Sat 090516 図書館喫茶室 学部ラウンジでのコーヒー 昔のサークル 飯でスタート | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 090516 図書館喫茶室 学部ラウンジでのコーヒー 昔のサークル 飯でスタート

 私が好きだったのは(昨日の続きです)、早稲田大学・旧図書館(恐竜でも暴れ出しそうな大昔の話だが)の地下の喫茶室。コーヒー80円、紅茶50円。50円でレモンまでついて、狭いテーブルだが椅子もあり。教授クラスも利用していて、同じ狭いテーブルに、同じ安い紅茶なりコーヒーなりを置いて、持参のサンドイッチを食べていたりする。その教授がたとえ「エドガー・アラン・ポー」でも「傾向と対策」でも「ノミナライゼーション」でも、教室で出会うときにはあまり好きでもないし尊敬もしていないような教授であったとしても、図書館の喫茶室で嬉しそうに紅茶をすすっている様子を拝見すれば、それだけで嬉しくなる。外が雨だったり、12月とか1月とかで少し暖房が効きすぎていたり、そういう時はますます嬉しい。


 当時はまだクーラーというものが設置されている図書館が少なかったから、前期試験前とか夏休みなんかの図書館はたいへんな暑さだったが、学部生も院生もドクターも教職員も、悩みも生活も収入も環境も全然異なる人々が、みんな仲良く同じように扇子を使いながら、レベルも分野も全く違う文献に鼻先を突っ込んで、夏の日盛りの犬のようにふうふう言っている姿というのもまた素晴らしい。それで喫茶室にくると、地下室のせいか少しだけひんやりしているのである。


 他にコーヒーを飲むべき場所としては、政経学部ラウンジ・法学部ラウンジ・商学部ラウンジ・生協前など(すべて遠い過去の話)。商学部ラウンジのみ、何かの理由で60円。他は80円。60円だの80円だので、小さなプラスチックの小窓の向こうに紙コップがセットされ、そこにドロドロ流れ込んでいくだけのコーヒーがそんなに旨いはずはないのだが、図書館で2時間、(私の場合は)東洋文庫を読みふけった後で飲むコーヒーは、たとえマズくても悪いものではない。これらの中で一番よかったのは法学部ラウンジである。政経学部ラウンジは軟弱サークルに占拠されていて、油断してソファに腰を下ろすと厳しい視線がとんでくる。商学部は20円安い分、マズさが倍増する。生協前は雑踏、かつ完全な立ち飲み。熱すぎるコーヒーの紙コップを置くテーブルさえないから、「熱すぎる」と判断した際の緊急避難場所は、地面しかない。それでも地面にコーヒーを置いて、雑踏を睥睨するのも楽しかった。

 

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(見せかけの熟睡)


 法学部ラウンジがよかったのは、ただ単にソファに座れるからである。この学部の学生は、概して真面目なのだ。政経学部ラウンジを占拠していた軟弱サークルはここにはあまりなくて、軟弱ではないからソファなんか占拠して示威行動に出ることは少ない。代わりに支配的なのは、資格試験サークル。何といっても盛んなのは、司法試験サークルで、なぜか法律の前に色彩名をかぶせて、緑法会とか紫法会とか青法会とか、まあそんなのが多い。会計士や税理士や社労士みたいなのも、やっぱりサークル。サークルを作ってみんなで集まれば、きっとみんなで合格しやすいと考えたのかもしれない。私なんかはおヘソがよおっく曲がっているから、サークルで集まればみんなで不合格にもなりやすいんじゃないか、一匹狼で貫くべきなんじゃないか、そう思ったのであるが、とにかく他人のことだから口出しはヤメて、占拠されていないソファで80円コーヒーを楽しんだ。つまり、サークルは作ってもあくまでお勉強のサークルなんだから、ラウンジのソファを占拠して男女でだらしなくいつまでも戯れてなんかいないのだ。


 当時の軟弱サークルといえば、「春はテニス・夏はサーフィン・冬はスキー」という3本立てで、要するに合コンさえしないで手近な男女で気軽につきあおうという発想。何しろ弥生時代みたいな大昔だから、合コンではなくて「合ハイ」などというまさに驚くべきものも存在した。合同ハイキング、である。「ハイキング」自体なかなかのツワモノであるが、それが「合同」して、「合同ハイキング」に昇格する。おお、「合同」である。


 ま、そういう時代だから仕方ないし、早稲田の学生というのは昔は「貧乏」が代名詞。貧乏で、数学が苦手だから(数学は関係ないが)、軟弱な行動には欠かせない「クルマ」というものを誰も所有していない。クルマがなければ、歩くしかない。だいたい、昔の早稲田では「どのぐらい貧乏か」「どのぐらい数学ができないか」がむしろ自慢のタネであり、酒を飲めばお互いに「貧乏自慢」か「どれほど数学ができないか自慢」を始める。そういう人たちが集まって、「来たる5月23日、合ハイを行う」ことについて、男女で戯れつつ3時間も4時間もかけて計画表を作成する、それが軟弱ラウンジの有り様であった。

 

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(実は、目覚めている)


 そういう様子をみながら15分ほどを過ごして、図書館に戻る。1日に2度か3度そういうことをして、それが息抜きになる。授業も息抜きとして使えば十分であって、「コロンボコートに風呂敷」仲間を驚かせたり、「英語でノート」で驚かせたり、とにかく驚かせて楽しむことにすると、コーヒーの回数を減らすことには貢献してくれる。で、夜9時になって新聞コーナーにいると、佐々木(仮名)がやってくるか、その他時間を持て余した悪いヤツらがやってきて、「どっか行くか」になる。


 早稲田には「稲穂」とか「エビアン」とか、いろいろ有名な名門店があるのだが、そういう名門店もまたサークルに占拠されていることが多く、9時すぎに「どっか行く」ことに決めるようなのでは遅すぎる。仕方なくて名門店を外せば、この間書いた「YOURS」みたいなのしか残らない。どちらかと言えば高田馬場方面に偏る傾向があって(その方面はサークルに占拠されていないのだ)、高田馬場駅前の狭いごみごみした店で食事をすることから始まる。


 「河童軒」のスタミナラーメンからスタート、元禄寿司でスタート、店の名前は忘れてしまったが「モンゴル焼き」でスタート、などというのもあった。得体の知れない薄切り肉を大量のタマネギと一緒に甘辛いタレで焼いたのが「モンゴル焼き」。そういうものでお腹を一杯にしてから飲みに出れば、ツマミでお金を払う必要がない。恐ろしいことだが、吉野家でスタートしてしまい、冗談で酒を頼んだらその場で盛り上がり、確か5~6人いたと思うが、「面倒だからここで」ということになって、最後は吉野家で早稲田大学校歌に紺碧の空を歌いまくり、結局「そのまま朝まで」というのをやった。昔だからできたことである。