Sat 100109 2005年オランジェリー・コンサート 特濃100%農協果汁 ケビン大行進 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 100109 2005年オランジェリー・コンサート 特濃100%農協果汁 ケビン大行進

 こういうふうで(すみません、昨日の続きです)、2005年2月19日だったか20日だったか、「40年前の農協団体旅行よろしく」のいでたちのカニ蔵くんは、ついにウィーン・シェーンブルン宮殿の「オランジェリー」に入った。決死の表情、何が何でもリベンジしてやる、50ユーロのモトを意地でもとってやる、路上のチケット売りの鼻をあかしてやらずにはおかない、コンサートに出かけるのにはおよそ不似合いな前代未聞の不機嫌さで、たいへんなオーラまたはバリアがクマどんの肉体を覆っていたはずである。

(シェーンブルン宮殿のクリスマス市)

 会場に入る前に、小生意気なことにクロークなどがあって、せっかくの分厚い真冬用コートをはぎ取られてしまった。するとコートの下からは、「農協ジャケットに農協スラックス」という、誠に見事な、100%全農牛乳みたいなクマどんの全身がさらけ出されることになった。
 なお、「農協」はすでに死語であるかもしれないので一言断っておくが、この記事の中で言う「農協」とは「1970年大阪万国博時代の農協」「70年代のアメリカの辞書にNokyoとして登場した農協」のことであって、現存する農協(いまやJAと改称し、たいへんオシャレな21世紀的団体になっている)を指してはいない。また、「スラックス」とはズボンのこと(東北地方の「農協」の世界では「ズンボ」という)、最近は「パンツ」と呼ぶが、そのアクセントは「パ」ではなくて「ツ」のほうに移動したらしい。
 さらに、「全農」とは「全国農業協同組合連合会」の略称であって、何を隠そう今井どんは就職活動(最近は「シューカツ」または「SHUKATSU」として海外でも有名であるが)で切羽詰まったとき、「もし電通に拾ってもらえなかったら、全農を受けてもいいかな」と一瞬考えたことがある。なお、「SHUKATSUが海外でも有名」については、もちろん口から出まかせに過ぎない。
 あのとき、卒業間近の10月末、最後に残っていたシューカツ選択肢は、電通/シャープ/文芸春秋/講談社であって(おお、なかなか優秀なSHUKATSUである)、これに全部落ちてしまったら都職員になるしかない(その前の8月、都公務員試験にコッソリ合格していた)。それまで22年の人生で、最も「なりたくない」と思っていた公務員生活を余儀なくされることになる。
 当時のバカな今井君は(今もそうであるが)「安定志向の若者」が理解できなかった。「公僕」などという張り切ったことは1度も考えなかったので、「なぜ公務員?」「なぜ大企業?」と尋ねられて「安定してますから」「年金とか退職金とかがチャンとしてますから」とか、ツルツルしたキレイな顔で答えるヤツがいると「アホか」と思ってプイと横を向いていた頃である。だから、むかしのダメな今井どんとしては、公務員こそ「もっともなりたくない」という対象。「なりたくない」と切望するがゆえに、逆にフザケて受験した公務員試験に合格してしまい、結局それで公務員になってしまうのは、冗談にしてもひどすぎる。

(クリスマス市、グリューワインを飲む男)

 慌てて出かけた大学の就職課で、貼り出されていた求人に「全農」「メロン銀行」「コメルツ銀行」というのがあって、「なんだなんだ、メロン銀行って。甘くて腐りそうなコドモ銀行だな」と悪口雑言を吐き、メロンが山積みになっている田舎の銀行を想像して噴き出し(無知とは誠に恐るべきことである)、「そのぐらいならトマト銀行のほうがいい」と、21世紀の今になって思えば見事に未来を予測する言葉をtwitし(無知とは誠に恐ろしいものである)、「コメルツ銀行」についても、「米鶴銀行のほうがよくないか、もっともそれじゃコメツルか?」と、意地でも一言、誰にも受けないツッコミをさらにtwitしたものである。

(クリスマス市のオーナメント店1)

 で、ツッコミなしに最後まで残ったのが「全農」。ただし、ホントに残念ながら、今井どんの翌年にSHUKATSUする諸君(つまり1学年下の諸君)のための掲示なのであった。おお、おしい、おしい。万が一、あのときもう1年早く(遅く、と言ったほうがいいかもしれないが)あのSHUKATSU危機に陥っていたら、「全農の今井グマ」が誕生していたかもしれないのである。今や、むしろ「全能の今井グマ」志向である(もちろんウソである)が、あれから長い長い月日と年月が経過し、信じがたいほど世間の辛酸なめ子でつらい思いを重ね、こうしてウィーンまでやってきて、ジャケットもスラックスも完全に全農スタイル100%、まさに特濃農協果汁みたいになってオランジェリーにやってきた。

(クリスマス市のオーナメント店2)

 もちろん、リベンジのためである。しかしこうしてよく考えてみると、このリベンジは決して大切なウィーンの一夜を台無しにしたチケット売り達に対するリベンジではなくて、世界的に有名なSHUKATSUから始まった人生すべてを取り返すためのリベンジである。もちろんこんなことは、ただ自らを励ますために言い聞かせただけのことであるが、そう考えるとますます顔は青ざめ、目の前が真っ赤に染まって、見る者を恐怖のどん底に落とし入れた(かもしれない)。
 ご丁寧なことに、この100%特濃農協果汁は、ジャケット&スラックスにプラスして、汗ジミのたくさんできた農協ネクタイで仕上げを施し、人生のリベンジに向かう中年武者としてはほぼ完璧と言っていい。館内の暖かさのおかげで「濃縮果汁還元」も進行、心の中はドロドロである。

(クリスマス市のオーナメント店3)

 オランジェリー全体を見渡すと、体育館が2つある高校で「小体育館」と呼ばれるほうの体育館ぐらいの広さ(なんだそりゃ?)。パイプ椅子に毛が生えたようなイスが150脚ぐらい、キレイに並べられている。ただし、もしホントに「パイプ椅子に毛が生えたら」と思うと恐ろしい。それは例えばKevinというアメリカ人が日本に留学にきて、「自分の名前はケビンです」と自己紹介した上で、黒板に大きく「毛瓶」と書いたのに似ている。まあ、少しも似ていないし、話がいったいどこまでそれていくのか自分でももう止められないが、「毛の生えた瓶」をちょっと想像してみたまえ。ついでに、話はいくら激しくそれていっても、せっかくだから「毛敏」という敏感すぎて痒くなりそうなヤツも想像すべし。「毛便」、うーん、これはあまり感心しないが、ヒツジ1頭丸ごと食べちゃった翌日ですかね?

1E(Rc) Collegium Aureum:VIVALDI/チェロ協奏曲集
2E(Rc) Corboz & Lausanne:VIVALDI/GLOLIA・ KYRIE・CREDO
3E(Rc) Elly Ameling & Collegium Aureum:BACH/HOCHZEITS KANTATE
KAFFEE KANTATE
4E(Cd) Akiko Suwanai:SOUVENIR
7D(DvMv) THE PELICAN BRIEF
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