Sun 090503 NHK銀河ドラマ 五輪真弓「落日のテーマ」 石川セリ「遠い海の記憶」 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 090503 NHK銀河ドラマ 五輪真弓「落日のテーマ」 石川セリ「遠い海の記憶」

 「新型インフルエンザ」についていろいろ心配しながらテレビばかり見て連休を過ごしていると、草彅クンの出ないSMAP×SMAPが始まって、「80年代&90年代のヒット曲特集」という、何となくテレビ東京的な企画でこの危機を乗り切ろうと考えたようだ。

 こういうのが始まってしまうとついつい見入ってしまうのがまた情けないが、あれれ、五輪真弓という懐かしい長い顔のおカタが登場、「恋人よ」を熱唱するのをみて、絶句。30年近く前に大ヒットして、とにかく「五輪真弓」と言えばこの曲しかないような扱い方をされるようになってしまった。

 当のご本人も、この曲だけで自分を語られるのは大いに不本意なはずだし、今の受験生のパパやママの世代で、昔の音楽(昔は「ミュージックシーン」などと恥ずかしい言葉をつかったが)をある程度知っている人なら、彼女のことは別の曲で思い出したいはずである。

 というか、アーティストとしてはあまりテレビの画面に登場しないミステリアスなタイプの人にしておけばよかったのであって、テレビ画面にやたらに登場して、例の長い髪と長い顔で、聞き飽きた長いイントロに続いて長い曲を長々と歌うのを聞くたびに、私なんかは確実にチャンネルをかえたものである。

 実際には、五輪真弓と言えば、誰が何と言っても「落日のテーマ」である。「少女」も悪くないが、「落日のテーマ」を知らずに彼女を語ってはならない。「落日のテーマ」は、NHK銀河ドラマの1974年作品「僕たちの失敗」の主題歌。思い出して、あまりに懐かしかったから、iTunes storeで見つけようと思って検索したが、「見当たりません」とのこと。

 You Tubeで探して、ようやく見つかった。一度聞いたら、今40代のパパやママの中には驚喜する人が多いのではないだろうか。1974年と言えば、「フォーク」から「ニューミュージック」への変わり目である。井上陽水がいて、吉田拓郎がいて、中高生はみんなラジオの深夜放送に夢中で、セイヤングだのパックインだので荒井由実や矢野顕子がそろそろ目立ちはじめた時代である。

 

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(伊東屋渋谷店で昨日購入した万年筆と、昨年12月オックスフォードで買ったカレンダー)

 夜9時から40分間、家族そろってNHKの「ニュースセンター9時」を見るのが、当時のスタンダードな日本の家庭だった。ニュースキャスターは磯村尚徳。磯村は松平定知の叔父だか伯父だかだったはずだが、他人の書いたニュース原稿をマジメに読み上げるだけの「7:3分けのアナウンサー」ではなく、自らの言葉で語る「キャスター」に進化するキッカケになった人物だ。

 スポーツニュースと気象予報とを別の専門キャスターが担当するというニュース番組の作り方も、この「ニュースセンター9時」から始まった。「お天気お姉さん」の誕生でもあったわけだ。

「ニュースセンター9時」が終わると、21時40分から22時まで毎日20分の「銀河テレビドラマ」がある。このあたりから普通のお父さんなら子供たちに「そろそろ勉強しろ」と言って居間から追い出す時間帯になる。それでもあと20分粘ってテレビの前に座り、力作の多いこのドラマをじっくり見るのが、子供の頃の趣味の1つだった。

 北杜夫の「楡家の人々」、石坂洋次郎「若い人」、川端康成「女であること」、伊藤整「感傷夫人」などから始まって、その後20年ぐらい続いていたと思うが、さすが当時のNHKは手抜きなし。トルストイ「復活」までこの枠でドラマにしてしまった。

 石坂洋次郎「若い人」は松坂慶子の出世作。怪しいお色気ムービー(今でいえばVシネみたいなもの。もちろん私は見たことはないが)に「ちょい役」で出演していた彼女が、石坂浩二、(オロナインの)香山美子、草笛光子などの共演者に支えられて、一気に花開いたのがこのドラマだった。

