Fri090102 報道は謙虚であるべきだ 地方の派遣労働者について 金銭感覚の健全化ではないか | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri090102 報道は謙虚であるべきだ 地方の派遣労働者について 金銭感覚の健全化ではないか

 元旦にはすっかり酔っ払って、日本のマスコミ報道への嫌悪感について長々と書いたのであるが、この嫌悪感は別に酒に酔っていなくても全く変わらない。結論が先にあって、その結論に導くために事実を歪曲するのはやめるべきである。自らの意見に反する事実をカットしてしまったり、世論を煽ってその方向に向けたりするのは、報道の名に値しない。もっと謙虚な姿勢で報道にあたらないと、報道のせいで必要以上に人の心が暗くなる。報道などというものは、もともとパッチワークに過ぎない。膨大な事実のすべてを報道することが出来ない以上、世界中に無限に溢れている事実の中から、その切れ切れの断片を拾い集めて30分なり60分なりに編集して伝えるのが報道である。


 切れ切れの断片を並べて見せる紙芝居に過ぎないのだから、紙芝居を公平な視点で作成するのが報道人の使命である。断片の拾い方に偏りがあって、事実のうちのマイナスの側面だけを強調し、プラスの側面を一切無視するような紙芝居を作れば、その報道はウソであり偽りである。もちろんその反対で、マイナスの側面を無視してプラスの側面ばかり強調するような断片の選び方をするのは、権力への翼賛報道であって、それが許されないのも当然である。
 

 報道人に要求される謙虚さとは、もともと無限大の事実のすべてを正確に伝える能力が人間には与えられていない以上、せめて事実の断片の選択だけは公平になるように、選び方に偏向がないように心がけることである。断片の選択作業に思想的な偏向があってはいけないし、そこに主義主張を織り込もうとするのは言論の仕事であって、報道の仕事ではない。どうも今の報道人には、そこのところに混同があるような気がしてならない。事実の断片を並べて世界の現実を圧縮して見せるのが報道、報道を踏まえて主義主張を述べるのが言論。両者を同時に進めてはならないのは、報道のイロハであり基礎基本であるはずだ。

 

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(ニャゴ姉さんの初夢 1)


 年が明けてからも、「派遣ギリ」「派遣村」の動向についての報道が続き、テレビのニュースショーを見るかぎり、日本全体がこの問題を注視しているようであるが、このことに関するニュースを見ていても、報道のパッチワークがうまくいっていないのを痛感する。報道内容が東京に集中しすぎて、地方都市でこの問題がどう進行しているか、全く報道がないのである。もともと「派遣ギリ」が始まったのは地方都市だったはず。報道が偏っているせいで、我々は東京にしか目がいかず、日比谷公園や厚生労働省の講堂にしか目がいかず、地方の状況を忘れ、支援の物資も日比谷公園に集中してしまう。これでは、報道機関が正確なニュースのパッチワークを作成しているとは言えないはずだ。


 大阪がどうなっているのか、福岡がどうなっているのか、札幌はどうか。大分や宇都宮の状況ははどうなのか。これだけ長時間にわたって派遣村問題を扱うニュース番組で、そのことに触れた放送局はほとんど皆無だったのである。大学駅伝での留学生ランナーの20人抜きや区間賞更新は伝えても、トヨタ自動車九州や大分キャノンのその後は省略。福袋の中身に生活必需品が増え、値段も「消費者の財布のヒモがカタくなったことを反映して」2000円から5000円のものが増えたことは報道されても、名古屋や仙台の派遣ギリについては報道なし。そういう状況を見ながら、報道に携わる者が本当にマジメにこの問題に取り組んでいるとは思えなくなってくるし、その程度の報道しかみていない正月気分の政務官が「本当にマジメに職を求める人たちなのか」と発言したとすれば、それは報道の責任でもあるような気がする。マジメに情報のキルトや事実のパッチワークを作成する気力があるなら、是非とも地方の派遣労働者について、実情を伝えてほしいものである。

 

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(ニャゴ姉さんの初夢 2)


 「タクシーの運転手さんにインタビュー」などというのもよくある企画。確か、昨年暮れに麻生首相もやってみたはずだ。朝日新聞でもこの方法は推奨していて、国際面のコラムの中で、世界中のどこに出かけても、景気がいいかどうかはタクシーの運転手さんに聞けばわかる、と書いていた。最近中国のウーハンで運転手さんに景気を聞いてみたら「不景気だ」と答えていた、だから、世界の景気減速は上海など沿岸部の豊かな地域から、貧しさの残る内陸部まで確実に影響を及ぼしつつある、というのである。


