Wed 090701 金曜夜、渋谷のウナギ屋に出かける ゴルフで筋肉痛、キーボードが打てない | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 090701 金曜夜、渋谷のウナギ屋に出かける ゴルフで筋肉痛、キーボードが打てない

 更新が何日も滞る場合、(1)ヨーロッパに出かけているか、(2)連日の2日酔いでムクれているか、(3)参考書の原稿を書くのがイヤでふて寝しているか、ほぼその3つしか可能性はない。よく考えてみればこの3者もすでに最初から連動しているのであって、原稿がイヤだから海外に出かけたくなるのだし、ヨーロッパに出かければだいたい連日2日酔いなのだし、ムクれてふて寝をした後は西麻布か六本木で大いに羽目を外す。熊を食ったりさえする。こういう激しい連動ぶりを考えると、その連動はまさに無限ループであって、しょっちゅう更新が滞っては何とか辻褄を合わせてきたこの1年1ヶ月のブログをみれば、自分のダラしない人生を縮図にしてつきつけられたような、奇妙なめまいを感じる。


 ただし、一昨日から昨日にかけてブログが滞ったのは、上記の3つの原因から、ほんのわずかにしてもずれている。ずれているというより、ぶれている。日本の首相の枕詞のようになった「ぶれる」であるが、私のぶれ方にはなかなか味があって、「腕の激しい筋肉痛でキーボードをいじるのがイヤだった」というのだから、なかなか奮ったぶれ方である。筋肉痛の原因は、ゴルフ。ゴルフといっても、私はお金持ちでもないし、接待ゴルフにノコノコ出かけていくような権力も地位もないから、雨の降る夜9時の打ちっぱなし練習場で、約300球を思いっきり打ちっぱなした、そういう爽快この上ないバカバカしいゴルフであった。

 

1444
(熊にあったら死んだフリ・ナデシコ篇)


 筋肉痛を引き起こした問題のゴルフは、7月3日金曜日である。「金曜日の17時半に渋谷で飲み会」という無謀な企画から始まったこの夜は、奇妙な出来事がいっぱいであった。というより、主人公であるクマオヤジ自体が奇妙さを具象化したようなオヤジだから、奇妙さがどこまでも主人公を追いかけ回して離してくれないのも、また「ムベなるかな」である。


 渋谷、金曜日、夕方6時、これではどうせマトモな店はどこも空いていないだろう。「またまた熊を食べにいく」という選択肢は、最初から却下。そんなことを繰り返していたら肉体全てがクマになり、脳髄までクマに変わり果てて、ふて寝の代わりに冬眠を求め、酒の代わりにシャケを求めておシャケで2日酔い、そういう悲劇を招きかねない。店の予約もしないで飲み会という投げやりな生き方がいけないのだが、ビアガーデンを襲うにしても、今にも雨が降り出しそうな空の色を眺め、すでに雨の気配の濃厚な夕方の空気を鼻腔で吟味すれば、点滅していたビアガーデンの選択肢も、空しく消滅していくのであった。


 で、ぶれにぶれまくった苦渋の選択の中で、首相に負けないほど唇をひん曲げながら決断したのが、東急プラザ9階のウナギ屋である。「あそこなら大丈夫」「あそこなら、きっと空いている」という選ばれ方が、店として名誉になるかどうかは、微妙きわまりないところだ。2009年7月の段階で自民党総裁に選ばれることを名誉と考えるなら、その名誉を約1億分の1ぐらいに縮小すればこのウナギ屋の名誉になる、そういう感覚である。


 ただし、「あんまり食欲ないけどね」といいながら、しかめ面で入ったこの店は、予想外に楽しかった。キモ焼き、茶碗蒸し、牛肉たたき、蒲焼き、う巻き、枝豆まで手当り次第に注文し、あっという間に日本酒5合をカラにした。もともとウナギ屋さんは大好きなのだ。楽しそうに踊るウナギの格好をした「う」の字を見ただけで心も踊り、ウナギ屋さんの前を通るたびに、自分も「う」の字のつもりになって「う」の字のポーズをとる、奇妙なヨガをやってみるほどである。この店も、キモ焼きとう巻きと、従業員のオバさんたちの庶民的な接待ぶりが大いに気に入った。

 

1445
(死んだフリ、というより睡眠)


 で、ちょうどいい加減に酔っ払って、「神宮のゴルフ練習場に行ってみようではないか」と決まった。ゴルフのクラブを握るのは、おそらく2年ぶりか3年ぶりである。私のゴルフの腕は、まさに驚異的。プロでも不可能と思われるミラクルショットを連発するのであるが、より正確に表現すれば、「驚異的」というより「脅威的」であって、そのミラクルショットを至近距離で眺めるヒトビトに必携なのは、アイスホッケーのゴールキーパーのプロテクターとマスクとヘルメットである。まあカンタンに言えば「真横に飛ぶ」「後ろに飛ぶ」「真上に飛ぶ」の類いのミラクルを連発。「プロでも不可能なミラクル」とは、そういうことである。


 むかしむかし、大昔、オーストラリアのリンデマン島という恐るべき場所で、しかもクラブ・メッドという、羞恥心のカタマリのような今井君が出かけるとはとても信じがたい社交的リゾートで、ミラクルゴルフをエンジョイしたエクスペアリアンスがあった。その第一打が、歴史的に有名な「ボールが真横」。うち放たれたボールはフェアウェイと正確に90°の角度をなして正面の物置小屋を急襲&激突。ゴルフ場全体を揺るがすような、重く、深く、打ったプレーヤーの心を鋭角的にえぐりとる大音響があって、盛んに鳴いていた秋の虫さえ、しばらくは一斉に声をひそめたものである。


 しかもミラクルショットはそれオンリーでエンドになったりはしない。次の1打は見事なクリーンヒット。見事すぎて、前を行くグループに追いついてしまい、彼らが頭を寄せあってプレーしているまさにど真ん中に、ボタリと落下。プロフェッショナルにもインポシブルなパーフェクトなスピンがかかっていて、落下した地点にそのまま静止。おお。炎のショットである。おお、ゴルフ保険とは、まさにこのクマオヤジのためにあるようなものである。


 日本人だったが、彼らはすぐに譲ってくれて、なぜか英語で「我々は初心者だ、あなたのような素晴らしいプレーヤーのジャマになるといけない、是非先に進んでください」と丁寧にすすめられた。大いに気をよくして、彼らに一礼して「先に進んだ」のであるが、それから先、ミラクルショットは一切出ない。それどころか何度でも「素振り」を繰り返す。素振りするつもりのない素振りの連続を、「お先にどうぞ」と言ってくれた30代前半の男女4人がどういう思いで見ていたか、知るよしもない。結局、1番ホール(パー5)で、歴史に残る「23打」。あれ以来、マトモにゴルフなんかしたことがない。