Mon 090202 2月1日佐賀での講演会 佐賀の夜「菱娘」 佐賀からの帰途いろいろ | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 090202 2月1日佐賀での講演会 佐賀の夜「菱娘」 佐賀からの帰途いろいろ

 2月1日17時、講演会開始。出席者130名弱。佐賀の地域一番校を中心にして、これほど規模の小さい街で、よくこれだけたくさんの熱心な受講生を集めてくださったと思う。校舎スタッフにも、生徒中心で組織した実行委員の諸君にも大いに感謝する。予想した通り、体育館の中ではマイクの音響が悪く、音がひどく反響してしまったが、講演会冒頭の2~3分でそれがわかったので、いつもよりも話すスピードを落としてこれに対処。いつものスピードの80%程度まで緩めたから、反響していても聞き取れないことはなかっただろうし、むしろゆっくりした話し方にも味があって、返ってよかったかもしれない。ただし、さすがにスピードを緩めて話したことが響いて、講演会本体は5分延長することになってしまった。時間厳守が趣味の私としては少しだけ不満。ま、この程度はヨシとするしかないだろう。
 

 19時から、希望者の生徒諸君30名ぐらいとチューター10名ほどとで、反省会を兼ねた懇親会。大学生のチューターたちは、ほとんどが昔私の授業を受けていた諸君である。現在理学部に在籍中で数学の教師志望を明言してくれた女子学生は大いに頼もしかったし、懇親会の準備中にいろいろ話し合った経済学部在籍中の女子学生も、センター試験での成績急上昇について話してくれて(英語が1年で100点も上昇したというのだ)嬉しかった。九州は、生徒も大学生も元気でいい。こういう場で消極的になられてしまうとこちらが恐縮することになるのだが、とにかく九州人と話し合っていると、こちらがどこまでも元気になっていくような楽しさがある。

 

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(佐賀での講演会。体育館も、まあ満員になった)


 20時すぎから、ホテル2階のレストラン「楠」で、佐賀の職員の皆さんと打ち上げ。水草の菱(ヒシ)の実を材料に作ったという佐賀の焼酎「菱娘」を、昨日と同じようにロックで、しかし今日は少しだけ自重して7~8杯。「菱から作ったから菱娘」というネーミングはなかなか勇ましいぐらいに明快で、「桃から生まれた桃太郎」みたいである。おそらく企画会議では「菱から生まれた菱太郎」などというのも提案され、激論が戦わされた末に何とか「菱娘」という名前に落ち着いた、そういうところだろう。よく考えてみると「菱娘」という女の子がいたとしても、顔から何からみんな真四角そうで余り魅力に富んでいるとも言いがたいが、肝腎の味ということになれば、捨てがたいものがあった。夜10時前、昨日のこともあるから、さすがに今夜はここまでにしておこうということになった。


 翌日は佐賀から福岡に出て、福岡から帰京するというルート。「佐賀空港」というものもあるらしいが、何しろ便数が少ないし、ドル箱の羽田–福岡線と違って運賃の割引もほとんどない。だからわざわざJRの特急に乗って博多まで出て、博多から地下鉄に乗り換えて福岡空港まで行く、そういう遠回りをすることになる。こういうことも佐賀県としては屈辱だと思うし、私ならそれなりに怒って当局に談判に出かけるところなのだが、佐賀の人は大いにおおらかであって、タクシーの運転手さんも「九州はあったかくていいでしょ?」などと言ってのどかに笑っている。佐賀駅に向かうタクシーの窓から真っ昼間の佐賀市街を眺め、昭和の地方都市がそのままタイムカプセルで残されたような風景をみて、いろいろなことを納得し、「まあこれでいいのかね」とも思う。一昨年はこういう街の無名の公立高校(佐賀北高)が甲子園に出て、あっという間に優勝してしまったのだし、質実剛健のしっかりした実力を蓄えているなら、チャラチャラした豪華さもいらないし数えきれないほど次々と飛び立つ飛行機も必要ないのかもしれない。


