Thu 090219 首都圏の夕方の荒々しい通勤ラッシュで心を痛める 2月19日府中講演会 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 090219 首都圏の夕方の荒々しい通勤ラッシュで心を痛める 2月19日府中講演会

 ブログ更新を5日間も怠け続けた理由には、首都圏での小規模講演会が連続した疲労もあったと思う。首都圏での講演会は19時開始。私は講演会開始より1時間前には会場に到着するようにしているから、18時到着をメドにして、17時過ぎに家を出る。すると、会場が神奈川とか埼玉とか千葉の場合、電車に乗り込むのは、通勤&通学ラッシュにピッタリぶつかる時間帯である。首都圏でも関西圏でも同じことだが、この10年のうちに通勤&通学ラッシュはそれ以前とは比較にもならないほど荒々しくなった。混雑それ自体は鉄道会社の努力のお蔭で数段改善されたのであるが、逆に人々の優しさに出会うことはほぼ期待できなくなってしまった。


 若いママがベビーカーを押して途方に暮れていても、誰一人手伝ってあげようとしないし、手伝ってもらえないことに慣れっこになったママたちも(仕方がないことだが)逆に荒々しく権利を主張して、ベビーカーを大混雑の中に堂々と押し込んで、周囲に詫びることもない。こちらが大きな荷物をかかえて恐縮していても、一切遠慮なしに「邪魔である」「迷惑である」と態度で主張して、オジサンもお兄さんも、ぐいぐいこっちに身体を押しつけてくる。一番荒々しいのは自動改札である。入場口から無理にでも出ようとする者、逆に、「出口」と表示されている方からわざわざ入っていこうとする者、わざと意地悪をして、相手が困惑するのを見て喜んでいるようである。向こうからドーンとぶつかってきて、「よけなかったのはそっちが悪い」というふうに舌打ちをする。


 昔はこういうとき「田舎者!!」という悪口雑言が、行きがけの駄賃のようにつきまとったものだが(Tue 090127参照)、今の首都圏では何しろ皆が田舎者だし、田舎者であることにそれなりのコンプレックスが残っているから、だれも「田舎者」という罵声を浴びせたりしない。ではそれがいいことかと言うと、「おかしんじゃね?」「オヤジ、キモぐね?」「邪魔ジャね?」というヒソヒソ笑いがくっついてくるから、実際に受ける心理的ダメージは昔より大きい。「あああ、こんな人たちの中で生活しているのか」、そういう絶望感が、特にその直後に講演会を控えている弱気なクマさんには、とても我慢できないほど悲しくて、思わず泣きそうになる。

 

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(2月19日・府中での講演会。盛り上がり始めたクマどん)


 別に威張るわけだが、このクマさんは見かけによらず繊細なので、エレベーターの中ではベビーカーを押すのを手伝ってあげるし、階段ではおばあちゃんやおじいちゃんの荷物を運んであげなければ気が済まないし、そういうことをパリでもニースでもロンドンでも、同じようにせずにはいられないタイプ。それなのに日本のおばあちゃんは、こちらが大きな荷物を引きずって入っていこうとする自動改札の入り口に、わざわざ小走りに駆け寄ってSUICAを叩き付け、「勝った!!」「やあい、田舎者。」という表情で通り過ぎるのである。東京大好き、日本大好きのサトイモさんは、悲しくて悲しくて、こういう街を出来るだけ見たくない。


