Fri 090116 センター試験は大キライだ(1/3) 予備校の3学期と講師の悪夢 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 090116 センター試験は大キライだ(1/3) 予備校の3学期と講師の悪夢

 センター試験があって、センターリサーチを提出して、平均点の上下なり周囲の動向なり予備校のアドバイスなりを検討して、最終的な志望校を決める。私はこの期間が一番嫌いである。予備校講師としての公式見解ではなくて、あくまで個人的な好き嫌いとして、嫌いな時期である。センター試験前の1週間、予備校の授業は一応あるのだが、生徒も救いがたいほどソワソワしているし、センターが近づくに従って生徒もどんどん減っていき、予備校の周辺が妙に静まり返って寂しさが増していく。単科ゼミの「直前講習」を除けば、講師もやる気なんかない。予備校の教材はどこも完全に投げやりで、1学期2学期の気合いの入った教材とは月とスッポン。その気合いの違いは何よりも表紙に現れるので、デザインも何も、模造紙を切ってコピー機で文字を印刷しただけのもの。まあ申し訳程度に図柄が描いてあっても、それも1学期か2学期のテキストからのコピーがせいぜい。県立高校の文化祭のパンフレットみたいなテキストである。
 

 新年になってからの「予備校の3学期」などというものは、学校法人としての認可を得るために仕方なく不承不承で設置しているに過ぎないのである。学校法人は1年につき何日間授業をしなければならないかが決まっていて、もし3学期を設けないと認可が取り消されてしまう。学校法人の認可がないと、浪人生の学生定期を発行できない。万が一浪人して予備校に通うのに、通勤定期を購入せざるを得ない予備校を選ぶ人はいないから、「3学期」というのはそのため、つまり学校法人としての体面を保ち、来年度の経営を円滑に進めるために、言わば仕方なく置かれている学期なのである。


 そこで仕方なく講師は朝からノコノコ出かけていく。3学期だからといってペイが下がるわけではないのだから、どんなにやる気のない授業をしても、まだ300人教室が満員だった懐かしい4月や5月の頃のペイと同じ給料がもらえるのだ。この辺は「単科ゼミの直前講習」をやらせてもらえない新人とか中堅不人気講師にとっては、「背に腹はかえられない」ところ。とにかく、2月3月には授業がゼロになって、給料もゼロになるのだから、ここで稼げるお金は、春を乗り切るためにどうしてもバカに出来ないのである。

 

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(マドリード・マッジョーレ広場裏のレストランの看板黒猫)


 ところが、教室に出かけてみると、生徒は誰もいない。誰もいなければ講師室に戻って座ってお茶でも飲んでいればいい(ただしさすがにそれでペイがマトモに出ることはない)のだが、なかなかそこまで完全にゼロになってくれないのが困るところである。必ず出席しているのだ。模造紙の表紙のついた学園祭のパンフレットみたいなテキストを嬉しそうに広げて、授業をニコニコ待ち受けているナイーブな生徒が2人か3人、300人も入る教室のあそこにポツン、こちらにポツンと座っている。1人、などというシュールな事態になることもある。もちろん、相手が1人でも2人でも、授業はしなければならないし、講師だってキチンとかどうかは知らないが、一応の予習はしてきているから、300名教室の教壇に立って、1~2人を相手に悪戦苦闘する50分または90分が開始される。


 これがまたたいへんな悪戦苦闘である。まず、マイクを使用しなければならない。予備校では講師室内にあるモニターで常に授業を監視しており、何か問題が発生すればすぐにでも教務課職員が駆けつけることになっている。突然生徒が暴れ始めるとか、教師が異様に怒り出すとか、講師が言ってはいけないマズいことを暴露し始めるとか、嫉妬のあまり誰か他の講師の誹謗中傷を始めるとか、いろいろな問題がよく発生するのが予備校である。だから、授業中は必ずマイクのスウィッチをオンにしておかなければならない。「人数が少ないからマイクを切って授業をするよ」などと言って許されるのは、余程の大物だけなのである。


