Mon 081124 理科と社会を暗記科目扱いするな 社会を綺麗事で終わらせるな | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 081124 理科と社会を暗記科目扱いするな 社会を綺麗事で終わらせるな

 「暗記科目は、最後の追い込みで」というアドバイスについては、正しいことをキチンと言っておかなければならない。社会も理科も決して「暗記科目」などではない、ということだ。特に社会については、受験の世界では「疑う余地のない暗記科目」の扱いを受け、面談や塾内の掲示物でも「そろそろ社会などの暗記科目にも手を付けましょう」などと言われているが、これは明らかに不当である。
 

 中学校の社会の先生も、高校の地理歴史の先生も、みんな4月には「いいか、社会は、地名や年代を暗記することが目標ではない」と言っていたはずである。塾や予備校の社会の先生も、春の第1回の授業で同じことを主張したはず。我々は、いつの間にかそのたいへんありがたいお言葉を忘れてしまって、塾の面談なのに、面談担当の先生自ら「社会や理科みたいなの暗記科目は … 」などと平然と口にしている。いや、社会の先生が面談担当になったりすると、さっき授業で「社会は暗記が目的ではない」とおっしゃったばかりなのに、面談では「社会とか、暗記科目は後からでいい」と口走ったりする。そんな状態だから、生徒たちも「ぶっちゃけ、社会は暗記科目」と思い、教室は「ぶっちゃけ」「ぶっちゃけ」「ぶっちゃけちゃっちゃ」の嵐になるが、こういう生徒たちは不幸である。

 

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(ニャゴロワのスカイダイビング1)


 社会も理科も、「ぶっちゃけ、暗記が前提」それは確かである。暗記なしで社会や理科の勉強がスタートすることはありえない。しかし、「暗記がつまらない」と思うのは暗記をしたことがないシロートだし、暗記すればそれで終わると思ったら、それもやっぱりシロートである。まず、暗記は面白いし、とても楽しいことである。どんどん覚えて、どんどん自慢したまえ。覚えた量に比例して、人生は楽しくなっていく。世界史や地理の知識なしで出かけたイタリア旅行はむなしい。フランス語会話が出来ないフランス旅行より、世界史の知識なしで出かけたパリの方がつまらない。知識があればあるほど楽しいのは、テレビのクイズ番組の問題にいくらでも答えられるようになるだけでもわかる。星座の名前を知らずに冬の夜空を眺めても寒いだけだが、いくつかの星をつないでギリシャ神話を語れば、ホッカイロなしでも平気で朝まで過ごせるはずだ。そういう楽しさが生活のあらゆる場面に出てくるから、数学の問題を5年も10年もトコトン考えられる粘り強さのない平凡な人間にとって、暗記ほど楽しいことはなかなか考えられない。

 

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(スカイダイビング2)


 「暗記さえすれば得点になる」というのも、ぶっちゃけ、シロート。「暗記だけ」でとれる得点など、たかが知れていて、とても難関校の合格点には達しない。言っておくが、これは先生方がよく口にする綺麗事ではない。「暗記が目的ではない。世界の構造、歴史の構造と因果関係、それを理解し、未来に役立てる、そういう視点がなければ、ダメなんだ」、社会の先生なら誰でも最初の授業でこういう大演説をして、そのくせ定期試験で細かい知識問題ばかり出題するから、教室は最初はブーイング、次に「ぶっちゃけ」の嵐、最後はあきらめが支配することになる。 社会の勉強が嫌いになるのは、「ウソをつかれている感覚」のせいであることが多い。生徒たちは苦しみながら記憶に励んでいるのに、教師が涼しい顔で「記憶は、社会の勉強の本質ではない」などとウソぶいていたのではダメなのである。

 

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(スカイダイビング3)


 正しくは、以下のようになる。たくさんの知識、たくさんの暗記が不可欠。暗記と知識は楽しいし、これからの人生で大いに役立つから、大いに覚えまくりたまえ。でね、諸君。覚えまくって、頭の中に知識が一定量たまってくると、知識と知識とが勝手にいろいろ絡まりあったり、勝手にヒトカタマリになったり、そのカタマリ同士が知らないうちにもっと大きなカタマリになったりして、いわば思想みたいなものに変質していく。意識的に努力しなくても、漬け物かチーズかワインか生ハムみたいに、頭の中に貯蔵しているだけで、発酵したり変質したり、記憶した本人は意識していないのに、おっきな思想大系にまとまっていくの。本人は努力していないのに、勝手に出来てくるから面白い。たくさん記憶してから、半年、1年、個人差はあるけれども、そういうのが、自分の生き方とか、将来への指針とか、他人との関わりとか、世界との関わりとか、政治や経済への態度とか、まあ難しいかもしれないけれども、勉強してなかった頃には全然考えなかったぐらい大人になっていくわけ。そういうカタマリがしっかり頭の中に出来たとき、もしかすると難関校の入試でも合格点がとれるような社会なり理科なりが完成していくの。だから、理科も社会も、早めに始めなきゃダメだよね。ま、そういうことである。

 

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(着地)


 最後につけくわえると、そうやって育てたホンモノの社会&理科は、中学受験の国語でも、大学受験の英語や現代文でも、ちょっと哲学的な文章を読まされたときに、信じがたいほど大きな力を発揮する。他の兵士が刀を抜いてヤーヤー騒いでいるときに、自分だけ機関銃を手にしているようなものである。理科&社会のホンモノの能力が、数学や国語や英語の時間に機関銃になってくれるなら、「暗記科目は後回し」などと遠慮していないで、今日からすぐにやった方がいい。早く、優秀者欄に掲載され、早く模試で図書カードを稼いでほしい。

1E(Cd) Wand & Berliner:BRUCKNER/SYMPHONY No.8 2/2
2E(Cd) Wand & Berliner:BRUCKNER/SYMPHONY No.9
3E(Cd) Karajan & Berliner:BRAHMS 4 SYMPHONIES 1/2
4E(Cd) Karajan & Berliner:BRAHMS 4 SYMPHONIES 2/2
5E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES 1/6
10A(α) 倉橋由美子:城の中の城:新潮社
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