 だから、首都圏の講演会で、やむを得ず夕方の通勤&通学ラッシュに遭遇すると、それだけで身体を壊しそうになる。夕方5時過ぎの電車に乗って、皆がトゲトゲして、視線も態度も極めて攻撃的になっている様子を見ると、もうダメなのである。ごく稀に優しさを最大限に発揮しているのは、40代から60代までのオバさんたちであるが、彼女たちの深い優しさがどんな対応を受けるかを見ていると、悲しみはいっそう大きくなる。優しさは遠巻きにされ、拒絶され、「おかしいんジャネ?」「めんどいんジャネ?」「ウザグね?」扱いを受け、「余計なことすんじゃねえぜ」と正面から言われればまだマシな方、「変な人間にアッチッタ」という態度ではねつけられる。それを見ながら、風邪はますますひどくなり、下痢バラはゲバラとなって、「革命でも起こさなければ日本はよくならない」「この際、秋田に帰ってナマハゲ革命を組織、一気に首都圏に攻めのぼる以外、この閉塞状況を打開できない」という結論に達し、講演会の冒頭の気持ちはおおいに荒々しくなるのである。

 

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(府中講演会。盛り上がる前のサトイモ君)


 だから、昨日の成田駅前講演会の帰り、成田の駅のホームで呼び止められて「もしかして今井先生ですか」などという経験はたいへん嬉しいのである。外出すれば1日に1回は昔の生徒に呼び止められるから、こういうのは別に珍しいことではないのだが、荒んだ気分の時には助けになってくれることこの上ない。ぜひ、路上でイモ類クマさんを見かけたら遠慮なく声をかけていただきたい。成田駅の彼は、一目見て30歳前後。10年以上前に代ゼミ新潟校でサテラインゼミを受けていた、その後、東京理科大学に進学して、今はエンジニアとして仕事をしている、今日偶然にお目にかかって10年前の感謝の気持ちを言えてよかった、そういうことであった。今回みたいにゲバラというかゲリバラ状態でなければ「どうですか、その辺で一杯?」と誘うところであるが、何しろ風邪で大惨事の危機を腹にかかえている状況、しかも成田から代々木上原は遠い。ちょうどいい時間帯だったにもかかわらず、「ちょっと一杯」は今回は見送りになった。


 2月19日は、府中の駅前で講演会。出席者80名弱。昨日の成田とほぼ同じようなぎゅぎゅう詰めの教室で、机もなく、椅子だけの生徒たちを相手に2時間たっぷり話をした。会場は府中駅前の雑居ビル。1・2・3階はTUTAYA。4階は日能研。日能研の警備のオジサンが旗をもって小学生の交通整理をしている横をすり抜けてエレベーターに乗り、古い雑居ビルの古いエレベーター独特の匂いをかぎながら5階につくと、見慣れた東進ハイスクールのエントランス。講演開始一時間前に到着して、打ち合わせをし、著書10冊にサインをして、19時に開始、21時終了。私はお腹が痛くてまだ本調子ではないが、その私から半径2~3mのところまで迫った位置まで詰め込まれながらも、生徒諸君はとにかく非常に熱心に聞いてくれた。周囲の吉祥寺・調布・国立・立川あたりに予備校文化が集中する中、そのすぐそばの府中の駅前でこれほど熱心な受講生をこんなに集めてくれた若いスタッフ諸君の努力に脱帽するばかりである。


 帰路、相変わらず風邪の熱のせいで寒気が止まらない。毎年、ちょうどこの時期にこういうお腹から来る風邪を引く。昨年は八王子校の帰り、激しい北西の季節風にさらされ、ガラガラの「準特急新宿行き」に長時間揺られ、同じような風邪を引いた。サトイモみたいな頭をして、意外なほどこのクマさんはデリケートに出来ているのであるが、その頑丈さの真骨頂は、ここから先には進まないこと、これ以上の激しい症状には決して陥らないこと。ここで食い止めていれば、まあ他人に迷惑をかけることはないのである。

1E(Cd) Gergiev & Kirov:TCHAIKOVSKY/SYMPHONY No.6
2E(Cd) Argerich, Chailly & RSO Berlin:
TCHAIKOVSKY/PIANO CONCERTO No.1
RACHMANINOV/PIANO CONCERTO No.3
3E(Cd) Gergiev & Kirov:RACHMANINOV/SYMPHONY No.2
13A(γ) 世界の文学5 ゲーテ:中央公論社
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