Tue 090728 東進河口湖夏期合宿・第1日 宿舎の全体開講式 クラス開講式 授業開始 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 090728 東進河口湖夏期合宿・第1日 宿舎の全体開講式 クラス開講式 授業開始

 東進河口湖合宿の初日は、宿舎大広間での開講式から始まる。同宿の先生は、第1期が安河内先生と昨年度から東進に加わった慎先生、第2期はこれに畠山先生が加わる。毎年のことであるが、生徒たちは第1期(21日から25日)が文化部的な感じ、第2期(26日から30日)は体育会系の感じだ。

 あくまで「感じ」といういい加減きわまりない表現だが、意外なほどこれがあたっていて、特に今年の「美富士園」では、1期と2期の第1印象がこれにピッタリ合致していたと言っていい。

 1期の開講式がごくごく当たり前におとなしかったのに対し、2期の開講式はのっけから元気一杯。講師の激励に応える声は会場を揺らすほど豪快で、「いやいやえん」みたいな気弱な生徒は一人もいないのではないか、そう思えるほどの素晴らしい反応であった。

 ただし、私ぐらい老練な♡ベテラン講師♡になると、2期の開講式のような豪快で元気な様子の中にこそ、返って危うさを感じ取るものである。

 余りの元気さに、「竜頭蛇尾に終わらなければいいが」という危機感がすぐに湧き上がった。むしろ、少しおとなしめの感じでも、1期の開講式のような普通の始まり方のほうが好ましいのだ。

 講師たちが口を揃えて「2期はいいねえ」「すごい爆発力だ」と感心するような場合にこそ、「これが4日も5日も継続するのか」をまず考え、「この元気さについていけない生徒、周囲のエネルギーに、気持ちが引いてしまっている生徒」の存在に心を配って、決して勢いだけで引っぱらないように気をつけなければならない。

 この全体開講式の席で、講師1人1人が挨拶することになっている。こういう場での挨拶が長くなりすぎるのはあまりいいことではないから、「早めに切り上げましょう」「長くても2分にしましょう」と講師どうし声を掛け合い、お互いに工夫を凝らして、短くもインパクトの強い挨拶を心がける。

 面白くて皆が笑い転げるような話なら別のこと、大昔の小学校の校長先生みたいな、つまらなさで生徒が気絶してしまう、いわゆる「牛のヨダレ」的な長い挨拶をして、始まる前から生徒をウンザリさせてしまうのは、愚の骨頂である。

 私は「あくまで硬派」ということで、ステージで体育会系の雄叫びをあげ、生徒全員でこれに唱和することになっている。しかも、雄叫びといってもやはり長々したのはイヤだから、何の意味もない「タアーッ」という短い雄叫びなのであるが、これがたいへん評判がいい。

 まだ「いやいやえん」気味だった内気な生徒でも「タアーッ」と叫ぶだけなら何とかなるし、1度叫んでしまえば、自分でペースに乗っていけるだけの大人には成長しているのである。

 同宿の300人余りが一堂に会した「全体開講式」の後、一休みしてから「クラス開講式」に移る。その間も生徒たちはずっと英単語の学習に没頭し、「クラス開講式」に先立って「単語アクセントテスト」100題に挑むことになっている。

 私のクラスは1期80名強、2期94名、どちらも「Hクラス」である。HはハイレベルのHであるが、Hの上にはHHクラスが存在し、ハイレベルとは言ってもダントツのハイレベルではない。アクセントテストを受けている顔を見ても、何だか不安そうであって、HHクラスのような「こんなの、出来て当たり前」という自信に漲った感じは全くない。

 テストが終わるや否や、わあっと私語が湧き上がる様子を見ても、やはりまだ精神的な幼さが浮き出ているようである。「センター試験模試で約8割の得点」がハイレベルクラスに入る条件であるが、6月の模試で8割をとっていても、4月の模試では6~7割だった生徒のほうが多い。それほど突出したハイレベルでないことは明らか。不安そうなのも当然、子供っぽいのもまた当然である。

