Tue 081209 ネコたちを病院に連れていく ラグビー早稲田vs明治戦 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 081209 ネコたちを病院に連れていく ラグビー早稲田vs明治戦

 どんより曇って寒い中を、ネコ2匹に予防接種を受けさせるために、午後から動物病院に連れて行く。淡島通りと茶沢通りが交差する代沢十字路にある動物病院である。大型のキャリーバッグにニャゴロワとナデシコの2匹を入れるのであるが、入れるのにいつもたいへんな苦労をする。ニャゴロワは簡単なのだ。いつでも上機嫌で、箱があれば入ってみずにはおかない、袋があればどれほど小さな袋でも頭を突っ込まないではおかない、そういう性格のネコだから、キャリーバッグを出しただけで懸命に階段を下りてきてすぐに頭を突っ込んでニャアニャア騒いでいる。長いシッポがうまく入らなくて苦労したが、それも苦労というほどのことはない。
 

 問題はナデシコである。ナデシコは感情の起伏が激しくて、不安感とか用心とか軽い疑念とか賢さとか、ニャゴロワには見られないシャイな部分が多い。しかも記憶力が抜群なので、たとえ1年ぶりの予防接種であっても、キャリーバッグと痛い注射の記憶を結びつける能力がある。キャリーバッグの音、ニャゴロワが騒いでいる声、何だかいつもとは違う雰囲気、そういうものを総合すると「これは注射だ、病院だ、隠れ場所を探して、逃げられれば逃げよう」という判断につながるのである。
 

 それを追いかけ、なだめ、すかし、何とかバッグの入り口まで連れて行っては拒絶されること数回。ナデシコのシマシマのシッポはタヌキのシッポのように太くなり、せっぱ詰った声でシャアシャア唸りはじめる。短い時間であっても、狭いキャリーバッグの中にニャゴロワと同居するのもイヤであるらしい。悪戦苦闘10分、あきらめかけたころに、何とかナデシコを納得させることに成功。2匹で合計8kgのバッグは重かった。


 病院でも、2匹の反応は全く別である。ナデシコは、獣医さんの前に出ると、もう観念して大人しく、特に反抗を試みたりはしない。シッポはタヌキのままだし、そのシッポをまたの間にはさんで「自分はいま恐いのです」という気持ちを表現してみることはみるのだが、それ以上の反感は示さない。体重も正常、体温も正常、歯石も問題なし。あっという間に注射も終わって、泣きもわめきもしない。
 病院で問題なのはニャゴロワである。彼女の抵抗は、待合室での激しい唸り声からスタート。道ゆく人が「何事か」と振り返るほどの鳴き声&唸り声である。診察室でバッグから出れば、つめで引っ掻き、後足でキックし、泣き、唸り、チャンスがあれば噛みついてでも抵抗する。ネコとして備わったありとあらゆる手と足と口とを尽くして獣医さんに歯向かい、特に注射に対する反撃は激しい。その迫力には、こちらがたじろぎ、見ていると可哀想で泣きたくなるほどである。


 病院を出ると、外は強い雨。天気予報でもこれほどの降りかたになるとは言っていなかったように思うが、やむを得ないものはやむを得ない。雨の中、ネコたちをなだめすかしつつ帰り、可哀想だから、普段は与えない缶詰を2缶開けて、1缶ずつ食べさせる。ナデシコは、缶詰をあまり喜ばない。食べ残すのが普通で、食べ残しはニャゴロワが横から顔を突っ込んで平らげることになっている。しかしさすがに今日は疲れてお腹も減ったのだろう。珍しくナデシコも缶詰を平らげ、夕方から夜にかけては2匹とも疲れきってぐっすり眠っていた。

 

0921
(疲れて眠る1)


 12月7日日曜日、ラグビー早稲田vs明治戦をテレビで見た。いつもなら国立競技場まで出かけてスタンドで観戦するのだが、今年はちょっと関心をなくしていて、ま、テレビでいいか、と思ったのだ。実際、8年連続して勝っている早稲田は全くやる気が見られず、一方の明治は10年前を知る者には信じがたいほど弱くなって、大学選手権への出場権も逃してしまった、現状ではグループ6位のチーム。格上vs格下の構図である。ただ、そのぶん早稲田には見るからに慢心があり、慢心はゴール正面5mでPGをもらってもスクラムを選択する傲慢になって現れ、傲慢は明治の選手たちに火をつけ、火がつけば、もともと高校日本代表選手を揃えた明治の強さが際立ち始める。後半30分までは「慢心と傲慢を隠そうとしないと、相手の闘争心に火がつくぞ」という教訓のビデオを見ているような有り様。火がついた明治の選手たちは10年前の強い明治が「前へ」を実践しているような迫力である。思わず、とうの昔に亡くなった北島監督の姿を求めてスタンドを見回したくなるほどだった。


