Sun 090607 インフルエンザ流行と予備校の対応 「冷たい世間」はどう反応するか | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 090607 インフルエンザ流行と予備校の対応 「冷たい世間」はどう反応するか

 海外から帰国して2週間分の新聞をめくれば、興味深い記事をいくらでも発見する。新型インフルエンザが日本でパンデミックの恐れがあった5月中旬、関西地区では予備校の授業も休講になったとのこと。まさに良識的な判断であって、こういう判断ができるなら、予備校業界もまだまだ捨てたものではない。

 毎年秋から冬になって「いよいよ追い込み」ということで授業にますます熱が入ってくると、教室の中で生徒の咳き込む声が大いに気になるものである。咳き込んでいる生徒は、もちろん別に悪気があるわけではない。

 あえて欠席せずに、頑張って授業に出て、懸命にノートをとっている姿は感動的ですらある。しかしそんな真っ赤な顔で、マスクもせず、授業時間のほとんどを激しく咳き込んで過ごす生徒がいると、講師としては当然「他の大勢の生徒たちは大丈夫だろうか」と、そればかりが気になる。

「もしあれがインフルエンザだとしたら」ということ以外に、咳がうるさくて周囲に座った生徒はとても授業どころではないだろうとか、それが原因で憎しみや嫌悪感の虜にならないだろうかとか、そういうことも気になるのである。とげとげしい気持ちでは、学習効果は下がる。他人にも自分にもとげとげしくならないのが、学習効果を上げるための最低条件である。

 だから「カゼ気味なら、積極的に休んでくれ」と授業中にほのめかすようにしてきた。自分のためにも仲間たちのためにもならないからである。もし今年の秋から冬にかけてまた流行の危険があるなら、ぜひ積極的に欠席すべきだし、予備校や塾の側でも早めに対策をとるべきである。

 

1377
(ニャゴ姉さん、どう考えますか)


 しかし、世の中というものはどこまでも冷淡にできている。冷淡さは、というより貪欲さは、まず株価に反映される。「人の集まる場所は避ける」ということになると、人が集まらなければ成り立たない業種の株価が一斉に下がる。百貨店、興行関係、塾&予備校、旅行関係業種、そういう業種の株価がインフルエンザの流行に敏感に反応して乱高下していたのがわかる。

 流行の深まりが伝えられると、すぐさま一斉に「ウリ」または「ウリ気配」が出る。2週間分の株価の推移を新聞で追ってみると、株価に示された冷淡さと貪欲さはあまりにも明らかだ。せっかく日経平均9000円半ばを安定的に確保し、10000円回復さえうかがうほどに経済全体は上向いているのに、こういう冷淡さは見苦しいほどである。

 もっとも、そう書いている自分だって、冷淡さではヒケをとらない。関西での流行の新聞記事の中で「予備校大手・代々木ゼミナールでは、神戸・大阪・大阪南の3校舎で休校措置をとり、3校舎で合計1200名の生徒を対象にインターネットでの授業を開始した」というのがあった。


 要するにサテライン授業に切り替えたということであるが、私の冷淡な頭は、すぐに以下の2点を考えた。
(1)生授業を担当していた若手の先生方にとっての経済的な打撃はどれほどか、それに対する予備校側からの補償はあるのか。
(2)「3校舎で1200人」とは、もちろん浪人生と現役生の合計だろう。ということは、1校舎400人、一学年につき約150人~200人程度の計算。もちろん、朝日新聞紙上の数字を単純に割り算してみただけなのだが、おお、昔から関西地区は寂しかったけど、ずいぶん生徒が減りましたねえ。以上2点である。

 

1378
(いいから、眠い)


 (1)については、若手・中堅の先生方の生活についていつも心配しているから、すぐに計算してみた。15年も前の予備校バブルの頃とは違うのだ。昔なら新人でも90分授業1コマで10000円はもらえたし、いくらか実績を積めば1コマ30000円などという人も少なくなかった。1日4コマ、いろいろな予備校を掛け持ちして、1週間5日働いて20コマぐらいコマ数を確保すれば、1週で20万円。講習会を入れて1年約30週は授業があるから、新人でも年収は600万円ほどだ。

 退職金もなし、保証も保険も安定性もなし、しかしまあ50歳ぐらいまで頑張って働けば(おじいさんになれば人気が下がってコマはもらえなくなるから、50歳ぐらいが限度なのだ)、何とか老後も生きていけるだけの貯金ができるだろう。彼らの人生プランは、こういう計算でできていた。まして超人気講師にのし上がれば、「年収1億円」などというヒトだって存在したのだ。それを夢みた人々も多かった。

 

1379
(とにかく眠い)


 しかし、少子化、浪人の減少、予備校の多様化、いろいろな原因が複合して働いて、彼らの置かれた状況はあまり明るくない。確保できるコマの数は激減し、1コマあたりの時間給もどんどん下がっていく。

 人気講師でさえ「予備校掛け持ち」が常態化し、毎日出かける予備校が違えば、「いったい自分はどこの予備校の講師か」さえよくわからない。モラルは当然低下して、昨日授業をした予備校の悪口を今日別の予備校で語り、今日の生徒たちを明日の生徒たちの前でバカにしてみせる。そういうことをして一番ミジメなのは自分なのだが、なかなかそれに気がつかないのだ。

 そこへ、たとえインフルエンザのせいとは言え「生授業をサテラインに切り替える」ということになると、若手の講師の生活設計にとっては致命的になりかねない。せっかく高いモラルをもって新学期を迎えた若手講師たちは、安心して毎日の授業に励めるだろうか、大いに心配である。しかも、そこに(2)の事態がやってくるのだが、長くなりすぎる。(2)については明日続きを語ることにする。

1E(Cd) Candy Dulfer:LIVE IN AMSTERDAM
2E(Cd) Patti Austin:JUKEBOX DREAMS
3E(Cd) Richard Tee:THE BOTTOM LINE
4E(Cd) Isao Tomita:Shin Nihon Kikou
7D(DvMv) THE PERFECT STORM
total m42 y928 d3171