Fri090306 楽しかった北見講演会 受験直後の中3&高3「絶対笑わないぞ」という高校の先生 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri090306 楽しかった北見講演会 受験直後の中3&高3「絶対笑わないぞ」という高校の先生

 前置きばかり長くなって誠に申し訳なかったが、北見での講演会は「北見東急イン」5階の結婚式会場で、19時10分から20時50分まで。そのあとにサイン会が30分ほど、写真撮影その他が10分ほど、最終的な撤収まで入れて、22時頃までに全てが無事終了。出席者200名強。高校入試を終えたばかりの中3生が50名ほど加わったり、ご父母や高校の先生方も10数名参加されたりで、壇上から見ても年齢層は多彩である。中3生の集団はブルーのジャージ(おそらく制服の一種なのだろうが)を着て、みんな会場後方に陣取ったから、私から遠い向こう側は、驚くほどに若々しい。


 今夜は、受験がすべて終わって「発表を待つばかり」という高3生たちも来ている。彼らは、その落ち着いた表情を見れば、すぐに見分けがつく。やはり「受験は人を成長させる」のだ。特に受験終盤、年が明けて、センター試験が終わって、いろいろイヤなことや苦しい決断や泣きそうな事件が次々にあって、その1~2ヶ月の成長ぶりには著しいものがある。残念ながら予備校講師というものは、そういう著しい成長の最中は彼らや彼女たちから離れて過ごす訳だから、その過程を目の当たりにすることはできない。


 しかし、大きな拍手とともに広い会場の中に入場して、壇上に上がって、最初に会場全体を見回せば「おお、あそことあそこに受験を終えたばかりのヤツが座っているな」とすぐにわかる。それほどに、1年2年後輩の高校生諸君とは表情が違って、試験がうまくいったかいかなかったかにかかわらず、この上なく大人っぽい柔和な笑顔を浮かべて待っていてくれる。第一、こんな時期にこんな講師の講演会を聴きにくるだけの余裕があれば、ちゃんと第1志望に合格しているに決まっている。


 先生方やご父母は、完全にばらけた状態で高校生の合間合間に、年輪を刻んだ難しいお顔がチラチラとのぞいている。もっとも、私の講演を聴いて一番先に笑い転げるのは、生徒たちよりもまずご父母であり、次に先生方だから、最初のうちの難しい顔はアッというまに消えてしまう。「予備校講師なんかのフザけた話」なのかもしれないが、何しろ世代がほぼ完全に重なりあっている。受験生の世代が知らない話、例えば文化放送の「大学受験ラジオ講座」の話なんかでも、思いっきり通じあえてしまうので、楽しいことは間違いないのだ。

 

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(北見講演会。会場の広大さがわかる1枚)


 今日は前から5列目、私から向かって中央左寄りに、グレーのスーツ姿の(おそらくは)高校の先生がいらっしゃって、開始30分ぐらいまでは「絶対に表情を緩めてなるものか、絶対笑ってなんかやらないぞ」という決意を固めておられる様子だった。冒頭の「つかみ」で飲み屋の話や自分のお酒好きの話なんかがちょっと出てくるあたりでは、「けしからん、許しがたい」という渋いお顔がさらにさらに渋く変化して、相当お怒りのご様子。田中眞紀子が出て、麻生太郎が出て、中川昭一が出て、すでに会場は爆笑になっているのに、お一人だけ「相手にならん」と苦虫を噛みつぶしていらっしゃる。私が一番好きな聞き手は、こういう方である。「では、勝負を挑もうか」ということに決め、こういう方が片方のえくぼでニヤリとでもなされば、まあそれで勝ちと決める。


 掲載した写真でもわかるが、会場は結婚式会場としてもかなり巨大な空間で、この巨大な空間にホワイトボード2枚では、マジメに英語の授業を展開するのは無理である。断片的に面白い問題をとりあげて軽く英語の説明もするが、何かまとまった文法事項とか長文読解とか、そういうことをやるのは講師もつらいが、何よりも聞く側が耐えられないはずだ。結婚式場の薄暗いシャンデリアの照明では、テキストにするプリントの小さな文字だって見えにくい。私の驚くほどキレイな文字や、驚異的に見やすい板書であっても、オペラグラスでもなければホワイトボードにマーカーの文字はよくは見えないのだ。さっきホテルから北見の街を見おろして、「高校生たちのやる気をちょっとでも高められたら素晴らしい」、そう考えたことを実行に移して、英語の授業よりも、徹底的にやる気を高める話をしようと決めた。


 この辺は私の適応能力の高さであって、会場で聴衆の様子や会場の環境を見てから、その場で話す内容をいくらでも調整できるのである。しかも3月1日の「小倉・中成功」の時の反省を踏まえて、ミーティングもキチンとしたし、塾長先生からも非常にわかりやすい出席者名簿をいただいてあったから、その場での調整もスムーズ。爆笑の頻度は時間が経過するにつれてどんどんあがり、最初「面白すぎる」ことに面喰らい、「『先生の話』でこんなに笑っていいの?」という緊張が残っていた中3の諸君も、最後は「もう、笑いすぎて疲れた」「これ以上笑うと、死んじゃうかも」というぐらいにヨレヨレになって、予定の時間がきた。例のグレーのスーツの先生も、正直言って「そんなに簡単に陥落されたら、こっちがガッカリしちゃう」というぐらい、優しく陥落してくださって、最初は顔を真っ赤にし背中を丸めて震わせているぐらいだったのが、ついに机に顔を伏せて激しく背中をぶるぶるさせておられた。

 

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(北見講演会。調子に乗りはじめたクマどん)


 では、大爆笑だったから大成功だったかといえば、私のハードルはもっとずっと高いところにあって、目標は「全員が走って帰ること」。WBCの試合があるから走って帰る、そういう走り方ではなくて、やる気が出すぎて、もう居ても立ってもいられなくなって、早く勉強したくて、早く力ずくの正統派の勉強を開始したくて、それで家まで走って帰ること。電車の中でさえ走っていること。父親や母親がクルマで迎えに来ても、とにかく居ても立ってもいられないわけだから、おとなしくクルマの中に座っていられなくなって、クルマの外に出て、クルマと競走して帰るぐらい、やる気が出てくることである。そして講演の最後には、本当に「走って帰る」「すぐに始める」「明日やろうは、馬鹿野郎」みたいな生徒が続出するのだ。冷たく醒めていて「バカじゃん」とか言って冷笑している生徒より、のりやすくてホントに走って帰るようなヤツらの方が、実際に成績も伸びるようである。


 こういうふうで、本来なら「全員走って帰る」はずだから、サイン会などという低俗なイベントなどやるべきではないのだが、この2週間ほど、余りの要望の高さに負けて、サイン会を実施している。こんなオジサンのサインをもらって何がどう嬉しいのかサッパリわからないが、もらった生徒たちは「ヤバくない?」「ヤバくない?」「チョー、ヤバいぜ」とか、妙に盛り上がって、それから実際に走って帰る。「カバンにサイン」「ケータイにサイン」など、「後悔するんじゃないか」と心配になるような要求にも応え、握手してくださいと言われれば握手もし、異様な盛り上がりにすっかり疲れきったクマどんは、早くビールが飲みたくて飲みたくて、係の人が気をきかせて持ってきてくれる水にもお茶にも手を付けずに、「よし、走って帰れ。今日明日だけで元に戻っちゃダメだぞ」と念ずるばかりである。最後に会場前でスタッフの皆さんを記念写真を撮った。昨年私の授業を受けていた大学生もスタッフとして参加、こういうのが一番嬉しいのだ。