Tue 090414 名倉教授の事件について 2次被害防止こそ急務 当局者の対応ぶりについて | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 090414 名倉教授の事件について 2次被害防止こそ急務 当局者の対応ぶりについて

 4月15日、福島まで「三春の滝桜」を見に行くことにした。朝9時すぎに代々木上原を出て、千代田線で二重橋前に向かう。9時頃の小田急線はまだラッシュの時間帯で、ほぼ2分おきに次々と電車が入ってくる。急行・快速急行・各駅停車が入り乱れるように到着、そこへ千代田線直通の「多摩急行」などというものも参戦して、たいへんな活気であり、またたいへんな混雑である。それに対して千代田線の電車はこの時間帯、6分に1本程度の運行。次々に小田急線から吐き出される通勤客が、向かいのホームの千代田線に猛烈な勢いで駆け込むのであるが、千代田線の電車が満員になっても、全然発車する様子はない、「余裕」の表情である。


 乗客も実に落ち着いたものであって、あれだけの勢いで殺到してきた乗客たちは、15秒もたたないうちに自分の位置をしっかり確保して、既に文庫本を読み始めている。オジさんも、オバさんも、まさに「通勤のベテラン」の落ち着きであって、大学卒業直後のホヤホヤの新入社員諸君など、まず彼らのマネをすることから始めるべきである。すぐに文庫本を開いて集中しはじめ、時にメールをチェックし、メールの返事を送信し、すぐにまた読書に耽る。こういう充実した朝を過ごしているなら、会社でも役所でも見事な働きぶりだろうと確信できる。

 

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(行っといで)


 ただ、やはりこの混雑は、少なくとも外部者の目から見れば異様である。2分に1本満員電車が到着するというのでは、まあいろいろ問題が発生しても仕方がないだろう。痴漢冤罪の裁判で防衛医大の名倉教授に3:2の僅差で無罪判決が出たばかりであるが、TVのニュースを見ていた限りでは、事件の現場は隣りの東北沢駅らしい。近所の北沢警察署も画面に映っていた。この事件では、もちろんまず、冤罪のせいで地位も名誉も収入も全て失いかけた教授が被害者なのであるが、それでは被害を訴えた女子高校生が「ウソの証言をしたのか」「ある意味の加害者なのか」と言えば、これもまたもちろんそんなことは一切ないのであって、彼女こそもともとの被害者なのだし、この事件で彼女が受けた心理的苦痛は決して消えてなくなることがない。そのことも、もっと声を大きくして言うべきである。「最高裁まで争う」ということになれば、事件の被害者である彼女がその事件の詳細を、公開の場で、何度繰り返して語ることになるか、その精神的負担がどのぐらいのものであるか、一度マスコミは伝えたほうがいいし、我々も彼女の受けた心の傷の大きさを思って、せめて一度は呆然とすべきなのである。


 その朝に「どんなことをされたのか」、警察ですでに一度打ち明けた被害の経過を、全く同じことを、「まちがいではありませんか」「あなたにも原因があったのではありませんか」「何故また同じ車両に乗ったのですか」「それはどうしてですか」「あなたの言うことには不明確な点があります」、場合によっては見下した態度でニヤニヤされながら「辻褄があわないねえ」、その他、まるで加害者であるかのような疑いの視線を浴びながら、彼女は事件から5年の間、第1審、第2審、最高裁、おそらくは100回近く、またはそれ以上、おそらくは激しく泣きじゃくりながら話し続けたのである。


 何度でも同じような面接が行われ、ほとんど寸分違わない書類を何通も作成し、その度に「本当ですか」「この間の証言と食いちがいがあります」「思い違いではないのですか」とキツい口調で繰り返され、その度に悔しさが込み上げて、おそらく3~4日は安らかに眠ることさえできず、次に同じような面談の通知が来れば、面談の1週間前から仕事も勉強も手がつかず、それでもじっと耐えなければならない。面接のほとんどを暗記し、どの場面で何を聞かれ、どこで辻褄が合わないか、どう突っ込まれるか、次にどんな質問が浴びせられるか、どう答えれば面接の相手がどう聞いてくるか、いやになるほど全部わかっている面接が、延々と繰り返されるのである。

 

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(ストライプ)


 それでも訴えを取り下げなかった彼女の信念は、想像を絶するほどものであり、その信念の強さを考えるとき、私などには決して彼女が軽い気持ちで作り話をでっち上げたのではないことが痛いほどわかる。真の犯人は捕まらず、おそらく昨日も今日も平気な顔で同じような行動を繰り返し、その被害者が彼(彼女ということもありうるだろうが)を捕らえ訴えようとすれば、犯行の被害の詳細を30回も40回も繰り返し人に述べなければならず、被害者がそういう場で受ける2次被害の大きさははかりしれないのである。


 むしろこういう2次被害のほうが、そもそもの最初の被害より問題視されてしかるべきなのだ。「痴漢被害は当事者双方の水掛け論になるばかり」だ、とマスコミが言うのは正しい。よく言われるように「証拠は被害者の申立てだけ、訴えられたほうも目撃者の証言を得にくい」解決困難な事件になるのは確実だ。しかし2次被害について言うなら、警察や司法関係者がしっかり対策をとれば必ず防止できるのである。キチンとした2次被害防止策をとらなかった当局の責任もあり、2次被害の大きさに目を向けさせないできたマスコミの責任もある。痴漢・セクシュアルハラスメントの類いを防止する努力以上に、自らの襟を正して「2次被害防止」を心がけることから始めるべきなのではないか、というのが私の意見である。


 こういうことを当局側に指摘すると「いや、マニュアルは整えてありますよ」「仕組み作りには努力してきました」「すでにシステムはしっかりしています」という回答が返ってくるのが普通である。しかし残念ながら、これは痴漢事件や冤罪やハラスメントに限らず、およそ考えられるあらゆる被害において、被害を受けたものにとってはその「システム」「仕組み」「マニュアル」の存在自体が2次被害の一部分なのであって、そういうものを扱う当局者の「驚いた顔」「意外そうな表情」「システムはあるんだから文句を言われたくないという態度」こそ、最も腹立たしいものの1つなのだ。「被害者の人権を守るシステムは整備している」などというのは、殆どは当局側の言い訳、または当局側のためのセーフティーネットに過ぎない。その「システム」なるものの担当者は強い発言力を持たない非常勤職員であり、「ちょっとした慰め役」でしかないことが多すぎるのである。何より大切なのは、まず無限の優しさだと思うのだが、残念なことに、それを具体化しようとする意志が明らかに欠けているのだ。

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