 「20分の帯ドラマ」で今の我々がイメージするものとは全く質が違い、制作者も出演者も意気込みが違ったのである。主題歌を任されたアーティストも、五輪真弓の他、矢野顕子、荒井由実、小椋佳、松山千春など。なかなかのメンバーが揃っている。

 で、五輪真弓の「痩せた野良犬たちの遠吠えが…」でフレーズで有名(というか、当時の音楽少年たちが夢中になった)「落日のテーマ」であるが、これは石川達三「僕たちの失敗」の主題歌である。

 ドラマのほうは大して印象に残るものではないし、石川達三という作家自体(当時は「問題小説作家」として人気抜群の小説家だったはずだが)、この30年ほどの時代の向こうに消え去ってしまった、旭屋書店銀座店や三越池袋店のようなヒトである。

 

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(「聞くだけ音楽少年」の頃大好きだったVan Dyke Parks「SONG CYCLE」のレコードジャケット)

 こうして、主題歌だけがあとに残ったが、「恋人よ」の退屈な五輪真弓しか聞いたことのない人には、「落日のテーマ」は必聴の名曲である。そのついでに、YouTubeをいじりながら「少女」と「冬ざれた街」も聞いてみると、この昔々のアーティストの可能性がどれほど大きかったか、理解できると思う。

 彼女にとっては「恋人よ」でメジャーになってしまったのが大きなマイナスになったのだ。こういうのはありがちな悲劇であって、何かのハズミでつかんでしまったメジャーへのチャンスが、そのアーティストの大きな未来を無残に摘みとってしまう。

「TVには出ない」というポリシーが当時のミュージシャンの流行だったが、流行だった以上に「メジャーになって、より大きな可能性をなくす悲劇」への恐れがその陰にあったのは間違いない。

 池袋三越もとうとう閉店したのだ。ここは昔を懐かしむだけでは足りない。そう考えてAMAZONで「落日のテーマ」を購入することにした。そのためには3000円近く出してアルバム「Now & Forever」を買わなければならないのだが、タクシーを1回か2回我慢して銀座線や千代田線で地道に移動すればいいだけのことだ。

「あれれ、何やってるんだオレは?」、そう思いながらも、ついでにiTunes storeで石川セリ「遠い海の記憶」「八月の濡れた砂」をそれぞれ200円でダウンロード。少し酔っ払っていたせいもあるが、自分としては「ガンガン買い物をした」感じである。

 石川セリ「遠い海の記憶」は、受験生諸君も200円払ってぜひ購入したまえ。「母の日のプレゼント」に最適だ。「昔、NHK少年ドラマで聞いたことあるんじゃない?」と言い添えて母親に手渡せば、きっとママもパパも涙を流しながら聞き入るに違いない。

 静かなギター演奏が30秒近く続いた後、「いつか思い出すだろう。あの輝く青い海と、通り過ぎた冷たい風を」まで聞いて、もう涙が止まらない。母の日は200円でいいのだ。アレンジして、合唱コンクールなんかにもいい。曲は3分で短すぎるから、独唱をいれてうまくアレンジする必要はあるかもしれない。

 NHK少年ドラマのタイトルは「つぶやき岩の秘密」、石川セリは井上陽水の妻。ついでに「石川セリがよく来るフランス料理店」が代々木上原にある。店の名前は忘れたが、親友の平野レミが代々木上原に住んでいて、一緒に現れるんだそうである。ま、その辺のことは、別にどうでも構わない。

1E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER 3/4
2E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER 4/4
3E(Cd) Solti & Wiener:MOZART/GROßE MESSE
4E(Cd) Alban Berg Quartett:BRAHMS/KLARINETTENQUINTETT Op.115など
5E(Cd) Hugarian Quartet:BRAHMS/CLARINET QUINTETなど
6E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/EIN DEUTSCHES REQUIEM 1/2
7E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/EIN DEUTSCHES REQUIEM 2/2
10D(DvMv) THE PIANIST
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