厳しい顔をしてみせれば、生徒諸君はすぐに納得して、表情を引き締めて音読に戻る。

 たまに若いスタッフ諸君が5~6人集まって、廊下で真剣に討論している姿を見かけることがある。感極まって、皆で泣きながら討論していたりする。クラス運営がうまくいかないとか、たった1人の反発する生徒を納得させられないとか、1クラス100人もいれば、しかも1日15時間の勉強を5日も続ければ、その類いの問題が2度や3度発生するのは仕方のないことである。

 だからといって「感極まって号泣」というのでは、高度成長期の企業研修でよくあった「生産性向上運動(略して「マル生運動」と呼んだものだ)」の影を引きずっているようで感心しないが、ここはスタッフリーダーに任せることにして、講師としては(相談でも受けないかぎり)一切口出しをしない。

 

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(エアコン吹き出し口の真下の生徒たちが寒がるので、スタッフはこういう工夫をした)

 そうやって、生徒もスタッフも講師たちもすっかり成長して、最終日の修了判定テストを終え、いよいよ修講式になる。午前10時からクラス単位で、昼食後に全クラスが集まって全体で、というふうに2段階にわけての修講式であるが、今日もすでに長く書きすぎた。またまた号泣する者が続出する修講式の模様は、また明日、改めて書くことにしたい。