Tue090609 大予備校「まにあわせ校舎」の生徒の不満は、アンケートにたたきつけられていた | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue090609 大予備校「まにあわせ校舎」の生徒の不満は、アンケートにたたきつけられていた

 すると(昨日の続きです)、当たり前のことだが、そういう「研修館」「東西南北校舎」「新館」などの校舎の生徒たちは、4月5月と不満タラタラで過ごすのである。最初の授業で満員の生徒たちを見回すと、すでに「大いに不満」という顔がズラリと並んでいる。そりゃそうだ。すぐとなりの本校では、有名講師が授業をしている。

 講師室に行けば、人気講師に長い質問の列ができている。友人はそういう恵まれた校舎の恵まれた授業を受けて、いかにも楽しそうである。友人同士が集まれば、「あの先生さすがだよね」「スゴい授業だよね」「やっぱり一流講師は違うよね」という話題で、友人たちは夢みるような顔つきになっている。

 それなのに、自分だけ「ハズレ」をつかまされたのだ。「研修館」「東校舎」「西校」「SS館」では、パンフレットに名前も写真もない見知らぬ講師が、緊張してうまく舌も回らない、それどころか(講師マニュアルではそういう発言はカタく禁じられているのだが)「私は新人ですから、まだよくわかりませんが、いっしょに勉強していきましょう」とか、不安を煽るようなことばかり言う。

 答えを言い間違える、先週と同じ雑談をする、やるべきページを間違う、問題をとばす、「画期的な方法論」とか言った割に答えがうまく出ない、(有名講師だって同じだが)どんどん授業が遅れていく、(人気講師だって同じなのだが)どうもテキストが最後まで終われそうにない。

1382
(ネコは、踊る 1)


 こうして、生徒たちのふくれっ面は5月下旬、「夏期講習校内生優先申し込み」が終わった段階に頂点に達する。夏期講習で申し込んだ超有名講師の顔写真と、目の前にいる「間に合わせの新人講師」とのギャップに悩むのである。

 そこにある朝、教務課の職員が(ホームルームとかチュートリアルとか、オシャレな名前の時間があるのだ)気色悪い笑顔で現れ、「では、先生方の授業についてのアンケートをとります」と宣言し、マークシート用紙を配る。

 もちろん不平と不満で溢れた生徒たちの反応は「板書:きわめて不満」「熱意:きわめて不満」「話し方:きわめて不満」、要するに何でもかんでも「きわめて不満」になって当然である。予備校にぶつけにくい不平不満は、弱い立場の講師に思いっきり投げつけられることになる。

 このアンケートの数字が、講師の自宅に郵送されてくるのが7月下旬。安易な「優遇」という言葉で安易に集められた新人講師は、この安易な数字でその後の待遇を安易に決められる。悪ければ「来年度は契約しない」、ある程度うまくいっても「来年度の時間給は据え置き、でもコマ数が少しは増えるかもしれませんよ」。

「予備校講師募集」に書かれた「優遇」の実態は、こういうことである。受験の英語だの、受験の物理だの、その程度のことなら、超一流企業のビジネスマンなら、小手先の努力さえせずに簡単にこなせるように思うだろうし、予習も準備もせずにできるお気楽極楽な商売に見えるかもしれない。私だって、友人たちから「毎年同じことしゃべっているだけでいいんだろ?」と面と向かって言われたことがある。

 

1383
(ネコは、踊る 2)


 しかし、実際に優遇の名に値する優遇を受けるには、そういう修羅場でイヤな思いに耐え続け、生徒たちがイタズラ半分で書いた「きわめて不満」だらけのアンケートに苦しみ、あることないこと、ありとあらゆる悪い評判をたてられても悠然と無視しつづけ、そういう10年なり15年なりを我慢しなければならない。その間の血の流れるような努力には、もちろん給与は一切支払われない。

 しかも「おしん」みたいに我慢し続け耐えつづけるだけでは、永久に優遇は得られない。同じように耐え続けている人たちを一気に抜き去るような「力ずくの勝負」に出なければならないこともあるし、そういう勝負に勝てば勝つほど、「あることないこと」にますます締めつけられて、精神的な圧迫はどんどん大きくなっていく。

 それなら、昨日の最後のほうで書いた通り、転職なんかする必要は最初から全くないのだ。今の職場でそこそこうまくいっている若いヒトなら、軽々に予備校講師などに転職を考えたりしてはならない。もし求人広告をみて甘いことを考え、思わず履歴書を書いてしまったなら、すぐに燃やしてしまうほうがいい。履歴書用紙を何枚か文房具屋で買ってしまったなら、5年先10年先のために、引き出しの奥深くにしまっておけばいい。

 

1384
(ネコは、踊る 3)


 ただし、例外は存在する。何を隠そう、このわたくしでございます。初年度、「研修館」や「東西南北」にムカついたわたくしは、徹底的に戦うことを、決意したので、ございまハす(「天地人」の宮本信子ふうに)。結果として初年度のアンケートは「きわめて満足:70%」「満足:25%」で合計95%。

 これは、たいへんな数字で、ございまハす(あくまで「天地人」ふうに)。そして、この数字を15年以上、キープしたので、ございまハす。別に、自慢するわけである。努力のタマモノである。ちょっとぐらい、自慢しても、許されていいと思うので、ございまハす。

 すると、予備校講師の2年目に状況は大きく変わってきた。駿台と河合塾とで「取り合い」が始まり、担当させてもらった夏期講習のほとんどが、申し込み初日で満員締め切り。2年めの1週間を、記憶しているかぎりで以下の通り。

月曜日、午前が河合塾千駄ヶ谷で2コマ、夕方から駿台大宮で3コマ。
火曜日、午前が駿台大宮で2コマ、夕方から河合塾西千葉で2コマ。
水曜日、午前が駿台柏で4コマ、夕方から河合塾大宮で2コマ。
木曜日、午前が駿台池袋で4コマ、午後が河合塾松戸で2コマ。
金曜日、午前から午後にかけて駿台お茶の水で6コマ。
土曜日、午後から駿台大宮で5コマ。

まだまだ地方校舎がメインだが、駿台お茶の水本校がチラホラ入りはじめ、翌年からお茶の水東大スーパークラスも担当、これでまだ2年めでも3年めでも、十分に人気講師である。

 だから、辛抱と工夫次第で、「優遇」が短期間で手に入る可能性はゼロではない。ただし、辛抱と工夫は私だけの企業秘密である。自分だけの企業秘密は普通なら教えないのだが、これはブログである。

 ブログとは、普通なら教えないことも教えてしまうものであり、だからこそ私のある友人は「ブログって、露出狂でしょ?」と真顔で言っていた。まあ、そういう気もしないことはないので、明日のブログはその企業秘密を少しだけ教えることから始めたいと思う。