Tue 090210 安易な気持ちで浪人するな(3/4) 浪人生「スタバ組」、「人生を語り合う」 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 090210 安易な気持ちで浪人するな(3/4) 浪人生「スタバ組」、「人生を語り合う」

 これから先、4月初旬に至るまで、大手も中堅も日本中の予備校がそろって大広告合戦を繰り広げて「浪人生、おいでおいで」をやることになる。体験談の嵐、ダメだった自分が予備校で立ち直った、どうして自分が東大に入ったのかな、第1志望はゆずれない、攻める1年で攻めたら笑顔、目からウロコで奇跡が起きた、キミも伝説になれ、浪人バンザイ、そういうポスターや中吊り広告やテレビコマーシャルで責めたてられれば、「浪人するのも悪くない、じっくり1年取り組んでみるか」と考えるのも当然だし、横から「パパも応援しているぞ」「そうよ、ユウキちゃん、ママも味方よ」という美しい情景が日本中の家庭で描き出されるだろう。


 「東大特化校舎」「医学部受験生専用校舎」などというのも増えている。浪人する人の数はどんどん減っているから、予備校が生き残るにはそうやって「優秀な人は特別扱い」という宣伝をしないと経営できないのだ。「特別扱いしてもらう1年」「お客様扱いで甘えて過ごす1年」というものが青年の心に何を残すか、私なんかはそういうことも不安になる。しかし、特に心配なのは、むかし予備校のドル箱だった「私大文系志望者」たちである。予備校の私大文系クラスは、まさに激減の一途。「合格実績」にも余り掲載されないから、浪人生クラスの中でも「お荷物扱い」。「オレたちは、ゴミ扱いかよ」という不満と不安はどんどん募っていくのだ。


 そんな状況だからこそ、昨日も書いた通り(昨日からの続きです、前後の脈略がありますので、必ず昨日の分からお読みください)、もし「浪人覚悟」なら、「残り11ヶ月なんだから、1科目に2ヶ月しかかけられない」という現実を直視し、キチンとスケジュールを立てて、これから4月上旬までに数学か英語かどちらかを仕上げてしまうぐらいでなければならない。予備校の収録講座を利用するなら、英語の年間講座を5講座か6講座(90分授業で約150回分)の受講を4月上旬までに終え、もしその授業に「確認テスト」とか「修了判定テスト」とかがあったら(もしそれがなかったらそんな予備校はヤメた方がいいが)その全てに合格し、これから2ヶ月後(4月10日)に、両親に面と向かって「英語はほぼ完成」としっかり報告できるようでない限り、1年浪人しても結局今年と同じように、最後の最後で時間切れになってしまう可能性が高いのである。

 

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(よく考える)


 私が「安易に浪人するな」というのは、「不景気だから」「不況だから」などという理由ではない。むしろ不景気なら不景気なほど若者が元気を出して、「浪人してでも絶対あの志望校へ」と叫んで、全力で勉強してほしいことは確かなのである。だから、「不景気だから、浪人生の予備校は生徒数が激減するだろう」とかいう下らない話ではなくて、「4月10日までに1科目仕上げられない程度なら、どうせムダな1年になるぞ」「予備校講師の取り巻きやファンになって、その他の講師の悪口を言いながらムダで幼稚でイヤな記憶しか残らない1年を過ごすことになるぞ」ということなのだ。


 浪人生の予備校に多い生徒のタイプは、特定講師のファンになり、大ファンになり、取り巻きになって、他の講師の授業を「切って」しまい(「切る」とは「もう出るのをヤメる」こと。友達にもそう宣言して、仲間みんなでサボれる時間を増やすことを意味する予備校用語)、自習室ならまだいいが「スタバ」「タリーズ」「エクセルシール」など「カフェでまったり」する時間を大切にする生徒。友人たちにも盛んに「お前も切っちゃえよ」と説得するのが大好き。友人は似た者どうしが多いので、その説得に乗りやすい。「オレも切っちゃおうかな」で、スタバ組はどんどん膨れ上がる。


 美しい友情は、友人の絆をどんどん強固にし、彼らはやがて定期的に集まって(切った授業の時間だから、定期的に集まれるのだ)人生を語り合うようになる。自習室で勉強していると、10分もしないうちに親しい「切っちゃった仲間」が誘いに現れる。こうなると、自習室はもう待ち合わせ場所でしかない。「みんなスタバにいるぜ」「そんな授業の予習より、スタバで語らねえ?」「スタバで人生を語ろうぜ」である。スタバにいくカネがなくとも、最近の予備校にはカフェテリアその他「語る」ための場所が完備されているから、「語る」のに苦労することはない。

 

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(何も考えない)


 医学部志望者を始め、受験生には語るべき大きな夢がいくらでもあって盛り上がるから、「切った」授業の直後の時間の「1年ずっと出ることに決めた授業」のチャイムが鳴っても、授業に出る気が薄れてしまう。第1に、語っている方が楽しいし、何だか語っている夢や人生の方に大きな意義を感じ、今ここを立ち去って授業に出るのは、まるで夢を軽んじているように思える。第2に、これだけ語ることに盛り上がっている輪の中から自分だけ離れた場合(あんなに講師たちの悪口を楽しむ連中なのだから)、おそらく自分が同じような悪口や皮肉や悪口雑言の対象になるだろうことは容易に予測できるので、その意味でもやはり離れがたい。こうなると、もう昔の主婦の井戸端会議と同じである。情報交換と語りの場は、やがてアリ地獄と化し、出たい授業にも出られなくなって、志望校も夢もどんどん遠ざかっていく。


 6月を過ぎれば、教室に残って授業を受け続ける生徒たちの方が少数派になって、こちらも落ち着かない。「切っちゃった」生徒たちがドアの覗き窓から冷笑しながら覗き込んでいるのを気にしながら、それでも頑張って現代文の授業を受けていると、廊下の方から「まだ、ケッコ出てるじゃん」「ファンなんじゃね?」「6月にもなって現代文出てたら、ムダなんじゃね?」の声。講師はムクれている、外の人数は増える、チューターまでもが「そろそろ切る授業を増やさないと、消化不良になるよ」などと間違いこの上ないアドバイスをする。浪人生の予備校とは、そういう場所であって、精神の健康には余り好ましいとは言いがたい。そんなことで1年をムダにするより、例え第2志望でも第3志望でも、合格できた大学に入って、法学でも経済学でも物理学でも、さっさと専門的な勉強に取り組んだ方が、日本のためにも世界のためにもいいだろう、貢献できるだろう、そう思うのである。(さらに明日に続きます)

1E(Cd) Holliger & Brendel:SCHUMANN/WORKS FOR OBOE AND PIANO
2E(Cd) Indjic:SCHUMANN/FANTAISIESTÜCKE CARNAVAL
3E(Cd) Argerich:SCHUMANN/KINDERSZENEN
4E(Cd) Solti & Chicago:MAHLER/SYMPHONY No.1
7(DvMv) THE FALL OF THE ROMAN EMPIRE
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