Wed 080107 使用後 丸刈りでも寝癖はつく ナイ氏についての甘酸っぱい記憶  | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 080107 使用後 丸刈りでも寝癖はつく ナイ氏についての甘酸っぱい記憶 

 さて、昨日の続きで、寝癖と丸刈りの話である。まあそういうワケで(つながりが悪ければ昨日のブログから読み直してください)朝9時から授業があるのに、朝7時に起きてじっくり風呂に入って頭を洗うのは至難のワザである。すると、朝6時に起きなければならなくなり、横浜校で授業のある日は家を出るのが7時だから、朝5時に起きなければならない。そうなれば、前の夜に酒を飲むのも早めに切り上げなければならなくなる。酒を飲む時間が短くなったのでは、人生の楽しみが半減してしまうから、夕方生徒の質問に答えているときから、もうソワソワして「明日は5時起きでお風呂なのに」と思い、しつこく質問なんかに訪れる生徒が憎々しく感じられる。そうやってどんどん予定は前のめりになっていって、すべてが鬱陶しくなる。


 考えてみれば、出発点は、朝の寝癖、鉄腕アトム頭とチョココロネ頭である。それなら、迷わず、丸刈りにしてしまうべし。丸ボーズ、バンザイである。というわけで、丸刈りにするのに何の躊躇もなかった。床屋に行って、「ボーズって、出来ますか」と尋ねた。このとき、馴染みの床屋に行くのは、あえて避けた。馴染みの床屋にいったりしたら「なぜなのか」「ためらいはないか」「本当にいいのか」とか、いろいろ質問攻めでうるさいだろう。こちらとしては、理由は明確だし、ためらいがないからこの椅子に腰掛けたのだし、本当も何も、床屋に来てウソをついても仕方がないのだ。そういう問答が面倒くさいから、初めて見かけた寂れた街の寂れた床屋の寂れた椅子に座って、30分もかからずに、人生をリセットしたとでもいうような、勇ましい気分で店を出たのである。

 

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(使用後)


 ところが、実際に丸刈りにしてみると、丸刈りは期待したほどラクではなかった。確かにお風呂に入って頭を洗うのはラク。お風呂から出てもドライヤーのお世話になることはなくて、バスタオルで拭いただけで1分もかからずに気持ちよく乾いてくれる。痒いところがあればバリバリ掻けばいいし、汗をかいてもタオルでゴシゴシやればすぐに清潔になる。男子諸君、どんどん丸刈りにしたまえ、何をグズグズ長い髪なんかかきあげてカッコつけているのだ。女子諸君、ぜひカレシに丸刈りをすすめたまえ。まあ、そこまでは、丸刈りに不平も不満もない。


 しかし、「丸刈りに寝癖なし」は、やってみたことのない人がいだく妄想なのである。実際には、丸刈りにしても、寝癖はつく。丸刈りに独特の寝癖である。特に、今回のように50日も放置して、せっかくの5mmに揃えたものが2cmから3cmぐらいに伸びてしまうと、その寝癖は顕著であり、毛足が短いぶん、返って処置のしようがない。寝癖直しクンがいくら努力しても、丸刈り独特の寝癖だけには決して太刀打ちなどできないのである。


 では、丸刈りにどんな寝癖がつくかといえば、一定の面積にわたって、約5mmの毛髪が他の部分とは反対の方向に向かって一斉にペッタリ地肌にくっついて横たわるのだ。その寝癖はちょうどゴルフのグリーンの芝目とそっくりである。撫でてみると、まさにグリーンの芝目。左から右は滑らかだが、右から左は抵抗が大きい「重い芝目」なのである。この状況は、そよ風が吹いてもよくわかる。順目の風なら爽やかだが、逆方向からの風は芝目に引っかかりを感じて不快である。この状況で授業をして、収録されたDVDを見ると、一人で爆笑する。受講生が気づいていないことを願うばかりである。

 

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(現れた白い魔物)


