Sat 090627 東京ドームで野球を見る ロンとモッコと長島と松本 もっとCMが流れないかな | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 090627 東京ドームで野球を見る ロンとモッコと長島と松本 もっとCMが流れないかな

 というわけで(昨日の続きです)、スペイン料理屋「どんぐり」を出ると、ちょうどそこにタクシーが来た。せっかくタクシーが走っているのに、それを利用してあげないのは意地悪というものである。早速手を挙げて、タクシーは喜び勇んで止まってくれた。問題は行く先なのであるが、こういう時にとっさに名案が浮かぶかどうかで人の才能は決まる。浮かんだのが名案なのかどうか、だから私に才能があるかどうか、それは読む人の判断に任せる以外ないのであるが、私がとっさに決めた行き先は東京ドーム。ちょうど巨人vsヤクルト戦が進行中で、セ・リーグの首位攻防戦を見ながら生ビールなり日本酒なりをグビグビやるのは、誕生日の羽目の外し方の一環としてふさわしくないこともないだろう。それが、意外に旨かった白ワインと中途半端なオリーブでハラワタが変な具合に煮え立ったスリラー・グマの決断だったのである。


 途中、ケータイで確認すると、ジャイアンツが2-1でリード中。しめた。筆者は小学生低学年のころからの熱烈なジャイアンツファンである。日本シリーズ「巨人vs南海」を見ていて、テレビの前で「長島あ、ホームラン打てよ!!」と叫んだ瞬間に、長島の打球が見事にスタンド入りし、鳥肌が立って家を飛び出し、近所の人が趣味で作っていたキャベツだかニラだかの畑を駆け回り、シコタマ叱られて以来の強烈なジャイアンツファンである。


 なお、この時以来、畑の持ち主の御法川さん(みのりかわ。「みのもんた」の本名がこの「みのりかわ」だというウワサを田中眞紀子のテレビ出演時に聞いたことがあるが、未検証)とは仇敵のようになり、御法川さんの飼い犬のモッコ(どういう意味の名前なのかは未検証)とも仇敵、その犬友達のロン(中曽根康弘氏と親友だったロンことロナルド・レーガンとは時代的に無関係と思われる)とも仇敵になって、モッコとロンは小学生時代の宏君を追いかけ回すことを趣味とし、宏君はロンとモッコのせいで一時的に犬嫌いになるのであるが(だから猫が大好きというわけではないのだが)、ジャイアンツファンになるのにここまで犠牲を払えば、そのファン度の強烈さも決して人後に落ちるわけはない。

 

1432
(東京ドーム 巨人VSヤクルト)


 というわけで、東京ドームに着いた段階で既に5-1に点差が開いていて、大いにご機嫌である。ドームの傍の場外馬券売り場もオジサマたちでごった返し、異様な雰囲気。さすが首位攻防戦だけあって、チケットも立ち見席しか空いていない。「ジャイアンツ戦ガラガラ」などというのは、巨人と早稲田と自民党と朝青龍がキライなマスコミの大袈裟な作り話である(後2者はどうも「もうそろそろ」という水域のような気もするが)。仕方がない、立ち見のチケットで入って、酒にビールを飲んで騒ごうと決める。


 中に入ると、まずジャイアンツ人気に驚き、次に坂本の人気に驚く。坂本のユニフォームをデザインしたTシャツの着用率が異様に高くて、ドーム全体が坂本の応援団のようである。私個人は、今これほど脚光を浴びている現時点の首位打者・坂本より、2番センターの松本哲也が好きである。甲子園で活躍したわけでもなく、東都大学リーグ時代は2部チームだった専大で苦労し、プロだってちゃんとしたドラフトで入れてもらえず「育成選手」の枠で入ってきて、そこから這い上がってきた、そういう努力のカタマリみたいなところが泣かせるのである(経歴など、違っていたら済みません)。


 打席でも大昔の大洋ホエールズ・近藤和彦もどきの天秤打法で、あんな変なフォームでは絶対打てそうに見えないが、ボールにバットをぶつけるように何とかコツンと当ててくる。「あんなヤツには打たれるはずがない」と思っているバッターに打たれるのはピッチャーとしてのショックも大きいだろうし、ショックが大きいだろうと思えば「打たれてはならない」というプレッシャーも高まる。6~7年前、強くなっていく途上のタイガースにはこういう選手が多くて好きだったものだ。

 

1433
(坂本Tシャツのオジサンの後ろ姿と、豆粒のようなホンモノの坂本)


 さて、立ち見席チケットで入ったからといって、そのままオメオメ立っているわけではないのがクマどんのスゴいところである。何故か、向こうから歩いてきた気のよさそうなオジサンに遭遇。そこいら中に渦巻いているものすごい数の立ち見客の中から、オジサンはものすごい確率であえてクマどんを選択し「立ち見ですか?」と声をかけてきた。「指定席、ありますよ」という。こういう人はまず間違いなくダフ屋さんであって、相手にすればこちらも犯罪である。ところが、このオジサンはその類いのカタではなくて「もちろん無料でいい、チケットがたくさん余っちゃったから、座れない人に配っている」という神とも天使とも形容していいおカタ。さすがに2階席ではあったが、一塁側内野席である。ふわっは、ふわっは、ぐあっは、である。


 酒にビールにレモンサワーに、そういうものをいろいろちゃんと購入して、満員の指定席に座る。試合は7-2でジャイアンツの勝ち。ゴンザレスの投球も見られたし、山口・越智の「風神雷神」も見たし、小笠原の特大ホームランがライトスタンド上段に入るのも見、そのバットの衝撃音のスゴさも聞いた。大満足の観戦の中で、一番嬉しかったのは、その小笠原のホームランにつながった、2番松本のバント。思わず涙が溢れそうになるのをこらえるのに苦労するほどの綺麗なバントだった。

 

1434
(夜も更けた東京ドーム)


 不満だったのはただ1つ、東進のCMがバックスクリーンのオーロラビジョン(っていうの?)にかからなかったことだけである。野球場で東進のCMを目にすることは、最近では珍しくない。左中間に長打が出れば、スポーツニュースで繰り返し繰り返し「東進ハイスクール」の文字が映し出される。水泳の大きな大会なんかだと、たとえNHKの放送でも、レースの最中ずっと「東進」「東進」「東進」の大きな文字が画面の上にキラキラして、気持ちいいことこの上ない。インタビューの最中も、優勝選手の上にも「東進」、左も「東進」、右も「東進」で、まるで東進が優勝したかのようである。


 ならば、せっかくだから、今テレビで放送中のCMが巨人戦のバックスクリーンにでっかく映し出されて流れるのもカッコよかっただろう。万が一そういうことになったら「あれ、私なんですよ」と言って、立ち上がって手を振って歓声に応えるぐらいのことはしたのだ。おお、残念である。勝利のあと、バックスクリーンに映し出されたのは、坂本とゴンザレス。何だ、せっかく立ち上がって手を振って挨拶したかったのに。こうして、ロンとモッコと長島の記憶に彩られた巨人戦は勝利。「手を振りたかった」「挨拶したかった」「もっともっとどんどんCMが流れないかな」とブツブツいいながら、聞き分けのない非常識オジサンの誕生日は更けていくのだった。ということは、誕生日の夜の話はまだ明日も続くのである。