Wed 090128 ウォーキングとジグザグおばさん 「ナイトウォーク」について 皇居付近の夜景

　毎日テレビで時代劇を見て怠けてばかりいるわけではない。テレビも全部イヤになって、原稿もパソコンも校正もみんなイヤになって、そうやって本当にウンザリした時には、「ナイトウォーク」に出て気分を晴らすことにしている。ナイトウォークとは、飲み会の前に２時間ほどするウォーキングのことである。走るのは疲れるし、こんな年齢のオジさんにジョギングはつらすぎるから、ごく自然に「ウォーキング」になる。「ナイト」なのは、朝早くから起きてウォーキングするのは面倒だし、とにかく冬型の気圧配置がキツくて寒すぎるせいである。NHK関東地区のローカルだと思うが、毎朝６時台の天気予報に出てくる「渕岡さん」という女性天気予報士の顔をみると、毎朝彼女が余りにも寒そう（コートにマフラーに手袋の完全装備で、可哀想にずっとNHK渋谷放送局の外に立たされているし、予報が雨の日はしっかりビニール傘を握らされている）なので、こちらも彼女を見るだけで寒くなって、とてもウォーキングどころではない。
 

　それに、朝はウォーキングフリークのおじいさんやおばあさんがたくさん猛スピードで歩いていて、ご近所の散歩道なのに気合いが入りすぎなのだ。「ジグザクおばさん」などというものにも遭遇する。全ての道を約10メートルずつ区切って左右に横断しながらジグザグに歩いていくのだ。「ジグザグ気どった」歩き方ということは水谷豊ファンに違いないが、あんまりそういうことをしていると自宅で眉間をドアにぶつけてケガしたりしかねないから、よく注意した方がいい（芸能ニュース参照）。こういう人たちが、やたら元気に「おはようございます」と声をかけてくれるのが、「ちょっと冬眠にウンザリして穴から出てきました」という感じで歩いている怠け者のクマさんには、それなりに気恥ずかしく、気分的にもそれなりに追いつめられるのである。

（弱肉強食　１）

　というわけで、「ナイトウォークでないと」というふざけた結果、というかNHK的な恥ずかしいギャグになる。オシャレな呼び方をしてはいるが、要するに、飲み会の前に、自宅近くから酒を飲む場所の近くまで歩くだけのことである。本当は参宮橋あたりから赤坂までぐらいがちょうどいいのだが、途中に通過する明治神宮が「日没閉門」だから、この季節のこのルートは無理。午後６時になっても夕陽の沈まない季節まで待たなければならない。

　今は、代々木上原から５分ほど電車に乗って、明治神宮前（要するに原宿、地下鉄ではなぜか素直に原宿と呼ばない。まあ東京メトロ側の事情もあるのだろうが）まで、そこから二重橋までウォーキング、というのが一番気に入っているルートである。原宿・青山・赤坂・三宅坂と歩いて、三宅坂から皇居を反時計回りに半周する。夕方を過ぎると皇居の周囲を走っている人が驚くほど多くて、少し身の危険を感じるぐらいだが、危険を感じるのは、薄闇の中にツキノワグマに似た黒い影がゆっくりと蠢いているのを見いだすランナー（またはジョガー）の皆さんも同じだろう。

　冬の夜の皇居周辺は、とにかく夜景がきれい。冷たい空気もよく澄んでいる。丸の内方面はこの10年ですっかり夜景の名所になったし（10年前は丸ビルも新丸ビルも大丸もオアゾもマンダリンオリエンタルも、１つもなかったのだ）、振り返れば赤坂方面の夜景を背景に国会議事堂が映える。まさかあそこで「総理、定額給付金、やめていただけませんか」とか「ブレている」「いや、ブレてない」とか、そういうことをネチネチやっているとは信じられない美しさだし、皇居のお堀にたくさんの明かりが映って、とにかく心洗われる風景である。

　夜になっても桜田門は開放されていて、桜田門を抜ければ、薄闇の中に二重橋を見ることもできる。広い皇居前広場はにはほとんど無人で静まり返っており、皇居前交番の警官に軽く頭を下げて薄闇をどこまでも歩いていけば、「これが本当に東京の真ん中か」という不思議な感覚に捉えられる。ロンドンやマドリードやNYやパリからやってきた観光客にこのルートを歩いてもらえば、ほぼ例外なく日本の素晴らしさを納得してもらえそうである。数日前、東京駅方面からやってきたタクシーが（もちろん警察官の検問の後）皇居の中に入っていくところを目撃したが、あれはどういう客なのか、何の用件なのか、タクシーの運転手さんはどれほど高揚した気分で、それをどれほど興奮して同僚に伝えるだろうか、そういうことを考えただけで十分幸せな気持ちになった。