 なお、このことはヒゲにも当てはまる。私のヒゲは床屋で頭の毛と同じ5mmに揃えてもらうのであるが、寝癖も同じようにつくし、芝目の状況も同じである。講演会で出かけた時、「ヒゲに触らせてください」などと言ってくる大胆な受講生もいるが、もちろん無料で触ろうなどというのは言語道断であるし、たとえ有料でも、もちろん言語道断である。これほど面白い感覚は、自分以外誰にもわからせたくない。わかりたければ、自ら丸刈りにし、自らヒゲを生やさなければならない。


 もう一つ、「しょっちゅう床屋に行かなければならない」という欠点もある。長く伸ばした髪なら、まあ2~3ヶ月に1回で済むのかもしれないが、丸刈りでしかも天然パーマの状態は、そういう怠惰を許してはくれない。放置すれば、すぐにお釈迦サマになる。2cmや3cmの中途半端な髪の毛で、しかも天然パーマでクルンクルン巻き巻きし始めると、鏡に映った姿は、どうしても北島三郎的パンチパーマ、またはお釈迦サマである。朝からお釈迦サマに向かってナムナム唱えるほど熱心な仏教徒ではないから、このお釈迦サマスタイルに恐れをなした私は大慌てで床屋に駆け込むことになる。こうして、今回みたいに長い海外旅行を立て続けにした後は、お釈迦サマスタイルのパンチパーマから脱出するための「床屋詣で」が必須。最低でも1ヶ月に1回の床屋代は、家計に重い負担にもなり、財布のヒモはここでもまたカタくしまってしまうことになる。ナムナム。

 

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(食われる)


 さて、ナムナムしている暇もなく、アメリカは間もなくオバマ政権に変わることになるが、駐日大使にJ.ナイ(Nye)氏が任命されることになった。たいへんおめでたい。過去の歴史を振り返ると、アメリカ民主党政権は日本に対して冷淡な態度をとることが多くて(クリントン政権において特に顕著)、オバマ氏当選について日本人が余り歓迎できない唯一の要素がその点であった。ただでさえ国際的には相対的な地位の低下を心配しなければならないのに、ここでオバマ政権の軸足が中国重視になるようだと、そういう傾向に一層拍車がかかるところであった。そこへナイ氏の大使就任である。オバマ政権の日本重視の態度がこんなに明確に示される人事はありえないほどである。


 もっとも、ナイ氏については、個人的には余り芳しくない記憶がある。学部時代の国際政治のゼミで、最初に読まされたのがNye & Kohaneの「Power and Interdependence」。これがあまりに難しかった。実際には、難しかったというより、当時まだ早稲田の図書館では使われていた湿式コピー(通称「青焼き」)に独特の甘酸っぱい匂いがあって、もともと甘酸っぱい匂いがきわめて苦手な私としては、これに耐えきれなかったのである。ゼミで配布された300ページに及ぶ青焼きの「Power and Interdependence」を読む気にはとてもなれず、読まずにゼミに出席し、読んでいない文書についてほとんどでっち上げで発言し、いつもならうまくいくそういう発言が、さすがに教授(後に早稲田から東大に移った鴨武彦教授)には通じなくて、希望していた大学院への進学は、そこで断念せざるを得なくなった。


 普段私と付き合っている人なら誰でもわかると思う。私は、酢の匂い、酸っぱい匂い、火薬の匂い、火薬の気配、そういうものに異常なほど敏感で、そうしたものと同居しなければならないぐらいなら、むしろ自分の将来を断念したくなるほどなのだ。ウソだと思ったら、一度食事に付き合ってみるといい。隣のテーブルの人が料理に酢をかけた瞬間、既に私は店の人にお勘定をお願いしているし、飲み屋で近くに座った人がタバコに火をつけた次の瞬間、私はもう店の外に出ている。これほど気難しい人間はいないのだ。ナイ氏の駐日大使就任が決定した時、これ以上はない人事だと快哉を叫ぶと同時に、目の前を(私は嗅覚が目にあるので)甘酢に関する嫌悪感が目の前をひらめき、大学院進学を諦める原因になった匂いが記憶によみがえって、おお、私ほど神経質でない諸君が大学院で頑張ってくれることをひたすら祈ったのである。

3D(DvMv) PROOF
6D(DvMv) THE HAND THAT ROCKS THE CRADLE
9D(DvMv) THE NEGOTIATOR
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