Tue 081118 入試直後に答え合わせをするな 試験後に群れて帰るな | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 081118 入試直後に答え合わせをするな 試験後に群れて帰るな

 模試の場合なら仕方ないことかもしれないが、入試本番だというのに仲間どうし群れてワイワイガヤガヤやっているのを見ると、「ああ、この子たちは合格しそうにないな」という直観がある。

 入学試験というものは、親からも仲間からも独立した1個の人格として、その学校にふさわしいかどうか判断してもらうためのものであって、試験の現場で親から離れられなかったり、入試本番で仲間と群れずにはやっていけないような受験生は、最初から合格の資格を放棄しているようなものである。

 中でもみっともないのは、試験が1科目終了するごとに友人どうしが集まって答え合わせをしている姿。模擬試験ならそれもいいかもしれないが、入試本番での仲間どうしの答え合わせは「百害あって一利無し」以外の何物でもない。

 せっかくの休憩時間である。まず頭を休めることに集中すべきだ。そのとき何より重要なのは「今終了した科目から、次の科目に向かって頭の切り替えをすること」である。90分間英語に燃えていた頭は、英語の方向にエンジン全開の状態であり、そう簡単に次の科目向かってスタートが切れない。

 わずか10分か20分の休憩時間に、しっかり次の科目にギアチェンジしないと、いざ試験開始になってから、うまく走れないまま時間を浪費することになるし、当然それは焦りにつながり、焦りは焦りを呼んで、不合格へダウンスパイラルに落ち込むことになりかねない。

 

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(解散総選挙は)


 だから、終わった科目の答えあわせなんかして、せっかくの休み時間をムダにするのは愚の骨頂である。それは、頭を切り替えるどころか、逆に終わった科目にいつまでも頭のギアを引き止める役割をしてしまう。賢い受験生なら、ダメなヤツらがワイワイ答えあわせなどしているスキに、さっさと次の科目の参考書か問題集を出してウォーミングアップを開始するものである。

 次の科目が英語なら、基本的な文法問題集を猛スピードで解いていくだろうし、数学なら、今まで何度も解いた教科書傍用問題集を出して「この問題はこう解く」「この問題の解き方の手順はこう」と十数問でもいいから、頭を数学向きに切り替える。

 理社科なら、一問一答問題集が最後のご奉公をしてくれるだろう。その程度で構わない。ウォーミングアップが出来た頭と、前の時間に終了した科目にいつまでもヒートアップしている頭とで、どちらが有利かは言わずと知れたこと。試験時間が短ければ短いほど、「ウォーミングアップをしたかしなかったか」の差は大きく得点に反映される。

 だから、試験時間が短くて40分ぐらいしかない中学受験では特に、当落線上にある生徒の合否は「ウォーミングアップをしたか否か」で決まってしまう可能性さえあるのだ。「直前に見たところが出るかもしれないぞ」などという幼稚な話ではなくて、「エンジンを温めておいた方が有利に決まっている」という常識的なことである。

 もう一つ、試験終了後の答えあわせに賛成できない理由がある。言うまでもないかもしれないが、「ああ、やっぱり違っていたか」「あんなに迷ったのに、結局間違った選択肢を選んでしまった」というショックが、次の科目に尾を引かないはずはない、ということである。

 こういうショックは、年齢を問わない。中学受験生でも大学受験生でも、司法試験を受験するような立派な大人になっても、ショックを受けて脳が萎縮してしまえば、なかなか次の戦闘に向けて態勢を立て直せないものだ。

 1つの負けグセは次の負けグセを呼ぶ。長い受験生活全体を通じて言えることが、受験当日1日の中にも現れてくる。ならば、自分が間違ったことを決定的に意識せざるを得なくなる可能性の高い仲間どうしの答えあわせは、心理的に見てもマイナス要因以外になりえないことがハッキリしているだろう。

 

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(即、ではなさそうだ)


 以上、答えあわせはするな、次の科目に向けてのウォーミングアップに全力を尽くせ、という理由である。だから、とにかく入試本番には、仲間どうし群れて出かけない方がいいのだ。

 友人たちと一緒にいれば、何となく付き合いで答えあわせに参加せずにはいられなくなることもあるし、連れ立ってトイレに立てば、順番を待つうちに「あそこの答え、何にした?」という会話になるのは避けがたいはずだ。入試は、一人で申し込んで、一人で受けにいくに限る。

 大きな塾だと、前の晩から試験会場の近くにみんなで泊まり込んで、朝起きて激励会や壮行会があり「合格するぞ」のシュプレヒコールをして、チャーターしたバスにそのままハチマキ姿で乗り込み、一昔前のヤクザの出入りのように試験会場に向かう、などという塾もあるが、それはマスコミの取材を意識し、宣伝広告を兼ねた塾側の自己満足にすぎない。

 やはりこれも、百害あって一利無し。入試はあくまで個人戦であって、団体戦ではない。前にも書いたことがあるが、受験の朝はいつもと同じに静かに起きて、静かに家を出て、心を落ち着けて一人で戦いに出かけるのが一番である。

 試験終了後、帰るときも同じである。仲間どうしジャレあいながら群れて帰るのは感心しない。試験は今日で終了というわけではない。まだまだ続く長丁場であって、明日も明後日も試験が続くのが普通だろう。

 当然、さっさと明日の試験に心も頭も切り替えて、明日に向けてのウォーミングアップに入っていなければならない。中学受験で父母同伴で試験場から帰るときでも、是非とも必要な会話は「今日はどうだった、うまくいったか?」ではなくて「疲れただろう、早く帰って、明日に備えるぞ」である。

 中学受験だと、試験時間中に問題が張り出されて父母も問題を知っているから、(特に学力に自信のある父親は)子供と答え合わせに励んだりするのだが、余程自信のある受験でない限り、そういうことは一切しないように気をつけるべきだ。

 

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(自民も眠れ、民主も眠れ)


 大学受験や高校受験なら、必ず一人で家路につくことをオススメする。試験終了は、早春の午後4時。疲れきって余韻にボンヤリ浸る者、ワイワイ答えあわせに励む者、試験会場のそういう騒めきを背に、一人コートを羽織って、昂然とドアを押し、昂然と会場を出る。早春の夕方のオレンジ色の夕陽を浴びながら「終わったな」としみじみ感じる瞬間は、夢中で勉強した試験であればあるほど、一生の思い出になるものである。

 そのとき「いい答案が書けたな」という実感があれば、友人と答えあわせなんかしなくても合格が確信できるし、「ダメだったな」と感じたら、自分でも驚くほど冷静に「明日の試験で挽回しよう」「ダメだったけど、必ずリベンジしよう」と決意しているものである。その時の表情をもし父親が見たら、合格したとき以上に嬉しさと感動が込み上げてきて、ふと「あいつも、大人になったな」とつぶやくかもしれない。