　こうやって最終的には酒を飲む場所にたどり着くのである。それはだいたい丸ビルか新丸ビルで、特に新丸ビルの繁盛ぶりをみると「これで本当に不況なの？」と店の人たちに聞きたくなるほど、どの店も満席である。おでん屋「こなから」は、いつ行ってみても満席。テーブルが半分店の外にはみ出している、しかもトイレの真ん前の、あまり環境の良くない「ドイツ風居酒屋」も、まあ満席。店に入るたびに「Danke!!」と従業員全員がドイツ語で叫ぶのが難点の、あまり居心地の良くない居酒屋でさえこれである。まあ、空席があるのは「インド料理店」ぐらい。会社帰りに同僚と一杯やるのに「カレーはどうだ？」とも言いにくいだろうから、ここに空席があるのは仕方ないにしても、蕎麦屋もワインバーもみんな満員、大盛況である。

（弱肉強食　２）

　28日の夕刊によれば、財務省の「全国財務局長会議」なるものが開催されて「全国どの地域でも景況感悪化との報告があった」らしく、テレビニュースのフィルムでも財務省の役人たちが盛んにペンを走らせてメモをとるシーンが映し出されて、会議の結論として「全国規模で景気は悪化している」という、会議をやる前から誰でもわかっていた結論が出されたらしいのだが、こういう会議こそ税金のムダづかいである。ついでに、こういう会議でテーブルごとに置かれているペットボトルのお茶やミネラルウォーターも許しがたい税金のムダづかいだと思うが、わざわざ福岡や札幌や仙台から新幹線グリーン車や飛行機のスーパーシートをつかい、空港や駅までは公用車をつかい運転手をつかって東京まで出てきて、かつ高級ホテルに宿泊しホテル代は税金から払い、「地方景況感の急激な低下」などという余りにもわかりきった報告をするだけなら、こういう会議は一切ヤメにすべきである。

　電話かメールで済む程度（それすら必要ないように思うが）のことを報告させるのに会議を招集するのは、まさに税金の無駄遣い以外、何物でもない。まさか今の状況で、どこかの地域の財務局長がスックと起立して、ズラッと居並んだ財務省本省のお偉方を前に「我が地域は、絶好調。不景気って、何のこと？　居酒屋は、みんな満員ですよお」など、そんな発言をするはずがないのである。ただのヒアリングのための会議なら、民間では、もう電話会議さえ省略するのが常識である。

（弱肉強食　３）

　こういう状況（つまり丸ビルも新丸ビルも満員で座れない）だから、飲み会を気持ちよく始めるには、「予約」などという、バカな酔っ払いクマさんにはまず無理と思われる煩雑な根回しをしておくか、さもなければ場所を他に設定するしかなくなる。しかも、皇居周辺や丸の内周辺の夜景をナイトウォークから外すのはイヤである。「ナイトウォークがないと」（またまた申し訳ございません）、である。そこで一計を案じ、飲み会を青山周辺に設定し、ナイトウォークの出発点をお茶の水に変更。まず先に、代々木上原から新お茶の水まで千代田線で移動。懐かしいお茶の水（自分自身が18歳で駿台生だった頃の思い出と、30歳過ぎて駿台講師だった時代の記憶がいろいろ詰まっているのだ）をスタートラインに、中央大学前（おぞましい殺人事件の余韻がまだ残っている）・白水社ビル・東京堂書店・学士会館・竹橋の毎日新聞社前から皇居半周に入り、今度は皇居を時計回りに回って、丸の内、法務省＆警視庁前、最高裁、国立劇場、半蔵門から四谷、上智大学前、赤坂見附を経由して北青山へと歩いていく。

　これで１時間半以上歩くのだが、ストレスは十分に発散できて、目的の飲み会は北青山のトルコ料理店「HAREM」。安くはないが、火曜木曜の「ベリーダンスショー」にさえ遭遇しないように、それだけをキチンと警戒していれば、なかなかいい店である。ギリシャの「ウゾ」にそっくりのトルコ酒「ラク」があり、20年も前にギリシャのロードス島で親しんだヘアトニックみたいな独特の香りの酒を楽しみながらケバブをムシャムシャやれば、ストレスはすっかりゼロ、せっかくウォーキングで体重を減らした効果もすっかりゼロ。これだけムダな生活をしていれば、「よし。また原稿を頑張るか」という気持ちになれるのは、もちろん水戸黄門以上の効果なのである。

1E(Cd) Solti & Chicago：BEETHOVEN／SYMPHONIES4/6
2E(Cd) Solti & Chicago：BEETHOVEN／SYMPHONIES 5/6
3E(Cd) Solti & Chicago：BEETHOVEN／SYMPHONIES 6/6
4E(Cd) Kempe & Münchener：BEETHOVEN／SYNPHONIE Nr.6
5E(Cd) Karajan & Wiener：BEETHOVEN／MISSA SOLEMNIS 1/2
6E(Cd) Karajan & Wiener：BEETHOVEN／MISSA SOLEMNIS 2/2
total　m201　y201　d2439