Sun 090315 鉄壁、まさに塗り壁の如し・JRとの攻防 ホテルオークラ神戸は素晴らしかった | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 090315 鉄壁、まさに塗り壁の如し・JRとの攻防 ホテルオークラ神戸は素晴らしかった

 3月13日、新神戸駅で、JRチケットを何枚か払い戻さなければならなくなった。チケットはあくまでプライベートなチケットで、今回の講演旅行とは何の関係もない。JR東日本の窓口で、自分で購入したチケットである。ところが、ここでトラブル。窓口の女性職員が、実に無礼な態度でニヤニヤ笑いながら「クレジットカードで購入したチケットは、簡単には払い戻しが出来ない」と言う。買ったのは東京駅のJR東日本の窓口。しかし新神戸はJR西日本であって、法律上は別法人である。別法人の窓口で、クレジットカードで購入したチケットの払い戻しは、不可能。「だから、JR東日本の窓口に出向いて、そこでクレジットカードを提示してほしい」というのである。


 職員の態度もそうだが、「法律的にOKなら、何でも許されるだろう」という制度そのものにも、納得がいかない。クレジットカードでチケットを購入する時には、「JR西日本の窓口では払い戻しは出来ません」という注意は一切喚起されないのだ。ということは、例えばJR北海道の窓口でクレジットカードを使ってチケットを購入した九州の人が、九州に帰ってからチケットが不要になり、JR九州の窓口に出かけて払い戻しを受けようとすると、窓口の職員がニヤニヤ笑いながら「これはJR北海道の窓口で購入したもの。北海道まで戻って、そこで払い戻しを受けていただくしか方法はありませんねえ」ということになる。購入時に注意を喚起されるなら、まだ納得がいく。しかしチケットの裏面にごく目立たない文字で「クレジットカードで購入すると、払い戻しなどに制限がある可能性がある」と印刷されているだけだ。決して「購入したJR会社でしか払い戻しはできません」とは明示されていないのだ。

 

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(不満。クマよ、お前はいつ帰る?)


 もともとJR7社というのは、日本国有鉄道という会社を7つに分割して巨額の赤字を税金で救済するために発足したもの。制度的にも精神的にも、一体である。少なくとも乗客の側では、別々の法人とは認識していない。クレジットカードで支払ったチケットは、支払った会社窓口でしか精算できないというごく基本的なことすら明示しないで、それで済まされるものではないし、そういう制度の不備を納税者が放置する訳にもいかないだろう。我々は日本人で日本語が通じるからいいが、これがもし外国のお客様で、日本語が理解できない場合には、日本の恥にもなりかねない。こういう複雑な事情を英語でちゃんと外国人の利用客に説明できる職員がいない場合には「日本では、クレジットカードで決済すると、キチンと精算してもらえない国なのだ」という評判さえ広がってしまうのである。早速、責任者を呼んで、事態の説明と、改善の必要性を訴えることにした。


 ところが、こういう作業も、最近の日本ではなかなか思うように進行しないのである。旧国鉄というところは、もともとからしてそうだったのだが、特に「JR西日本」はこういう場合の対応が悪い。「係長」という人間が出てきたが、ほとんど理解力を持たない、というより、「理解してはならない」と必死で努力しているようにさえ見えるのだ。これではクレジットカードが安心して使えないではないか、制度が間違っているのだから改善に努めるのが公共性の高い企業の責務ではないか、もちろん係長レベルでキチンとした回答などできる訳がないのはわかっている、だからキチンとした回答ができる人間に話をさせてほしい。


 そういうことを30分近く話して、ついに「JR西日本お客様センター」という部署があるのを聞き出すのに成功。「その部署の誰に電話をすればいいのか」を尋ねると、何と「オペレーターが出るから、オペレーターと話してほしい」との回答である。これにはたまらず噴き出して、一瞬だけ場は和んだのだが、センターだか何だかの責任者の名前を聞き出すのに、さらにもう5~6分は経過した。


 そんなこんなで、せっかく高揚していた気分はすっかり台無しになって、15時「ホテルオークラ神戸」に到着。掛け値なしに言うが、このホテルは素晴らしかった。神戸に泊まるなら、是非ともこのホテルを試してみるべきである。コンシェルジュの席に座る「おお、いかにもいかにもアメリカ人!!」というブロンドのお姉さんの日本語が上手で、かつ対応の親切なことに感嘆。「飲み放題プラン」で入ったメインバーのバーテンダーたちの対応の軽妙なことにも感嘆。「飲み放題プラン」などというものを利用してバーに入って、楽しい気分で部屋に帰れることなんか滅多にないから、夜の日本庭園に降りしきる春の豪雨を眺めながら、ウィスキーをダブルで7杯飲み干し、白ワインもさらに数杯重ねて、すっかり上機嫌に戻った。まあ、問題と言えば、「ウィスキー」というのがいったいどんなシロモノなのか、とにかく「ウィスキー」であること以外は何一つわからないという点ぐらいだった。大学の卒業式シーズンで華やかな雰囲気のホテルロビーも「さすが神戸」というオシャレな雰囲気。東京のホテルオークラと何から何までそっくりに作られているのもまた面白かった。

 

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(不満。ヒモで遊ぶのにも、もう飽きた。床の上にあるのが、そのヒモ)


 しかし「JR西日本お客様センター」だけは、とにかく許しがたい組織である。というか、JR西日本の全体がそうなのである。苦情の電話であっても、「NTT何とかダイヤル」でお客の費用負担。20秒につき10円かかるシステムの中で苦情を言わなければならない。対応は「お客様のご意見は、責任をもって上に上げる」の一点張りで、それ以上何を聞こうとしても、また何を訴えようとしても、「それはお客様にはお知らせできない」。20分ほど話していたが、要するに「変なクレーマーがしつこくしてきたら、とにかく『責任をもって上に上げる』だけ言って、それ以上のことは一切言わずに何とか逃げ切ること」という社内マニュアルが透けて見えるような対応。こんな組織を放置すること自体が、関西全体の名折れなのではないか、心の温かい関西の人間として誇りを持つ人は是非団結して、JR西日本の組織改善に立ち上がるべきなのではないか。福知山線脱線事故の後、遺族などへの対応であれほど不満が噴出したのもまさに頷ける、最低最悪の対応であることは間違いなかった。


 20秒に10円で20分、600円もかけて懸命に組織の改善を訴えた結果、得られた回答はただ一つ。「お客様の貴重なご意見を経営に反映させるべく、ご意見は上に上げさせていただきます」。その「上」とは一体どんな組織で、どんなふうに反映させるのか、その程度のことさえ全く知らされないままに、空しく電話を切らなければならなかった。関西経済が不調なのは、要するにこういうところが原因なのではなかろうか。
 

 こういうふうで、怒り心頭に発して手もワナワナ震え、怒りを鎮めようとメインバーに向かい「飲み放題プラン」でウィスキーダブルをロックで7杯飲み干し、さらにルームサービスで安い白ワインをボトル1本注文し、気がつけばソファで居眠りして朝4時である。MORO大臣ではあるまいし、原稿を書いて費やすはずの大事な一夜は、雨の神戸港の夜景とともに、春の嵐の中に消えてしまった。