 まあ、密集の中で明治の選手が故意に反則を連続していたことは確かである。密集からボールが出ようとすると、明治の選手が横たわって妨害する。早稲田SHの動きを、ジャージをつかんで止める。誰が見ても明らかなオフサイドをレフェリーが見逃す。いろいろ不満な点があったことは間違いないにしても、傲慢になったチームには、天もレフェリーも味方しない。しかし、一時は24対5までリードされた早稲田が、後半35分を過ぎて驚異の粘りを発揮。ロスタイム43分にバックスの個人技でトライ。24対22まで追いつめ、もし最後のゴールが決まれば「早稲田奇跡の同点」になるというところまできた。


 この得点経過は、1989年の早明戦と全く同じである。あの時は、後半残り2分で24対12。そこから、早稲田がまず右ウィング郷田の個人技でトライ。ロスタイムに入ってからFB今泉の独走トライで24対22。最後はSO守屋が、夕陽を正面から受けたゴールをほとんど目を閉じて蹴り、それが決まって「早稲田奇跡の同点」。キャプテン堀越がニッコリ笑って下井レフェリーと握手する感動的なシーンがあった。サントリーの清宮監督がまだ早稲田の選手だった時代である。しかし、今年の早稲田は技術も集中力も欠落しており、昨年までの実績に慢心し傲慢になっているだけである。最後のゴールは、ゴールポストにあたって、外れた。

 

0922
(疲れて眠る2)


 ロスタイムでギリギリまで追いつめながら、最後のゴールが外れる、しかもゴールポストにボールが当たるほどギリギリなのに、それがポストに嫌われてこちら側に落ちてくる、このあたりに、この試合の早稲田、今シーズンの早稲田の現状が象徴されているように思う。あくまで象徴的な話ではあるが、精神力でボールをポストの向こう側に押し込むことも可能だし、フィフティーン全員の祈りを込めたボールなら、ポストに当たっても無情にこちら側に落ちてきたりはしなかったかもしれない。20年前、全く同じシチュエーションで守屋が蹴ったボールには、そういう祈りや精神力や「どうしても負けない」という信念がこもり、スタンドのファンも同じ信念をもち、「夕陽に向かって真っすぐに蹴った」というボールはゴールポストの真ん中を鮮やかに超えていったのである。今年のチームに足りなかったものは、少し神懸りになって言えば、そういう種類の精神力であった。


 この8年間、早稲田はFWがすっかり大型化した。今年も平均体重で明治を上回っていたはずだ。昔からのファンには、信じがたい事実である。80年代、90年代、早稲田と言えば小型軽量FW8人が、必死で相手の攻撃に耐える姿が特徴。特に明治戦が人気を呼んだのは、1人平均で10kgも軽いFWが、明治の執拗なスクラムやサイド攻撃を、低い位置から突き上げるような伝統のスクラムで歯を食いしばって押し返す、そのひたむきさにファンが感動したからだった。


 あのころは、密集からのボールも、ほとんど早稲田には出ない。明治ばかりか、慶応相手でも、とにかく早稲田のFWというものは常に劣勢で、スクラムは耐えるだけ、密集から出てくるボールは10回に9回は相手ボール。常に自陣ゴールラインがテレビの画面に映り、No.8の足がゴールラインにかかり、マイボールスクラムからやっとのことで出たボールをSOがあわやというところでタッチに蹴りだす。そういうシーンが15分も20分も連続して、有名な「雪の早明戦」のようにスクラムから猛烈な湯気が上がって、全く動かないゲームでも、スタンドのファンが絶叫するほどの感動を呼んだのだった。