 長崎からやってきた特急「白いかもめ」に乗って40分ほど。車両の真ん中にドアがあり、1車両を半分に区切って車室にしている。だから非常に狭苦しい、4畳半とか「6畳一間の学生下宿」とか、そういう雰囲気の車内に、夢のように大きな声で話し合う欧米人の男性2名がはまり込んでいた。内装は豪華だが、これほど狭苦しくてはなかなかくつろいだ気分にはなれない。長崎本線から鹿児島本線へ、昔のままの古い線路の上を「大丈夫?」と聞きたくなるほどに大きく揺れながら走って「白いかもめ」は博多まで疾走するのである。この激しい走りはカモメというよりむしろダチョウである。こんなにスピードを出して、事故につながらなければいいが、そう願うばかりだ。

 

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(佐賀講演会、逆アングル)


 昼過ぎ、福岡空港着。飛行機の時間まで1時間ほどあったから、クレジットカードを提示すれば無料で入れるラウンジで休む。「くつろぎのラウンジ TIME」という恥ずかしい名前がついている。ここに最後に来たのは、もう12年も前のことになる。駿台講師の最後の3年間は毎週金曜日が福岡校出張で、しょっちゅうこのラウンジを利用した。お土産にカラスミか明太子(楢崎というメーカーの完全無着色の明太子が好きだった)を買って、その袋をブラブラさせながらラウンジに入り、1時間のんびりしてから飛行機に乗り込むというのが当時の定番。無料でビールを1本飲めるし、余計な音楽など一切かかっていない、静かで、落ち着いて読書できるのが、このラウンジの良さであった。


 ところが、今日立ち寄ってみると状況は一変している。受付でいきなり「ビールですか、ソフトドリンクですか?」と無愛想に尋ねられる。無料ドリンクは一種類だけ、ビールかソフトドリンクか、その場で決めなければならない、というのだ。ま、うらうら暖かい九州を旅してきた後だから「ビール」。するとその場でビールの缶を1個、デンと音が出るような激しさで置かれ、グラスももらえず、ビール缶を片手に空席を探す。あまり「くつろぎのラウンジ」という感覚はない。「へえ、昼間からビールですか、そうですか」と叱られたような感じで、ションボリしながら寂しくビールをすする。しかも、オジサンたちの集団の話し声が異常にうるさい。そこいら中で延々とケータイで喋るオジサンも多い。その声がまた大きい。不況とか不景気とか「オジサンたちに元気がないな」と思っていたら、オジサンたちはこんなところで元気の無駄遣いをしていたのだ。


 保安検査場を通過するときに、会社からもらったチケットが2月3日搭乗用のものであることが判明。今日は2月2日であって、このチケットは使えない。おお、これがルフトハンザやアリタリアだったら、犯罪者扱いされ、セキュリティ係員に突き飛ばされるところである。もしアメリカの空港なら、非常ベルが鳴って、警備員が5人も10人も怒濤のように走ってきて、靴下からシャツからパンツまで脱がされ、カバンもとりあげられ、まさに「身ぐるみ剥がされる」ような思いをするかもしれない。恐怖、恐怖。


 しかしここが日本の素晴らしいところ。優しいANAのお姉さんが出てきて、「心の底からニッコリ」という優しさで、すぐに今日の搭乗券に取り替えてくれた。日本のマスコミで日本の批判ばかりするのを聞く時どうしてもムカついてしまうのは、こういう日本の素晴らしさや優しさを全く伝えようとしないからである。乗ったのはANAの1D。1人席である。通路をはさんで向こう側の窓側1Aには、自民党元副総裁・山崎拓氏が乗っている。見ないフリをしながら観察していたら、彼は羽田に着陸するまでに新聞5紙に一気に目を通していらっしゃった。まだまだ勉強熱心のようで、素晴らしいことである。

1E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré
:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 9/9
2E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 1/10
5D(DvMv) BREACH
10G(α):塩野七生:悪名高い皇帝たち(4):新潮文庫
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