 「いやあ、景気は悪いですね」と答えるタクシーの運転手さんの顔が次々と画面に映しだされ、インタビュワーも嬉しそうに「そうですかあ、景気はどんどん悪くなっていますかあ」と応じるシーンも、すでにお馴染みである。しかし、タクシーの運転手さんというのは、そのほとんどが1日中ラジオを聞きながら運転しているものである。そしてAMラジオほど、ジャーナリストや気難しいタレントの言いたい放題の世界もなかなかないのだ。


 新聞でもテレビでも、庶民にすり寄った姿勢で報道を行うときには「暗い世相を反映して」「こんなイヤな世の中でも」「せちがらい世の中ですが」「一向に生活は楽になりませんが」のような言葉を枕詞のように用いるのだが、AMラジオは特にその傾向があり、政治や経済についての激しい批判の言葉が連続する。そのラジオを一日中聞いて過ごしている人に、「景気はいいですか?」とインタビューするのだ。ラジオの暗示にかかり、ほとんどラジオの口まねのように「不況です、不景気です、大恐慌です」の返事が返ってくるに決まっている。


 私も運転手さんと話し込むことがよくあるけれども、そういうとき、ベテランの運転手さんほど、頭の中に描いているのは20年前のバブル期のことである。20年前、「景気が良かった頃」、人々はいくらでもタクシーを利用したのである。話したことのある運転手さんで「六本木から鳥取まで行った」経験を語ってくれた人がいた。おお、おお、鳥取である。「銀座から仙台まで」「新宿から長野まで」「渋谷から浜松まで」そういうのが続出した、素晴らしい時代だった、そういう反応の運転手さんもいた。「小田原なんて、ザラでしたよ」「大宮、柏、八王子、そんなのは長距離とは呼びませんでしたよ」「新橋から渋谷とか、渋谷から下北沢とか、そんなのは乗車を断ったもんです」などというのもあった。そういう好景気の思い出に比較したら、それはもちろん、ほとんどの時代が「いやあ、今は不景気ですね」になるに決まっている。

 

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(ナデシコ、初夢からの賢い目覚め)


 大晦日にも書いたけれども、実際に新宿や渋谷や銀座に出て、デパートを3つか4つハシゴして、それでも「庶民の財布のヒモがカタい」かどうか、難しい顔のキャスター自身が一度生中継してみればいい。2日からは各デパートの福袋商戦がスタートする。福袋などというものは、衝動買い、ムダな消費、不合理な消費行動の典型。自分が必要とする商品かどうかをほとんど考慮せず、2000円5000円10000円の大金を勢いだけで投げ出す行動である。そういう消費行動を、先の見えない経済非常事態にさらされて財布のヒモがカタくなった人々が先を争ってするものかどうか、考えればわかることだ。


 タクシーにせよ、福袋にせよ、むしろ金銭感覚としては健康になっただけのような気がする。丸の内からタクシーで群馬の高崎までとか、福袋にブランドバッグがたくさん入って200万円とか、医者の息子が医学部合格祝いにポルシェとか、アメショー以外はネコじゃない、ワインは一本25万円のヴィンテージ、お賽銭に100万円の小切手、そういう浮かれ方は、「景気がいい」というのではなくて、正気の沙汰でなかっただけのこと。高崎まではせいぜいで新幹線、それも普通車自由席。福袋なら2000円か3000円で、自分に合わないものは友人と山分け。大学合格祝いなら電子辞書、ネコなら雑種の子猫を2匹もらって大事にお風呂に入れ、ワインは一番安いハウスワインをデカンタでおかわり。お賽銭ぐらい景気づけに、1円玉250枚と5円玉50枚、合計500円を豪勢な音とともに賽銭箱に投げ込んで周囲の歓声を楽しむ(ほとんどが筆者の現実)。こういう生き方が世界同時不況の財布のヒモがカタくなった暗い世相なのか、それとも金銭感覚の健全化なのか、よく考えてみた方がいい。我々は、わがまますぎるのだ。

1E(Cd) DRIVETIME
2E(Cd) Billy Joel:GREATEST HITS 1/2
3E(Cd) Billy Joel:GREATEST HITS 2/2
4E(Cd) Akiko Suwanai:BRUCH/CONCERTO No.1 SCOTTISH FANTASY
5E(Cd) Akiko Suwanai:SOUVENIR
6E(Cd) Wand & Berliner:BRUCKNER/SYMPHONY No.4
7E(Cd) Karajan & Wiener:BRUCKNER/SYMPHONY No.7
10D(DvMv) THE ISLAND
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