Thu090416 三春の桜にたどり着く 油まみれのトンカツに苦しむ 立ち食い蕎麦と黒烏龍で対抗 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu090416 三春の桜にたどり着く 油まみれのトンカツに苦しむ 立ち食い蕎麦と黒烏龍で対抗

 郡山駅に着く前に調べたケータイの情報によれば(昨日の続きです)、磐越東線の電車まで、待ち合わせ時間が108分ある。108分とは2時間のことであって、ケータイ様は「ここで2時間待て」と、無言で厳かにご命令になるのであるが、中年男がその辺の若い者に負けないのは「決してケータイ様の言いなりには動かない」ところである。「ローカル線で15分」なら、タクシーに乗っても料金は大したことにはならない。第一、磐越東線を108分待ち合わせ、ほうほうのていで三春にたどり着いても、三春駅からは結局「タクシーで20分」と、これもケータイ情報にでている。アホではないか、どうせタクシーなら、こりゃ郡山からタクシーだ。


 乗り場で「三春の滝桜まで」と告げると、最初は「うお、うへ!!」とか叫んで恐れ入り、すっかりかしこまっていた運転手さんも、やがて意外に三春が近いことを思い出して「ついでに地蔵桜も見ていきませんか、滝桜の近くで待ってますよ、サービスしますよ」といろいろ福島訛りで手数を繰り出してきた。しかしこちらは「乗ったタクシーの数知れず、タクシーの運転手とした駆け引きの数知れず」という一騎当千の老獪な中年グマである。もちろん魂胆はわかっている、おめおめ高い料金を払ってなるものか。世界のタクシーを向こうに回して、ことタクシーについては絶対の自信を持つイモ類グマを、見くびってもらっては困るのだ。

 

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(桜より美しい白い雲)


 結局、郡山から滝桜までは15分ほど、料金も大したことはなかった。これで「108分待ちあわせ、磐越東線12分、三春駅からタクシー20分」ではいくら何でもバカげている。途中、三春ダム付近からの桜並木が満開で美しい。色の濃い枝垂れ桜がたくさん混じっていたし、桃の花も満開。その下で賢そうな茶色い雑種の犬が、思慮深げにこちらを眺めていたのも可愛らしかった。あとからの感想だが、この辺から滝桜まで、バスケットにパンと赤ワインとミネラルウォーターと焼いたソーセージを入れて、のんびり2時間ぐらいウォーキングでも出来れば、文句なしに楽しい休日が過ごせそうだった。


 で、滝桜である。空が曇っているせいか、昨夜の雨で赤い枝垂れ桜の色が褪せてしまったのか、北風が少なからず冷たかったせいか、立派な1本桜が満開で、おりからの風に枝垂れ桜の枝が一斉にゆらゆら揺らめき、巨大なかんざしのように美しく揺れるのだが、感動は思ったほどではない。「ああ、写真で見た通りだ」である。「おお、写真と全く同じだ」である。周囲のオジサンもオバサンも、みんな同じように口を開け、中に並んだ歯列を見せながら「わあ、写真とおんなじだ」とヨダレを垂らさんばかりになって喜んでいる。まさに写真と寸分の狂いもない。「写真そのまま」なのだが、色だけは写真にどうしても敵わない。褪せている。これは写真を修正した人の責任だろうし、雑誌や新聞や案内書がいけないだろう。どんなものでも実際以上によく見せれば、結局はホンモノが可哀想である。


 桜のまわりをのんびり一周して、雑誌の写真のことを忘れて眺めるうちに、最初の失望はだんだん消えていった。桜の周囲でこれも満開の菜の花の中に置けば、どこまでもなだらかな阿武隈山地の、名もない山々を背景にして眺めると、滝桜のおおらかな本来の美しさがだんだんわかってくる。30万人集まるとか言って、ライトアップしたり、写真を綺麗に修正したり、そういういろんなお化粧をして飾り立てれば、樹齢1000年の年老いた大木が咲かせる穏やかな美しさはわからなくなってしまうのである。

 