 こうして、2~3人を相手に大音量のマイクで授業を進めていくと、何故か廊下には受験生がたくさんウロウロしていて、ついでに何故か教室のドアには小さな覗き窓がついているから、外からたくさんの生徒たちが覗き込んでは爆笑する。爆笑する気持ちはわからないでもない。300人教室に生徒2人、それも後ろの壁に貼り付いたような場所に座って、文化祭のパンフレットのようなテキストを眺めている。教壇では「人気がないことで有名」な講師が夢中でマイクを握り、黒板にバカでかい文字を書きなぐって熱血授業を展開している。せっかく授業に出てきた2~3人も、20分か30分かすれば睡魔に負け、コックリコックリし始める。結局、熱血講師は、誰かの参考書からメモしてきた「直前裏テク」「必殺アイテム」などを必死で黒板に書きなぐり、板書は書き写されることもない。外の廊下には40人も50人もの生徒が集まって、爆笑しながらそのありえない状況を眺めている。

 

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(眠すぎる)


 ただ、笑っていられるのはそこまでなのであって、実際には廊下に集まって人を笑っているヤツらこそ、実はさらにその外側から大きくみれば、まさに笑われるべき存在。マトモな受験生はもっと遥かにマシなことをしているのである。まず、午後から始まる直前講習単科ゼミの予習と復習。この時期の予備校は午後から夕方にかけてこそが山場であり、いや、まさにここが1年全体の山場のイベントであると言っていい。または収録授業の集中受講。まだここで頑張りさえすれば、収録された志望校対策講座を3つでも4つでも受講できるし、社会か理科の年間講座を入試終了までに受講することだって可能なのである。実は、ここでそういうことをしっかり実践した生徒こそが第1志望合格を果たせるのである。そういういいことがいくらでも出来るのに、何故か「センター」の存在一つで全てがイヤになり、全てが中途半端になり、廊下に来て滑稽な3学期の不人気授業を見て冷笑しているようなヤツが非常に多い。今すぐにでも、もっと有益な方針に切り替えたらいい。


 こうして、講師の地獄は午前中いっぱい続く。まあ、最近の予備校の授業は、最高の人気講師でも長くて2月10日までだから「あと20日で解放される」という事実だけが救いになってくれるのである。どんな大物でも、この「午前中の悪夢」から逃れることは出来ない。ある超大物が、「こんなテキストじゃ90分も持つわけない」と言って、40分で授業を切り上げて講師室に意気揚々と引き上げてきたら、教務課の職員に思いっきりイヤミと苦情を言われたらしい、というか、それを目撃したこともある。だから、この地獄をエスケープすることは非常に困難。ひたすら、「午後からは1年の山場の直前講習単科ゼミがある」「午後は満員締め切りになっている」ことを考えて生き延びるしかないのだ。

 私なんかはいろいろ2学期の終わりのうちに上手に立ち回って、「3学期にはこんなに面白いことをやるぞ」とたっぷり前宣伝をすることにしていた。まあそれがうまく行き過ぎて生徒が集まりすぎ、おかしなこと(生徒を取ったとか取られたとか)になったりもしたが、そうやって努力しても、1月中旬には10人とか15人とか、そういうつらい経験もしたのである。

1E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 1/10
2E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 2/10
3E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 5/10
4E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 6/10
5E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 7/10
6E(Cd) Alban Berg:BRAHMS/KLARINETTENQUINTETT & STREICHQUINTETT
7E(Cd) Alban Berg:SCHUBERT/STRING QUARTETS 12 & 15
8E(Cd) Billy Joel:GREATEST HITS 1/2
9E(Cd) Billy Joel:GREATEST HITS 2/2
10E(Cd) Brendel(p) Previn & Wiener:
MOUSSORGSKY/PICTURES AT AN EXHIBITION
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