 そうやって驚くほどの長時間を耐えて、ついに10回に1回だけ、ボールが早稲田サイドに出る。それだけのことで実況アナウンサーが大きな声で叫ぶ。「密集から早稲田にボールが出た」というのは、当時それほど珍しいことで、だからこそボールを持ったバックスの集中力は研ぎすまされており、パスミスもノックオンもなければ、安易にキックしてみすみすボールを相手に渡してしまうこともしない。実に丁寧に、これ以上ないほどシャープなステップを踏んで、自陣ゴール付近から一気に相手ゴールに迫り、わずかな得点機を確実に得点にするのである。藤原、植山、本城、吉野、郷田、今泉、今駒、吉村、増保、吉雄、山本肇、その他数えきれないほどのバックスの名選手たちは、滅多に回って来ないボールを確実に相手ゴールまで運ぶ集中力がナイフのように輝いていたのである。

 

0923
(疲れて眠る3)


 この8年の早稲田黄金時代は、様相が一変した。FWが一気に大型化して、慶応を抜き、明治を抜いて、巨漢外国人を擁するトヨタ自動車FWをモールで押し込んでトライを奪える(2007年)ほどの、大学ラグビー屈指の大型FWになった。密集からのボールは、どんどん早稲田に出る。ターンオーバーは当たり前。キックして、いったんは相手ボールになっても、すぐにターンオーバーしてマイボールに戻る。大量得点も当たり前。清宮監督時代にこういう形の早稲田ラグビーが定着したのだし、そのこと自体は決して悪いことではない。「軽量FWが歯を食いしばって耐えて」というような精神論は、要するにヤセ我慢であって、大型であるべきFWは大型であるに越したことはない。
 

 しかし、そのことで集中力をなくしてしまうのでは、早稲田ラグビーの伝統そのもの、または魅力そのものを喪失することになりかねない。「いくらでもボールが出てくる」「いつでも相手ボールは奪える」「簡単にターンオーバーできる」という安心感が慢心になれば、バックスはミスを犯しやすい。決定的なシーンで何度もノックオンし、それでもニヤニヤ笑っているバックス。「どうせすぐに奪えるボールだから」と思っていることが見え見えの安易なキック。思ったようにならないときに簡単に浮き足立ってしまう選手とベンチ。どうせ大量点で勝つのだと決めてかかり、期待が裏切られると簡単に興味をなくしてしまうスタンド。そういうものをテレビの画面で見ながら、「8年間の黄金時代と引き換えに、早稲田ラグビーの伝統と魅力を喪失する危機に立つことになってしまったのではないか」、まあ杞憂なのだろうが、そういう危機感をもった。

 

0924
(疲れて眠る4)


 一方、ペナルティ覚悟のきわどいプレーを連発してでも早稲田から9年ぶりの勝利をもぎ取ろうとした明治の健闘は、大いに讃えてあげていい。「明治の選手が、密集からボールが出るのを妨害していた」という早稲田主将の発言は確かなのかもしれない。しかし、レフェリーがそういうルール解釈だと判断したなら、チーム全体で早急に対策を立てて対抗しなければならないはず。それをせずに試合が終わってから愚痴を言うのは、みっともない。むしろ、40年来の早稲田ファンである私でさえ、危機に立たされていた明治ラグビーに一筋の光が見えたことを喜びたい気分である。


 今回の勝利で明治のラグビーが復活するかどうかは、わからない。20年前には、国立競技場が5万人の観客で埋め尽くされる、世界で最も人気の高い学生スポーツだった早明戦だが、テレビで見た限りでは空席が目立った。観客2万人だったというのだが、実数はもう少し少ないように見えた。試合が終わった後には、早稲田、明治、それぞれの学生たちが明治神宮の銀杏並木を見上げ、試合の感動を語り合いながら、イチョウの落ち葉が靴底に弾力を感じるほど降り積もった舗道を踏んで、渋谷までブラブラ歩いたものだが、今年はどうだっただろう。感動はあったのだろうか。学生諸君のためにも、少し心配になった。

1E(Cd) Oortmerssen:
   HISTORICAL ORGAN AT THE WAALSE KERK IN AMSTERDAM
2E(Cd) Oortmerssen:
   HISTORICAL ORGAN AT THE WAALSE KERK IN AMSTERDAM
3E(Cd) Philip Cave:PHILIPPE ROGIER/MAGNIFICAT
6D(DvMv) THE INSIDER
9D(DvMv) THE OTHERS
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