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(菜の花と阿武隈山地と滝桜)


 雨模様になってきたから、予定より早く郡山に戻って、14時前に昼飯にした。郡山は人口30万以上の大都市だが、少なくとも今日の駅前は閑散として、雨まじりの北風が吹き荒れるシャッター街では、午後2時過ぎて昼飯を食べさせる店が見当たらない。結局入ったのは駅ビル「S-パル」内のチェーンのトンカツ屋。仙台でもそうだが、この「S-パル」なるものが東北地方では驚くほど幅を利かせていて、遠くからの来客でも「S-パル」に案内して飯を食べさせることになっている。注文したのは1500円の定食と、日本酒2本。昼からこんなに酒ばかり飲む客は珍しいのだろう、中年の女性店員は「おさけ、ですか!?」と福島訛りで聞き返し、こちらは当然のように「はい、お酒。1本はお燗で、もう1本は冷やで」と注文して、あっという間にお銚子2本空にしてしまった。


 「何で郡山まで来てトンカツなんだ」と自問しながら勢いよく食いついたトンカツは、残念ながら、中年男が完食できるようなものではなかった。要するに「油のカタマリ」、それもこれまでの長い人生で経験したこともないほどの「油爆弾」、油をパン粉に「これでもか」というほど染み込ませて中年男の胃袋を攻撃しようと思えば、まあこんなものができあがるかもしれない。


 攻撃に対抗するためには、油のタッブリ染み込んだパン粉のコロモを箸で徹底的に削ぎ落としてしまうしかない。その結果すっかり痩せ細ったカツや海老フライを口に入れると、それでもしぶとく絡みついたままのパン粉がバリバリ激しい音を立て、噛みしめるとコロモから大量の油がジュワジュワ滲み出してくる。それほどの油まみれにして、しかもその油がヤケドするほどに熱い。おお、これはもっとずっと若い人たちの食べ物である。「これ以上食べ続けるのは、危険」と判断して、大皿に5つ盛られたカツのうち1コ(カニクリームコロッケだったが)は食べ残し、オマケの茶碗蒸しに癒される。胃の中は、パン粉から無限に滲み出してくる油で「クマ殺し油地獄」の風情。こんなことなら、通路一本はさんだ向こう側の蕎麦屋に入るんだった。

 

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(滝桜周辺で発見)


 納得がいかないので、新幹線構内の立ち食い蕎麦屋で350円のかけそばを注文。ネギだらけの熱いかけそばをかき込み、その熱い出汁で胃の中の油を洗い流す作戦に出る。昨年の3月、福島と郡山で講演会があって、福島の「辰巳屋」という老舗ホテルのワインセラーで赤ワイン1本を飲んでいるうちに風邪を引き、声が出なくなった。翌朝「ただ単に風邪薬を飲むためだけ」に郡山駅のこの立ち食い蕎麦で月見そばを食べた。それだけのことでも、たいへん懐かしい蕎麦屋である。あの時も鉄の肉体というか、月見そばにパブロン(正しくはパブロンエース)3錠で風邪は簡単に治り、郡山の講演会には全く支障がなかった。


 しかしそれでも、今日のトンカツの油は流れてくれない。さらにキオスクで黒ウーロン茶。それでもまだ納得がいかなくて、カップの日本酒1本。こうして考えられる対策をすべて遂行、帰りの新幹線は宇都宮の前から熟睡。1時間後、赤羽、尾久の付近を通過中に目覚めてみると、さすがに油は気持ちよく流れ去り、東京は初夏の空に爽快な北風が流れて、爽快な気分をさらに高めてくれるのであった。

1E(Cd) THE BEST OF JAMES INGRAM
2E(Cd) Peabo Bryson:UNCONDITIONAL LOVE
3E(Cd) Four Play:FOUR PLAY
4E(Cd) Deni Hines:IMAGINATION
5E(Cd) Sugar Babe:SONGS
6E(Cd) George Benson:TWICE THE LOVE
7E(Cd) George Benson:THAT’S RIGHT
10D(DvMv) UNFAITHFUL
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