Sun 090726 校正作業を急ぎ、完了する 東進河口湖合宿に向かう ナデシコの黒い目を想う | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 090726 校正作業を急ぎ、完了する 東進河口湖合宿に向かう ナデシコの黒い目を想う

 熊本、姫路、大阪、千葉、4日連続での出張を終えて、待っていたのは「参考書原稿の校正」である。とにかく懇切丁寧な解説を心がけたせいで、上巻下巻合わせて500ページにもなる。その500ページ分を「鵜の目鷹の目」で校正する労力は、並大抵のものではない。もちろん、最高にわかりやすく書いたし、200枚近い板書、100カ所の囲み記事、たくさんの工夫をしたから、これを読む高校生がそんなに苦労するとは思わないが(というより、楽しくてたまらないだろうと確信しているが)、著者として「恥ずかしいミスが1つもないように」という意識で校正するのは、さすがに神経をすり減らす作業である。

 

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(校正作業をジャマするニャゴロワ)


 出張から帰って3日間は、校正に全力を尽くした。何故そんなに急いだのかと言えば、7月21日から30日まで恒例の「東進河口湖合宿」に参加することになっていて、その10日間は、とても校正どころではなくなるからである。20日深夜、ついに校正完了。翌日21日早朝、近くのセブンイレブンから宅配便で東進ブックスに発送して、それから安心して河口湖合宿に出かけることになった。


 東進の河口湖合宿に興味をもって検索してこのブログを開いてしまった人で、合宿のちゃんとした詳細を知りたい人は、このブログの昨年分、080721から080730を参照のこと。1日1日の様子を、詳しく実況中継しておいた。すでに昨年実況中継をしていることだから、カブリを避けるために、今年は詳細な実況中継は控えることにする。21日から25日が「第1期」、26日から30日が「第2期」、全体としてはほぼ同じ人数が参加。宿舎数8、各宿舎300名程度、×2回の大イベントである。

 

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(校正ゲラのうちの1枚)


 さすがに、21日朝の新宿駅では、毎年ちょっと泣きそうになる。10日間、講師もみんな河口湖に缶詰で、外出もほぼ不可能。大好きなお酒はもちろん厳禁だし、平常継続している全てのことが、読書もブログも、執筆も校正も語学も、何もかもが10日間完全に停止する。ニャゴロワをからかうことも出来ないし、ナデシコを階段の上から2段目で撫でることも出来なくなる。ナデシコは階段の上から2段目で撫でられるのが大好きで、私が階段を下りようとすると、凄い勢いでダッシュして(普段は大人しいナデシコからは信じがたいほどの勢いなのだ)2段目でうずくまり、激しくニャゴニャゴ鳴くのだが、これから10日間この黒と金の縞模様を撫でられなくなると思えば、撫でるクマさんのほうも、限りなく寂しいのである。


 すると、タクシーなんか呼んでさっさと新宿に向かうより、出来るかぎり時間をかけてゆっくりゆっくりナデシコにしばしの別れを告げたくなる、それが人情というものであって、いまだに梅雨の明けない蒸し暑い東京の朝、代々木上原駅までダラしなくスーツケースを引きずっていき、「準急を待ち合わせている急行」という何だか寂しい乗り物に乗って新宿に向かい、新宿でもわざわざ他の人たちにエレベーターの順番を譲って、考えられるかぎり不承不承に河口湖への進路をたどった。

 

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(ジャマを決してやめない)


 新宿から河口湖への移動は、高速バスに乗るのが最も効率的である。新宿西口から京王と富士急行の共同運行による高速バスが出ていて、中央高速を大月で左に曲がれば、1時間半弱で河口湖に到着する。マトモな人ならこれを利用してさっさと河口湖に到着、富士急ハイランドで遊ぶとか、富士登山にチャレンジするとか、本栖湖や西湖や山中湖でボートに乗るとか、したいことを効率的に片付けて、同じバスでさっさと新宿に戻って平凡な日常に帰るのである。


 しかし、何と言ってもこちらは「不承不承の権化」である。これが2~3日はおろか、到着1~2時間後には「合宿大好き人間」「合宿をこよなく愛する中年」と化して、ステージの上で奇声を発し、生徒たちを叱咤激励して授業に熱しきっているクマどんとは、ニワカに信じがたいほどの不承不承ぶりなのだ。


 この辺は、生徒たちも同じことだろう。始まってしまえば楽しくて楽しくて仕方がないほどで、5日後の閉講式では「帰りたくない」「もっと合宿を続けたい」と言い出す生徒が多いのだが、河口湖に向かうバスの中では(生徒たちは近隣校舎ごとの貸し切りバスで、まとまって河口湖に来る。3時間ほどのバスの中でも英単語のアクセント学習に取り組むことになっている)おそらく泣きそうな気持ちの生徒、「何でこんなのに申し込んじゃったんだ」という気分の生徒のほうが多いと思う。

 

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(それどころか、そこで寝てしまう)


 しかも、河口湖行きの高速バスは大嫌いである。特に、この時期の河口湖行きは中高生の天下。大学生でさえ、バスの端っこで小さくなっている。おそらく部活の合宿に向かう中高生は、学校からも家庭からも解放され、父の怒声からも母の叱責からも解放されて、今ややりたい放題。離れた席どうし、男子は大声で罵りあい、女子は何が面白いのか自分たちでもわからないままとにかく何でもいいから爆笑し、それに欧米人グループ、韓国人グループ、中国人集団、ありとあらゆる言語が交錯して、こんな騒がしい中を大人しいクマどんが90分耐えぬけるかどうか、甚だ微妙である。「おい、君たち、東進の生徒たちみたいに、ちゃんと勉強しなさい」とか、怒鳴りださないとも限らない。


 昨年は行き帰りともこの高速バスにしたのだが、合宿前の大切な熊の今井君が、こういうバスで暴れ出し、合宿に参加できなくなるような結果だけは避けなければならない。そういうことなら、無難なのは「電車」である。新宿から中央線の特急「かいじ」で1時間ちょっと。大月で富士急行の「フジサン特急」というものに乗り換えて40分。非効率は我慢して安全性を優先し、遅い梅雨の雨の中を、ナデシコの悲しそうな黒い目を思いつつ、一路河口湖に向かった。