Fri 090619 新丸ビル「リゴレット」 バイジャパン&バイ山形 閉店間際のワインバーで | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 090619 新丸ビル「リゴレット」 バイジャパン&バイ山形 閉店間際のワインバーで

 17日は海浜幕張で講演会があり、終了21時。帰りは総武線で丸の内に出て、新丸ビル「リゴレット」で1杯飲んで帰ることにした。入店が22時を過ぎていたから、ウェイターに「ラストオーダーは何時か」と尋ねると、何と「午前3時でございます」とのこと。恐るべし、新丸ビル。皇居の間近、東京駅のまさに目の前、こんな美しい高層ビル、ここで始発電車まで営業、閉店は午前4時。それでいて治安に不安は全くなし。日本の実力を見せつけるような営業である。ビル内には同じ営業時間で頑張っている店が、蕎麦屋、立ち飲みの飲み屋、おでん屋、ドイツ料理屋、他にもたくさん存在する。ドイツ料理屋は、アイスバインが名物。午前3時や4時までアイスバインで頑張る根性、日本ではおそらくあまり人気のないドイツ料理で突き抜けようとする精神、まさに見上げたものである。この店には近いうちにどうしても行ってみたいと思っている。


 ただし、「リゴレット」で出てきた料理は、取り立てて旨いというほどではない。店のコンセプトは「スパニッシュイタリアン」。スペインのタパスと、イタリアのピザとパスタと、要するに手軽に調理できる地中海料理を組み合わせて、安いワインをたくさん飲ませようということである。客層も、雰囲気も、照明を落としたファミリーレストランか、チェーンの飲み屋に毛が生えたという程度。どこが入り口なのかわかりにくいエントランスだけ妙に凝っているが、終電まで中途半端な時間が残ってしまった若いサラリーマンとOLたちが、不必要に大きな声でつまらないウワサ話に興じ、やたらに激しく両手を打って拍手してみせるうるさいグループばかりである。


 大昔、口の悪い人たちは、こういう状況を「しけた」と表現した。完全に死語になってしまったが「しけた店だぜ、けっ」「しけたヤツらばっかだね、けっ」というふうに、最後に「けっ」をつけて使ったものである。1960年代の邦画を見れば、この「しけた」「けっ」の連発を実体験できる。ただし、聞いていてあまりいい感じのする言葉ではない。「日本にも、こんな時代があったのか」といって眉を顰めたくなるかもしれない。

 

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(ぴったり、はまる)


 さて、リゴレットだが、オリーブに種が入っているのが、イヤ。イタリアでもスペインでも、レストランやバルのオリーブはだいたい種が抜いてあって、カタい種がないことを前提に、次から次へと口に放り込んでムシャムシャやるのだが、そのつもりで思いっきりかじりついて、思いっきり種をゴリッとかんで、奥歯が折れそうになることたびたびである。日本のバーでオリーブを注文すると、絶対と言っていいほど種つきだが、ヘビーにオリーブをムシャムシャ食べる私としては、種を抜いてあってこそのオリーブなのである。


 23時半、入店して1時間とちょっとで、もう帰ることにした。この程度の料理なら、閉店時間はもっと早くていい。午前4時まで営業というのは、その時間まで帰りたくないほど旨いものが次から次と出てくるのでなければ、意味をなさない。東京駅の目の前だから、23時が近づくと、終電のヒトからどんどん店を出て行く。新幹線通勤のご苦労なヒトビトがまず帰る。横須賀線や東海道線ではるばる通勤の神奈川と千葉のヒトビトが次に席を立つ。最後に、まあ都内のヒト。入店した時には空席がほとんど見当たらないほど繁盛していた店内が、1時間半後にはもうがらがらである。ハモンセラーノみたいなタパスだけでは朝までもたないし、ピザとパスタではどんどんお腹がいっぱいになって、やはり朝まで座ってはいられない。

 

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(ふと、生き方を疑問に思う)


 ただ、この店で飲んだ山形の微発泡ワインは旨かった。ワインをお飲みになるお偉い方々は、なかなか国産のワインを飲まない。鼻にも引っかけないというか、国産なんか最初から選択肢に入っていない、そういう顔をなさって、「山形」「甲州」みたいなワインを注文すると、注文しただけで「言語道断だ」という意味の冷たい視線がとんでくるのだが、実際に飲んでみると、国産は決して悪くない。


 特に、この10年ほど、各分野で山形県の活躍は著しい。ワインも酒も蕎麦もフルーツもコメも、山形の健闘をぜひもっと味わってほしいと思う。世界は今や、バイ・アメリカであり、バイ・チャイナである。保護主義とかそういう下らないことではなく、積極的に試してみるという意味で「バイ・ジャパン」である。とりあえず「バイ・山形」でも、いかが。私は秋田出身。秋田と山形はお隣どうしで、昔は強烈なライバル意識があり、お互いどうし余りいいことを言わなかったものだが、この頃の山形の人たちの健闘には(サッカーのモンテデオ山形の活躍まで含めて)正直言って、脱帽である。

 

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(反省は、深まっていく)


 店をかえて、誰もいなくなってガランとした5階のワインバーで閉店間際まで(5階の店舗はすべて24時閉店なのだ)粘る。座った時にはもう「もうすぐラストオーダー」と言われ、大急ぎでオリーブ1皿と赤ワインを注文。こっちがラストオーダーで焦っているのに、向こうの方で中年サラリーマン3人組が「会計を、1人ずつ、別々に」をやって、店員たちの通行をブロックしてしまっている。しけたヤツらだぜ、けっ。まとめて払って、店を出てから精算するのが常識だぜ、まったくしけた連中だぜ、けっ。死語でもなんでも、こういう時に連発してみると楽しくてたまらない。


 しばらくしてバーテンダーが運んできたワインは、注文したワインと違う。グラス1杯1700円のワインを出されたのだが、私はそんな高いワインを頼んだりしない。私の注文は1杯900円の1番安いヤツである。しかし、せっかくグラスに入れて出されたものを、「注文と違うから飲まない」などといって突き返すのは誠に野暮な話、「けっ」と言われかねない。「構いませんよ、これでいいです」と言って抱え込んで離さず、どんどん飲んでしまう。バーテンダーは恐縮していたが、5分ほどして、グラスがすっかりカラになった頃に、「店の間違いですから、そのワインはお店からのサービスとさせていただきます」と申し出てきた。なるほど、良い店である。こうでなければ、ダメだ。うぉっほ、がっほ、げほ。というわけで、もう1杯ワインを注文。片付けが始まった店内で最後まで粘ってから、ゆっくり店を出た。