 

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(第2期のクラス開講式)


 クラス開講式では、まずテキスト2冊を配布して、その使い方から説明する。1冊は授業用、もう1冊は復習と音読のためのものである。ここでも私語が目立って、若いスタッフは困惑の表情になる。

 スタッフとは若い社員たちのことで、普段は各校舎に配属されている社員が、選ばれたか希望したかで合宿に参加し、講師よりはるかに密接に、生徒たちに近いところから生徒指導に当たる。そのリーダーを「隊長」と呼び、その他スタッフを「隊員」と呼ぶ。

 リーダーは入社5年目ぐらいの気鋭の社員、その他は新入社員が中心。大学生のアルバイトも含まれる。2期のスタッフの田代さんは、昨年この合宿に生徒として参加して、今は早稲田大学理工学部に通っているという。

 そういうケースも少なくない。生徒としての去年の経験をもとに、最も身近なところから生徒たちのサポートをしてあげられるのは、こういうスタッフである。余りに生徒と年齢が近すぎて心配なところもあるが、そういうのも、見ていて微笑ましいものである。

 さて、こうしてようやくクラス開講式が始まり、4泊5日にわたって指導する生徒たちと正面から顔を合わせることになる。まだ「ゴマ塩」まではいかないにしても、ヒゲに十数本の白髪の混じったオジサンなのであるが、オジサンでも十分に緊張する場面である。

 この一瞬に失敗すれば、立て直すのにはそれなりに苦労する。普通の予備校なら、4月下旬の第1回目の授業とか、夏期講習の初日などに繰り返し繰り返し襲われる、懐かしい緊張感である。

 クラス開講式で私が話すのは、まず何と言っても「ハイレベルクラスだからといって緊張しないように」ということである。

 ほとんどの生徒は
「自分は本来ハイレベルの生徒なんかではない」
「もっと基礎的なクラスでないと、ついていけそうにない」
「このクラスでダメなのは自分だけだ」
「自分はクラスの足を引っ張りそうだ」
「みんな自信満々で、明るくて元気なのに、自分だけバカで暗い」
「超有名高校の生徒ばかりの中で、自分だけが普通の県立(都立)高校だ、自分なんかダメに決まってる(もちろん、それは完全な誤解である)」
「どうしようどうしよう」
のたぐいの不安で一杯なのだ。

 そこを、最初の段階でどう安心させ、ホッと胸を撫で下ろして学習に専念させるようにもっていくか、その辺がベテランの味である。

 

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(7月21日、午後遅くなって、青空が広がった)


 生徒がみんなホッとしたところで、「私語厳禁」を告げてから、いよいよ授業に入る。100人近くが入った教室であるから、「私語厳禁」は最重要。私語するのは、1回につき100円を道ばたに捨てるようなものである。

 具体的にそういうイメージを伝えると、生徒の納得は早い。私語の多さに後から教師がキレても、効果が期待できないばかりか、せっかくの雰囲気を台無しにするだけである。こういう注意は、最初の段階でしておくに限る。

「クーラーについての注意」も重要。夏の予備校とは、(特に女子の場合)クーラーが冷えすぎて体調をこわす場所である。まるで大予備校どうしで取り決めでも結んだかのように、夏のエアコン設定は25℃。冬の暖房も25℃設定。Tシャツ1枚やタンクトップの生徒ばかりでも25℃、分厚い上着やセーターを着込んだ冬でも25℃、そういう設定の仕方はなかなか不思議なものがある。

 特に、長時間を同じ場所で費やす合宿形式の授業では「冷えすぎない」のが肝要。設定を少し高めにすることを伝え、冷風の吹き出し口の真下には女子は座らないように伝える。こうして、細心の注意をしてから、いよいよ授業に取りかかるわけである。