Tue 090331 都電荒川線で町屋から王子へ 都電の現状と昔の思い出 飛鳥山の桜 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 090331 都電荒川線で町屋から王子へ 都電の現状と昔の思い出 飛鳥山の桜

 東京は先月20日過ぎにもう桜が咲き始めてしまって、これでは入社式にも入学式にも間に合いそうにない。入学式は葉桜の中だろうし、花見の場所取りさえないのでは入社式直後の新入社員にやらせる仕事がなくて困るだろう、そう考えて要らない心配をした。人がみな杞憂に悩まされれば、天がちゃんと考えて杞憂を取り除いてくれるものなのである。3月25日に大いに酔っ払って、大いに機嫌よく帰路についた頃は、東京はもう4月中旬から下旬の陽気で、桜はすぐに満開になり、すぐに散ってしまって花見のヒマもなさそうな勢いだったのだ。それが今日になっても(これを書いている段階で4月4日の深夜である)、まだ満開になっていないらしい。ネット情報でもマスコミ情報でも4月3日の段階で「東京は満開」になったのだが、実際に花見に出かけた人たちからの情報では、千鳥が渕はまだ7分咲き程度、満開は5日の日曜日かもしれない、そうなれば千鳥が渕あたりの人出は常軌を逸したものになるかもだろう、そういうことである。


 実際、今年の桜の長寿ぶりは大したものである。咲き始めからもう2週間が経過しているのだ。3月25日あたりから突然冷え込んで、真冬の防寒具をまた引っぱり出さなければならないほどに寒い日が続いたお蔭で、桜を楽しむという話になれば、これほど長期間花がもってくれるのは嬉しいことである。桜は、あっという間に満開になって、いったん満開になったら潔く散ってしまうのが日本人の美学だったはずだが、盛りが長過ぎて色あせ、長過ぎて飽きられ、不承不承にのろのろ散っていく桜も、20年に一度、100年に一度なら珍しくていいかもしれない。麻生政権みたいなものである。風が吹いて、雨が降って、フラフラになって、ヨレヨレになって、それでもまだ立派に桜である。近年、東京の桜はすっかり白っぽく変色してしまって、昔の濃いピンクの鮮やかな桜というものをめっきり見なくなってしまったが、それでも愛でるのが人情というものだ。もう一度お花見に行って、それですっぱり忘れてあげるのが一番いいかもしれない。

 

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(飛鳥山の桜)


 写真は、全て3月30日頃のものだから、すでに1週間が経過しようとしている。この桜が今でも満開になっていないのだから驚きである。昼過ぎに浮かれて家を出て、代々木上原から町屋まで千代田線に揺られ、町屋で都電荒川線に乗り換え、王子の飛鳥山に向かった。都電に乗りたかったのである。春のうらうらしている昼下がりなら、飛鳥山の桜には都電に揺られて行くべきであって、トイレの水を河に垂れ流していたJR王子駅なんかを利用するのは絶対にイヤである。


 都電は、予想外の大混雑。三ノ輪橋からやってくる都電が、町屋ですでに満員である。乗客はみんな高齢者だから、高齢者どうし、身体の悪いおばあちゃんどうしおじいちゃんどうしが席を譲り合っている状態で、20年30年後の高齢化社会を先取りしたような可愛らしくも悲しい風景である。どうも様子が昔と違ってきているように思う。私が都電を利用していたのは、もう20年以上前のことだが、あの頃の都電はこんなひどい混雑ではなかった。

 

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(飛鳥山駅付近の都電早稲田行き)


 松戸の下宿「松和荘」から早稲田大学に通っていた頃、松戸からの常磐線快速を日暮里で乗り換え、山手線を大塚で降りて、大塚から早稲田まで都電を利用していた一時期があった。わかっていない友人たちは「都電で通学」ということそれ自体を無邪気に非難し、「暢気でいいよな、就職する気のないヤツは」といういかにも興味のなさそうな態度でいたものである。しかし、都電は乗ったことがない人には予想もつかないぐらい快適で、他のルートをとるよりずっと早く早稲田に到着するのだ。ついでにいうと、大学から都電早稲田駅までの飲食店街の利用も目的だった。大隈通り「浅野屋」の蕎麦については今年1月にブログで書いたが、「しのぶ」「くにへい」の名門2軒がその先にあって、「水っぽい酒、まずい焼き鳥」の看板の「くにへい」も今はもうやめてしまったらしいけれども、「帰りに一杯」という話になれば、都電利用の方がずっと便利だったのである。


 特に沿線の雰囲気がいい。鬼子母神や雑司ヶ谷あたりでは、本当に民家の軒下スレスレを走るのだったし、面影橋で直角に左折して早稲田に向かう神田川の橋にも風情があった。当時の都電はガラガラとは言わないまでも、すいていることはすいていて、立っている人がいることは稀。たいていは座席がたくさんあいていたから、特に春先の帰り道には、大塚までの車窓をのんびり楽しみながら帰ったものだった。

 

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(王子駅前、ラーメンの「みのめんた」)


 だから今日の都電の混雑ぶりには一驚した。どの駅でもたくさんのおじいちゃんおばあちゃんが押し合いへし合いしながらバラバラ乗り込んできて、朝の山手線のような混雑。別にこの電車が極端に遅れてしまったとか、ついさっきまで運転を見合わせていたとか、人身事故とか、そういうJRみたいな話では全くないのだ。それでも客はどんどん詰め込まれて、王子駅前でその大半が降りるまで、昔ののんびりした面影は全くない。このあたりの住民の足として定着しすぎたのか、この地域に都電を利用しようと思う高齢者が増加したのか、それともお花見で大勢が一挙に飛鳥山に押し寄せるのか。その辺のことはよくわからないが、王子でほとんどの客が降りたところをみると、少なくとも花見のせいでの混雑ではなかったようである。

 

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(王子駅から飛鳥山を見上げる。手前が飛鳥山下の飲食店街)


 飛鳥山の桜は、(3月30日当時)まだ3分から5分咲き。花見客も拍子抜けした感じで、まあそれでも夜に備えてたった一人で場所取りをしている若者と、桜なんかどうでもいいから午後2時の段階でデカイ箱パックの焼酎に真っ赤になって酔いしれているオジサン集団。あとはオバサマ&幼稚園児の大集団が目につく程度。つまらないから、飛鳥山を登って、すぐに裏の階段を降りて、王子駅裏の「戦後のどさくさ」そのまま、あるいは戦前から綿々と続いてきた「歴史的町並み」の保存の対象とでもいうようなたいへんな飲屋街の裏をとおって、王子駅へ。こういう場所にトイレの汚水を40年間垂れ流し続け、住民の苦情も無視し続けたのだから、つくづくひどい会社であることを実感する。午後2時半、王子から上野に回って、上野の花と酔っ払いたちの様子を見て来ようと決めた。

 

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(王子駅前、飛鳥山下の飲食店街)


         
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